歴史
忠武キンパと大根キムチ・イカの和え物 · 写真: Junho Jung (Flickr) / CC BY 3.0 (Wikimedia Commons)

忠武キンパと大根キムチ・イカの和え物 · 写真: Junho Jung (Flickr) / CC BY 3.0 (Wikimedia Commons)

韓国慶尚南道

忠武キンパ:船乗りの弁当から統営の代表料理になるまで

具を入れずにご飯だけを巻いた指ほどの太さのキンパに、イカの和え物と大根キムチを別に添える忠武キンパ。海の上で傷まないようにした船乗りの知恵、旅客船の船着き場で売られていた時代、1981年のソウルのイベントで全国に知られたいきさつと食べ方をまとめました。

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ご飯だけのキンパと別添えのおかず

忠武キンパは、慶尚南道統営(旧・忠武市)発祥の郷土料理です。普通のキンパのように具をいろいろ入れず、海苔にご飯だけを入れて指ほどの太さに細く巻くのが特徴です。その代わり、辛く和えたイカ(またはヒイカ、練り物)と大きく切った大根キムチのソッパクチやカクテキを別に添え、干し菜のスープなどの汁物を一緒に出す店が多くあります。 食べ方も簡単です。淡白なキンパ一つに、甘辛いイカの和え物かシャキシャキの大根キムチを一つずつ交互に合わせるだけ。キンパ自体にはほとんど味がついていないので、おかずと一緒に食べてはじめて味が完成します。昔はおかずをキンパと同じくらいたっぷり出したのでおかずの方が多かったのですが、最近はキンパの量に合わせて盛ることが多いそうです。

海の上で傷まない弁当

忠武キンパは1930年代ごろに生まれたといわれています。忠武港から漁に出る船乗りたちはキンパを弁当に持って行きましたが、一日中働いていると食事の時間を逃しがちで、特に夏は強い日差しでキンパの具がすぐに傷んでしまいました。そこで海苔にご飯だけを巻き、傷みにくい和え物のおかずは別に詰める方法が生まれたといいます。 英語の資料では、海に出る夫のために妻がキンパが傷まないようご飯とおかずを別々に詰めたのが始まりで、ほかの漁師たちがそれをまねて広まったという話も伝わっています。いずれにしても核心は同じです。具を分けたシンプルな形は、味のための選択というより、海の上で食べ物を守るための生活の知恵だったわけです。

旅客船の船着き場で売った「ペンモリ・キンパ」

最初、このキンパは「ペンモリ(船着き場)キンパ」と呼ばれていたそうです。南海高速道路のような陸路が発達する前、麗水や木浦から釜山へ向かうゆっくりした旅客船が途中で立ち寄るのが忠武で、旅客船の埠頭近くで乗客に食事代わりとしてこのキンパがたくさん売られました。船が少し止まる間に買って持ち込め、時間が経っても傷みにくいので、旅人にぴったりの食べ物だったわけです。 忠武キンパが全国に名を知られたきっかけとしてよく挙げられるのが、1981年にソウル・汝矣島で開かれた大規模な文化行事「国風81」です。統営・港南洞のあるおばあさんの商人が忠武キンパをどっさり持ってこの行事に参加して大人気となり、その後ソウルをはじめ全国に忠武キンパを売る店ができたと伝えられています。

忠武から統営へ、名前に残る昔の町

今日の地図で「忠武」という市を見つけることはできません。忠武市は1995年に統営郡と合併し、現在の統営市になったからです。それでも料理名は忠武キンパのまま残り、統営を訪れる旅行者にこの町の昔の名前を伝える役割を果たしています。ちなみに忠武という名前は、この海で活躍した李舜臣将軍の諡号「忠武公」に由来します。 忠武キンパの元祖がどこなのかははっきりしません。統営のあちこちの店がそれぞれ「元祖」の看板を掲げているため、本当の元祖を見分けるのは難しいと言われるほどです。かつて旅客船ターミナルがあった江口岸一帯に老舗の忠武キンパ店が集まっていますが、ターミナルが広場に変わったとき、もともと一軒だった店がいくつかに分かれたという話も伝わっています。

統営で忠武キンパを食べるには

統営で忠武キンパを食べるなら、江口岸文化広場の周辺がいちばん見つけやすいでしょう。1人前単位で注文し、店内で食べることも持ち帰ることもできます。もともと持ち歩いて食べるために生まれた料理なので、持ち帰って閑山島や欲知島などの島へ向かう船に持ち込んだり、東ピラン壁画村を巡った後に海辺で食べたりするのも統営らしい楽しみ方です。 イカの和え物は店ごとに辛さや甘さが違い、大根キムチも酸味がそれぞれなので、何軒か食べ比べるのも楽しいです。キンパは時間が経つと海苔がしんなりするので、なるべく早めに食べるのがおすすめ。忠武キンパと一緒に統営のもう一つの名物であるクルパン(はちみつパン)や牡蠣料理まで味わえば、統営グルメ旅行の完成です。同じ名前のキンパはソウルなど全国でも売られていますが、統営の海辺で食べる味はまた格別です。

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