歴史
1 / 2
ミヨックク(ワカメスープ) · 写真: 국립국어원 / CC BY-SA 2.0 kr (Wikimedia Commons)

ミヨックク(ワカメスープ) · 写真: 국립국어원 / CC BY-SA 2.0 kr (Wikimedia Commons)

韓国蔚山

蔚山のワカメとミヨックク:高麗時代から持ち主がいた「ワカメ岩」藿岩の物語

韓国人は出産したときや誕生日にワカメスープ(ミヨックク)を食べます。鯨が子を産んでワカメを食べたという昔話、蔚山の海に沈むワカメ岩・藿岩にまつわる高麗の豪族と暗行御史・朴文秀の逸話、ミヨッククにまつわる風習とタブーまでまとめました。

5分で読める5

誕生日と出産のスープ

ミヨッククはワカメを入れて煮た澄んだスープです。戻した乾燥ワカメをごま油とニンニクで炒め、牛肉や魚でとった出汁を注いで煮るのが一般的で、辛くなく淡白な味です。韓国では出産した母親がご飯と一緒にミヨッククを食べる風習があり、ワカメはカルシウムとヨウ素が豊富で産後の回復によいとされてきました。 朝鮮時代には、産婦が初めての食事をとる前に部屋の一角を清め、白米のご飯とミヨッククを3杯ずつ、子どもを授けるとされる三神ハルモニに供えてから、そのご飯とスープを産婦が食べたと伝えられます。今では誕生日の朝にミヨッククを作って食べるのが韓国人の常識のようになっており、自分を産んでくれた母への感謝の意味だと説明されることもあります。そのワカメの古くからの産地の一つが、蔚山の海なのです。

鯨が教えてくれたワカメ?

ワカメと産後の養生を結びつける昔話には鯨が登場します。朝鮮後期の実学者・李圭景の『五洲衍文長箋散稿』にある「産婦鶏藿弁証説」には、ある人が子を産んだ鯨の腹の中がワカメでいっぱいなのを見て、ワカメが産後の養生に効くことを知ったという話が載っています。また唐代に編纂された『初学記』に、鯨が子を産んだ後にワカメを食べて傷を治すのを見て、高句麗の人々が産婦にワカメを食べさせたという内容があると紹介されてきました。 もちろんこれは言い伝えにすぎず、科学的な事実ではありません。それでも鯨とワカメが一緒に登場するこの話は、先史時代の鯨の岩刻画と捕鯨基地を抱える鯨の街であり、ワカメの名産地でもある蔚山に不思議とよく似合います。蔚山でミヨッククを食べるなら、この話も思い出してみてください。

海の中のワカメ岩、藿岩

蔚山・北区江東洞のパンジ村の沖合には、藿岩(クァガム)という岩があります。名前のとおり「ワカメ岩」という意味で、「両班石」や「朴允雄石」とも呼ばれ、2001年に蔚山広域市の記念物に指定されました。1937年刊行の『興麗勝覧』などによると、新羅末・高麗初の地方豪族・朴允雄が王建の高麗建国を助けた功により、蔚山東部の土地とともにこの一帯のワカメ岩12か所のワカメ採取権を与えられたといいます。 この権利は蔚山朴氏の一門に代々受け継がれましたが、朝鮮・英祖の時代に暗行御史・朴文秀が住民の訴えを聞いて岩を国に返還させました。ところがその後3年続けてワカメが不作になったため、12か所のうち1か所を再び朴氏一門に返し、その所有は日本統治時代まで続いたと伝えられます。ワカメ生産にかかわるこの岩は、朝鮮後期の経済史を示す資料としても評価されています。

蔚山の海とワカメ

藿岩一帯は水温などワカメが育つのに適した条件がそろった場所と紹介され、ここのワカメは古くから王に献上されたと伝えられます。蔚山地域は朝鮮時代に済州島に次いでワカメの生産量が多かった所として知られ、今も藿岩の周辺ではワカメ採りが続いています。江東の海岸のように岩に付いて育つ天然ワカメは「トルミヨク(岩ワカメ)」と呼ばれ、養殖ワカメと区別して貴重がられます。 ワカメの季節になると、東海岸の漁村ではワカメを採って浜辺に広げて干す風景が見られます。亭子港からパンジ村方面へ続く江東の海岸は玉石の浜が続き、海を眺めながら巡るのにぴったりです。乾燥した岩ワカメは軽くて長持ちするのでお土産にもぴったり。地元の市場や漁村の直売所で原産地を確かめて選んでみてください。

ミヨッククにまつわるタブーと面白い表現

ワカメには面白い風習もたくさんあります。出産を控えて買うワカメは値切らず、スープに入れるワカメを切らないという風習がありました。値切ると難産になり、ワカメを切ると赤ちゃんの運が折れると信じられていたからです。 逆に「ミヨッククを食べる」という言葉は、試験に落ちたという意味の慣用句として使われます。つるつるしたワカメから「滑る」を連想したという解釈があり、1907年の大韓帝国軍の「解散(ヘサン)」が出産を意味する「解産(ヘサン)」と同じ音で、出産後に食べるミヨッククと結びついたという説も伝わっています。そのため受験生の家族は試験前にミヨッククを避け、大学修学能力試験の日にはミヨッククを出さない食堂もあります。旅行中に誕生日を迎える友人がいたら、一緒にミヨッククを一杯食べてみるのも韓国らしい体験になるでしょう。

#ワカメ#ミヨックク#藿岩#蔚山・江東#誕生日のワカメスープ
蔚山のワカメとミヨックク:高麗時代から持ち主がいた「ワカメ岩」藿岩の物語 | TastyLog