
タイラギ(キジョゲ) · 写真: 국립국어원 (National Institute of Korean Language) / CC BY-SA 2.0 KR (Wikimedia Commons)
保寧・鰲川港のタイラギ:潜水士が海底から採る西海の貝柱の里
保寧(ポリョン)の鰲川(オチョン)港は、韓国のタイラギ(キジョゲ)の60〜70%が水揚げされるといわれる本場です。穀物をふるう「箕(キ)」に似たこの貝をどう採るのか、貝柱のおいしい食べ方と旬、鰲川港の旅のヒントまでまとめました。
「タイラギ王国」鰲川港
鰲川港は保寧市北部の鰲川面、天水湾の入り口にある港です。湾の奥深くに入り込んでいるため、大きな防波堤を築かなくても船が波を避けられるほど自然条件に恵まれ、昔から天然の良港とされてきました。港を見下ろす丘には、朝鮮時代に忠清地方の水軍本営が置かれた忠清水営城の城壁が残っています。 この港を代表するのがタイラギ(キジョゲ)です。報道によると鰲川港のタイラギは全国生産量の60〜70%を占めるとされ、資料によっては60%と書かれることもあります。正確な割合は年ごとに変わりますが、鰲川港が「タイラギ王国」と呼ばれることに異論はありません。牡蠣やアサリ、アワビなどの貝も多くとれる所なので、港周辺の食堂の水槽はいつも貝でいっぱいです。
箕に似た大きな貝
キジョゲという名前は、穀物をふるってもみ殻をより分けた農具「箕(キ)」に似ていることに由来します。片方がとがり、もう片方が大きく広がった三角形の殻は本当に箕のようで、大きなものは長さ30cm近くになるといいます。日本でタイラギと呼ばれる貝の仲間です。 タイラギは海底の泥にとがった方を突き刺し、立ったまま暮らしています。殻は大きいものの、食べる部分の主役は殻を開け閉めする大きな筋肉、つまり貝柱です。鰲川港の地元ではこの貝柱を「目(ヌン)」と呼ぶそうです。かつてタイラギの貝柱は主に日本へ輸出されていましたが、今は韓国国内でも高級食材として広く使われています。
潜水漁船で海底まで
タイラギは網や熊手でかき集めてとる貝ではありません。2003年のソウル新聞の鰲川港の記事によると、タイラギはすべて潜水士が「モグリ船」と呼ばれる潜水器漁船で沖に出て、水深30〜40mの海底まで潜って一つずつ採ってきます。少し波が高いだけで作業が難しくなる危険な仕事で、この過程を知るとタイラギの値段が高い理由がわかると記事は付け加えています。 同じ記事によると、産卵期の7〜8月は採取が禁止され、それ以外は一年中とれ、5月がいちばん多く味もよいそうです。ほかの報道も春をタイラギの旬に挙げています。海洋水産部は6月の「今月の水産物」としてタイラギを紹介したこともあります。まとめると、晩春から初夏が鰲川港のタイラギを味わうのにいちばんよい時期です。
貝柱をおいしく食べるコツ
タイラギの貝柱は刺身、焼き物、炒め物、しゃぶしゃぶなど、ほとんどどんな食べ方でも楽しめます。刺身は薄く切って酢コチュジャンにつけ、加熱するときはさっと火を通す程度にとどめるのがコツ。火を通しすぎるとすぐに固くなります。家で下処理するときは、毒素がたまることがある黒い内臓部分を必ず取り除いてください。 「タイラギ三合(サマプ)」も人気です。もともとは全羅南道・長興(チャンフン)の名物ですが、保寧でも冬の味覚としてよく紹介されています。薄く切った貝柱と牛の薄切りバラ肉(チャドルバギ)、シイタケを一緒に焼き、サンチュなどで包んで食べます。貝柱は常温ではすぐ傷むので、買ったらすぐ調理するか冷凍しておきましょう。
鰲川港に行くなら
鰲川港へは、西海岸高速道路の広川ICで降り、天北を経て保寧防潮堤を渡ると着きます。港の周辺にはタイラギや旬の海産物を出す食堂が集まっていて、水槽から選んだ海産物をすぐに味わえます。忠清水営城の城壁の方へ上ると天水湾と港が一望でき、海岸展望台から見る夕暮れの景色も美しいことで知られています。 下処理した貝柱を冷凍して箱単位で売る店も多く、家に持ち帰って三合や焼き物にするのにぴったりです。その際はクーラーボックスを用意し、帰り道で溶けないようにするのが大切です。南へ30分ほど下ると大川海水浴場があるので、保寧旅行の途中に鰲川港に寄ってタイラギで一食というプランもおすすめです。7〜8月は採取禁止期間のため、生きたタイラギは見つけにくいことも覚えておきましょう。