
キムチの具を巻いたメミルジョンビョン · 写真: 김다혜 / CC BY 2.0 KR (Wikimedia Commons)
平昌・蓬坪のそば:小説『そばの花咲く頃』の市場町で食べるメミルジョンビョンとそば料理
平昌の蓬坪(ボンピョン)は、李孝石の短編『そばの花咲く頃』の舞台であり、秋には白いそばの花が野を覆うそばの里です。小説とそば畑の話、キムチの具をくるくる巻いたメミルジョンビョン(チョントック)をはじめとするそば料理の食べ方をまとめました。
小説が生んだそばの里
平昌郡蓬坪面が「そばの里」と呼ばれるようになったのには、一編の小説が大きな役割を果たしました。蓬坪出身の作家・李孝石(イ・ヒョソク、1907~1942)が1936年に雑誌『朝光』に発表した短編『そばの花咲く頃』です。市から市へ渡り歩く行商人の許生員が、若い頃に蓬坪で一夜の縁を結んだ娘を忘れられず、蓬坪の市を欠かさず訪れるという物語で、蓬坪から大和まで八十里の山道を月明かりの下で歩く場面が有名です。この小説は長く国語の教科書に載っていて、韓国人ならほとんどが知っています。 小説の「塩をまいたような」そばの花の描写のおかげで、蓬坪といえばそば畑とそば料理が思い浮かぶようになりました。今も蓬坪一帯には李孝石の生家や文学館、小説の居酒屋を思わせる場所など、作品ゆかりの場所が集まっています。
江原道の山間部とそば
そばは、涼しい気候ややせた土地でもよく育ち、生育期間の短い作物として知られています。田んぼが少なく夏の短い江原道の山間部では、米の代わりにそばやじゃがいも、とうもろこしが長く食卓を支え、そばで作る麺やムク(そばがき状の寄せ物)、ジョンビョンは自然とこの地域の日常食になりました。 蓬坪一帯には今、大規模なそば畑が整備されていて、ある報道は李孝石の生家周辺に170万平方メートルを超えるそば畑があると伝えています。そばの花は8月末から9月初めごろに咲き始め、9月に見頃を迎え、この時期は白い花畑のあいだの小道を歩けます。同じ江原道の春川マックッスもそばを使いますが、蓬坪ではマックッスと一緒にジョンビョン、ムク、チヂミなど多彩なそば料理を一度に味わえるのが特徴です。
メミルジョンビョン(チョントック)とは
蓬坪でぜひ食べたいそば料理を一つ挙げるなら、メミルジョンビョンです。ゆるく溶いたそば粉の生地を鉄板で薄く焼き、細かく刻んで味付けしたキムチを具として細長くのせ、くるくる巻いた料理です。キムチの具には刻みねぎやにんにく、ごま油、すりごまなどを入れ、店によっては味付けした豚肉や豆腐、春雨を加えることもあります。そばは粘りが少なく生地が破れやすいので、薄く均一に焼くには手間がかかります。 江原道ではメミルジョンビョンを「チョントック(銃餅)」とも呼び、くるくる巻いた細長い形が銃身に似ているからという説明が広く知られています。厳密には、具を巻いたものをチョントック、具のないものをジョンビョンと区別するという説明もあります。似た料理に、大根の千切りを巻く済州島のピントックがあります。
食べ方と一緒に味わいたいそば料理
メミルジョンビョンは焼きたての温かいうちに食べるのがいちばんです。皮が薄く淡白なので具のキムチの味がそのまま感じられますが、キムチは辛めなので、辛いものが苦手なら一本を分けて味見するくらいから始めましょう。醤油につけて食べることもあり、市場ではキムチや白菜をのせて平たく焼いたそばのチヂミ(メミルジョン)と盛り合わせで売られていることが多いです。 蓬坪の食堂では、そばのマックッスにメミルジョンビョン、メミルジョン、ジャガイモチヂミなどを添えたセットをよく見かけます。そば粉の寄せ物を和えたメミルムクムチムや、ムクを入れた温かい汁物を出す店もあります。マックッスは店ごとにスープの味がかなり違うので、初めてなら水マックッスとビビンマックッスを一つずつ頼んで分け合い、食べ比べるのも一案です。そば粉やそば茶をおみやげに買っていく人もたくさんいます。
いつ行く?孝石文化祭と蓬坪の市
そばの花とそば料理を一緒に楽しむなら9月がいちばんです。蓬坪面一帯では1999年から毎年9月ごろ平昌孝石文化祭が開かれ、そばの花畑の散策とともに、小説の市場を再現した屋台村や文学イベントが行われます。期間中はとても混むので週末より平日の午前がゆったりしていて、正確な日程は毎年の告知を確認するとよいでしょう。 祭りの時期でなくても、蓬坪の五日市は日付の末尾が2と7の日に立つといわれていて、市の日に合わせればメミルジョンビョンを焼く屋台や、そば、山菜などの特産品を見て回れます。市場の近くには李孝石文学館や生家、小説の居酒屋を思わせる場所もあり、半日コースにまとめやすいです。小説を先に読んでから行くと、市場の風景がまったく違って見えるはずです。