
炭火で焼いた松汀トッカルビ · 写真: Minseong Kim / CC BY-SA 4.0 (Wikimedia Commons)
松汀トッカルビ物語:光州松汀駅前のトッカルビはなぜ牛と豚を混ぜるのか
KTX光州松汀駅の前には、トッカルビの店が軒を連ねる通りがあります。1950年代の市場の食堂で始まったとされる松汀トッカルビの由来、資料によって異なる肉の配合の話、一緒に出る骨スープと食べ方をまとめました。
トッカルビとはどんな料理か
トッカルビは、カルビの肉を細かくたたいて味付けし、平たく形を整えて焼いた料理です。肉をこねて形づくる工程が餅(トック)作りに似ていて、焼き上がりの形や食感も餅のようにやわらかいことから、この名前がついたと説明されます。歯の弱いお年寄りや子どもにも食べやすく、昔から親しまれてきました。 「王が体面上カルビを手で持てないため宮中で作られた」という話がよく添えられますが、これは1990年代末から広まった説で、歴史的事実として確認されたものではありません。全羅道では潭陽トッカルビと光州の松汀トッカルビが特に有名で、刻んだ肉を骨に貼り付け直して焼く潭陽式に対し、松汀トッカルビは骨なしで四角や丸に形づくって焼くのが違いです。
1950年代、松汀の市場の食堂から始まった
松汀トッカルビの出発点と伝えられるのは、いまの光州市光山区松汀洞に立っていた松汀五日市です。1950年代、この市場で食堂を営んでいたチェ・チョジャ(최처자、資料によっては「チェ・ジョジャ」とも)さんというおばあさんが、歯の丈夫でない嫁ぎ先のお年寄りのために肉を刻んで焼いたのが始まりだという話が、新聞記事などで紹介されています。市場にテーブルと椅子を置き、炭火で焼いたトッカルビとビビンバを出したそうです。 市の日ごとに人が集まる市場だったおかげで、その片隅で始まったトッカルビが口コミで広まり、周りに店が一軒二軒とでき、いまのトッカルビ通りができあがりました。光州市は2003年に「光州5味」を選んだ際に松汀トッカルビを入れ、2019年ごろ新たに選んだ「光州7味」にも含まれています。
牛肉と豚肉、配合は資料によって異なる
松汀トッカルビ最大の特徴は、牛肉に豚肉を混ぜることです。ただしその割合や始まった時期は資料によって異なります。光州の地域文化資料やウィキペディアは牛肉と豚肉を半々で混ぜると説明し、牛肉だけではぱさつくので脂を補うために豚肉を入れると書いています。 一方、2020年のある新聞記事は、もともと牛肉だけを刻んで練炭火で焼いていたが、IMF通貨危機のころ庶民の懐具合を考えて値上げの代わりに豚肉を混ぜ始め、いまは牛3対豚7ほどの割合で使う店もあると伝えています。店ごとに配合や味付けが少しずつ違うと考えるのが正確でしょう。いずれにしても骨を付けないため、潭陽式トッカルビより値段が手ごろだという点は共通して挙げられます。
先に出る骨スープ、そして食べ方
松汀トッカルビの店に座ると、トッカルビより先に澄んだスープが一杯出てくることが多いです。この界隈で「ピョックク」と呼ぶ豚骨スープで、牛肉と大根のスープのようにすっきりあっさりした味。トッカルビを待つ間におなかを温めるのにぴったりで、このスープ目当てにわざわざ訪れる人もいるほどです。 トッカルビは、刻んだ肉に梨や青梅、玉ねぎ、韓方の材料などを加えて長くこね、寝かせてから、タレを塗り重ねつつ炭火で焼きます。そのため外は甘辛くつやがあり、中はしっとり。光州ならではのたっぷりのおかずと一緒に出るので、ご飯を添えておかずと交互に食べればOKです。
どこで食べる?松汀駅前のトッカルビ通り
松汀トッカルビの店は、KTXやSRTが停まる光州松汀駅のすぐ前、光山区松汀洞一帯に集まっています。駅から歩いて行ける距離なので、列車に乗る前後の一食にぴったりです。近くには1913松汀駅市場や、いまも市が立つ松汀五日市があり、食後に市場散策も楽しめます。 光州の中心街やほかの地域にもトッカルビの店はありますが、「松汀トッカルビ」の名前そのままを味わうならこの通りが一番確実です。昼と夜は行列ができる店もあるので、列車の時間がぎりぎりなら余裕を持って着くか、持ち帰りを利用しましょう。光州7味には松汀トッカルビのほか、韓定食、無等山の麦飯、オリタン(鴨鍋)、おにぎり(チュモッパプ)、サンチュティギム、ユッチョン(牛肉のチヂミ)が選ばれています。