
瑞山の栄養牡蠣ご飯 · 写真: Seosan City Government / CC BY-SA 4.0 (Wikimedia Commons)
瑞山・看月島のオリクルジョッ:女性たちが牡蠣を呼んだ海の村の赤い塩辛
瑞山を代表する味を一つ挙げるなら、看月島のオリクルジョッ(牡蠣の唐辛子塩辛)は外せません。小粒の牡蠣に塩と唐辛子粉だけを合わせて熟成させるこの塩辛がなぜ看月島で有名になったのか、名前の由来や小正月の「牡蠣呼び」、食べ方までまとめました。
島から陸になった看月島
看月島(カンウォルド)は瑞山の南、天水湾の奥にある小さな村です。名前の通りもとは島でしたが、瑞山防潮堤の工事と干拓で陸続きになり、今は車でそのまま入れます。天水湾は冬の渡り鳥が多く集まる場所としても知られています。 村の沖には看月庵という小さな庵があります。朝鮮初期の高僧・無学大師がここで修行し、月を見て悟りを開いたという話が伝わっています。引き潮のときだけ砂利道が現れて歩いて渡れるので、潮の時刻を確認してから行きましょう。この看月庵を目当てに来た旅行者が、港の食堂で必ず味わい、お土産に買っていくのがオリクルジョッです。
「オリ」という名前の二つの説
オリクルジョッは牡蠣の塩辛(クルジョッ)の一種で、生牡蠣を塩で熟成させてから唐辛子粉で和えたものです。ところが頭につく「オリ」の意味ははっきりせず、資料によっていくつかの説が紹介されています。 一つは、この地の牡蠣が小さいので「小さい」「育ちきっていない」という意味の接頭語「オル(オリ)」がついたという説。もう一つは、塩を控えめにして薄味に漬けた牡蠣の塩辛という意味から来たという説で、唐辛子のヤンニョムで口の中が「ヒリヒリする(オルオラダ)」ことに由来するという説もあります。いずれの説も、看月島のオリクルジョッの特徴である「小粒の牡蠣」と「ぴりっとしたヤンニョム」をよく表しています。瑞山市が選ぶ瑞山の九つの味「瑞山9味」にもオリクルジョッが入っています。
看月島の牡蠣はなぜ味がよく染みるのか
看月島周辺の海は岩場よりも干潟が広がっています。小石について育った牡蠣は2年ほどで石から離れ、泥の中で育ちます。こうして育った牡蠣は黒っぽく、縁の細かな毛(ひだ)が多いのが特徴です。2004年のソウル新聞の海の紀行記事は、看月島の牡蠣は身よりもひだが大きいため、唐辛子粉で和えると味が染みる面積が広く、そのぶん一段とおいしいと説明しています。深い海で育てた養殖牡蠣とは見た目も味も違うというわけです。 この地の牡蠣は記録も古く、1619年に韓汝賢が著した瑞山地域の邑誌『湖山録』には看月島と熊島の牡蠣の生態が記され、看月島の牡蠣は秋から冬に身が入り、2〜3月には姿を消すとあります。看月島の漁民は隣の洪城・広川の市場に牡蠣や塩辛を売りに出て、販路を広げたといいます。
塩と唐辛子、そして時間
看月島式オリクルジョッの材料はとても簡素で、牡蠣と塩、唐辛子粉がほぼすべてです。まず生牡蠣を塩と混ぜて甕で熟成させ、天日干しの唐辛子で作った唐辛子粉のヤンニョムを加えて手で和えます。地元の店の人は、天日塩と唐辛子粉だけで味つけし、甕で熟成させてこそ本来の味が出ると言います。塩はにがりを十分に抜いた寝かせた天日塩がよいそうです。 よく熟成したオリクルジョッは、塩気よりも牡蠣の甘みと唐辛子のぴりっとした辛さが先に来て、熟成した牡蠣ならではのほのかな旨みが後を追います。生臭さが心配なら、最初はほんの少しだけご飯にのせてみてください。
牡蠣呼びの祭りとオリクルジョッの食べ方
看月島には牡蠣にまつわる珍しい民俗が残っています。毎年、旧暦1月15日の小正月、海が満ちる満潮の頃に、村の入口にあるオリクルジョッ記念塔の前で牡蠣の豊漁を祈る「クルブルギ(牡蠣呼び)郡王祭」が開かれます。白い服を着た村の女性たちが農楽に合わせて行進し、祭祀を行うのが特徴で、よその豊漁祭がたいてい男性中心なのに対し、牡蠣を採り塩辛を漬けてきた女性たちが主役である点が目を引きます。 オリクルジョッは炊きたての白いご飯にひと切れのせて食べるのが基本です。看月島の港周辺の食堂では、牡蠣とナツメ、木の実などを入れて石釜で炊いた牡蠣ご飯(クルバプ)と一緒に出すことが多く、この栄養牡蠣ご飯も瑞山9味に入っています。パック入りを買って帰るときは冷蔵保存し、なるべく早めに食べましょう。