
キャベツと肉をのせた吉田のうどん · 写真: Ocdp / CC0 (Wikimedia Commons)
吉田のうどん:日本一硬いともいわれる、男たちが打った富士吉田のうどん
河口湖のすぐ隣、富士吉田市は人口約5万人にうどん店が60軒以上あるうどんの町です。強いコシの麺、茹でキャベツと馬肉、辛い薬味のすりだねまで、吉田のうどんがどう生まれ、どう食べるのかをまとめました。
人口5万の町にうどん店60軒
吉田のうどんは、富士山北麓の山梨県富士吉田市とその周辺の「郡内」地方を中心に食べられてきた郷土料理です。日本語版ウィキペディアによると、人口5万人規模の富士吉田市にうどん店が60軒以上あり、地元のうどんマップに載る店だけでも約50軒にのぼります。農林水産省の「農山漁村の郷土料理百選」にも選ばれています。 富士吉田は河口湖と隣り合っているので、富士山が見える新倉山浅間公園や富士急ハイランド、富士吉田の本町通りといった観光地を巡ると、あちこちで「うどん」の看板に出会います。河口湖に泊まる旅なら、一日のお昼は吉田のうどんと決めてみるのもおすすめです。
機を織る女たち、麺を打つ男たち
吉田のうどんの誕生には、この地域の産業が深く関わっています。江戸末期から昭和にかけて、郡内地方の基幹産業は女性が携わる養蚕や機織りでした。そのため男性が食事を用意してうどんを打ったといいます。手が荒れると繊細な織物を扱いにくいので女性は台所仕事から離れた、という説明もあわせて伝わっています。 男たちがたくましい腕で地元の小麦粉をしっかりこねたことが、吉田のうどん特有の強いコシにつながったと伝えられます。また江戸時代には、富士山を信仰の対象として登る「富士講」の参拝者がこの地域を多く訪れたという背景もあります。米が貴重な土地で、小麦は人々の頼もしい主食でした。
見た目:硬い麺、キャベツ、馬肉
吉田のうどんの最大の特徴は、「硬い」と感じるほどしっかりしてコシの強い麺です。太くてずっしりした麺をよくかんで食べる味わいがあり、やわらかい讃岐うどんや関西のうどんとはまったく違う体験です。 具も独特です。茹でたキャベツが基本でのり、油揚げとともに甘辛く煮た肉をのせますが、もともとは馬肉が多く使われ、今は豚肉も一般的だといいます。汁は煮干しや椎茸でとっただしに醤油、味噌、またはその合わせで味をつけ、どれを使うかは家や店によって違います。メニューの「肉うどん」は肉のせ、「月見」は生卵のせなので参考にしてください。
辛さを足す秘密の薬味・すりだね
吉田のうどんの店のテーブルには、たいてい「すりだね」という薬味が置いてあります。赤唐辛子を中心に、ごまや山椒などを油で炒めて作るピリ辛の薬味で、店ごとに秘伝があります。うどんに少し入れると香ばしくしびれる辛さが加わり、硬い麺とこくのある汁をいっそう引き立てます。 辛さは店によって大きく違うので、最初はほんの少しだけ入れて味見し、それから量を増やすのが安心です。唐辛子の薬味に慣れた人にはなじみやすいかもしれませんが、山椒のしびれが加わった独特の味です。すりだねそのものを瓶詰めしておみやげとして売る店もあります。
吉田のうどんを食べるときのヒント
吉田のうどんの店には、昼どきを中心に営業し、麺がなくなり次第早じまいする店が多いといわれます。夜に食べようとすると閉まっている店が多いかもしれないので、お昼に予定を合わせるのがおすすめです。民家を改装したような素朴な店も多く、地元の人に交じって食べる雰囲気を楽しめます。 温かい汁のうどんのほかに、冷たい麺をつけ汁で食べる「つけ麺」スタイルもあります。量が多めなので最初は普通サイズで頼み、具を足したければ肉や油揚げ、生卵を追加するといった選び方で十分です。よくかむ麺なので、ゆっくり味わうのが吉田のうどんをしっかり楽しむコツです。