歴史
コチュジャン · 写真: 온맘으로 / CC BY 4.0 (Wikimedia Commons)

コチュジャン · 写真: 온맘으로 / CC BY 4.0 (Wikimedia Commons)

韓国全羅北道

淳昌コチュジャン:李成桂の説話から英祖のコチュジャンまで、コチュジャンの代名詞になった町

韓国人にとってコチュジャンといえば思い浮かぶ地名が、全羅北道の淳昌(スンチャン)です。太祖・李成桂が味わったという説話、朝鮮時代の文献に見える淳昌コチュジャン、水と気候の話、職人が集まる伝統コチュジャン村と醤類祭りまでまとめました。

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コチュジャンとは、そして淳昌

コチュジャンは、米や麦で炊いたご飯、あるいは餅粉や固めに炊いたお粥に、メジュ(味噌玉麹)の粉、唐辛子粉、塩を加えて発酵させた赤くて辛い醤です。辛さだけでなく、穀物由来の甘みとメジュの香ばしいうま味が一体になっているのが特徴で、ビビンバやトッポッキからチゲ、和え物、サムジャンまで、韓国料理のあらゆる場面で使われます。 多くの地域でコチュジャンを仕込みますが、韓国人がコチュジャンと聞いてまず思い浮かべる地名は全羅北道の淳昌です。「淳昌コチュジャン」という言葉がコチュジャンの代名詞のように使われるほど。淳昌は全羅北道南部の小さな郡ですが、コチュジャンにまつわる説話と古い文献の記録、そして今も醤を仕込む職人たちの村が残っており、醤の文化を知りたい旅行者にとって特別な場所です。

李成桂と萬日寺の説話

淳昌コチュジャンには、朝鮮を建国した太祖・李成桂にまつわる有名な説話があります。高麗末期、李成桂が1万日の祈祷をしていた師・無学大師に会うため淳昌の萬日寺(マニルサ)へ向かう途中、ある農家で昼食をとり、そのとき添えられた醤の味が忘れられず、王になってから宮中に献上させたという話です。 説話に出てくる食べ物は、淳昌コチュジャンの前身である「チョシ」だったと伝えられています。ただし、これは代々伝わる説話で、歴史記録で確かめられた話ではありません。唐辛子が朝鮮半島に伝わって広く使われるようになったのは高麗末よりずっと後のこととされているので、今私たちが知る辛いコチュジャンとは違う醤だったのだろうと考えながら、物語として楽しめばよいでしょう。それでもこの説話は、淳昌が古くから醤のおいしい町として知られてきたという誇りをよく表しています。

朝鮮時代の文献に見る淳昌コチュジャン

説話とは違い、淳昌コチュジャンは朝鮮後期のいくつもの文献に名を残しています。淳昌コチュジャンが最初に登場する文献としては、李時弼(1657〜1724)が著した『謏聞事説』が挙げられ、ほかの地域と異なる淳昌コチュジャンの仕込み方が紹介されているといいます。『閨閤叢書』にはコチュジャンが淳昌の特産品であるとして仕込み方や材料、分量が詳しく記され、『五洲衍文長箋散稿』には淳昌と天安のコチュジャンが全国で有名だという記録があります。 『承政院日記』にも興味深い一節があります。英祖30年の記録に、英祖が宮中の医療機関・内医院のコチュジャンよりも、司憲府持平・趙宗溥の家で作ったコチュジャンを好んだという内容が出てきます。趙宗溥が本貫を淳昌とする淳昌趙氏だと知られていることから、このコチュジャンは淳昌コチュジャンだったと推定されていますが、これについては解釈が分かれています。

水と気候が生む醤の味

淳昌コチュジャンの味を説明するとき、よくメジュ、仕込む時期、原料、発酵、自然条件の五つが挙げられ、その中で核心とされるのが自然条件です。淳昌は昔から「玉川の村」と呼ばれるほど水の良い土地として知られています。また年平均気温12.4度、湿度72.8%、霧の出る日が年に77日ほどと、発酵に適した条件がそろっていると紹介されています。 「淳昌の人がソウルでコチュジャンを仕込んでも本来の味が出ない」という話が伝わるほど、淳昌の人々は醤の味が人の手だけでなく土地と空気から生まれると信じています。今では大手食品メーカーのコチュジャン工場も淳昌にあり、伝統的な製法で醤を仕込む家と近代的な工場が共存する醤の里になっています。

伝統コチュジャン村と醤類祭り

淳昌旅行の中心は、淳昌邑にある淳昌伝統コチュジャン民俗村です。1997年に淳昌郡が伝統醤類産業を盛り上げるために造成した村で、あちこちに散らばっていたコチュジャン職人を一か所に集めました。つまり代々暮らしてきた村ではなく、コチュジャンの名家を集めたテーマ村なのです。造成当時は54世帯でしたが、2024年の報道時点では32世帯が残っています。家ごとに並ぶ甕置き場(チャントクテ)は壮観で、コチュジャンだけでなく、テンジャン、醤油、コチュジャン漬けの野菜などを試食して買えます。 醤をテーマにした淳昌醤類祭りも2024年時点で19年続いており、祭りの期間には醤の仕込み体験やさまざまな醤料理を楽しめます。コチュジャンを買うときは、店ごとに辛さや甘み、熟成期間が違うので、試食してから選ぶのがおすすめです。醤類は重いので宅配発送をしてくれる店も多く、荷物が心配なら聞いてみましょう。

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