歴史
安東サービスエリアの安東塩サバ焼き定食 · 写真: 아라 / CC BY-SA 4.0 (Wikimedia Commons)

安東サービスエリアの安東塩サバ焼き定食 · 写真: 아라 / CC BY-SA 4.0 (Wikimedia Commons)

韓国慶尚北道 · 安東

安東カンコドゥンオ:海のない内陸の町が塩サバの名産地になった理由

山に囲まれた安東は海から遠いのに、韓国でサバといえば安東を思い浮かべる人が多いのです。東海から二日がかりで運ばれる間に塩が生んだ味、塩振り職人の技、真空パックの特産品になるまでの話と、おいしい焼き方をまとめました。

6分で読める2

山あいの町・安東とサバ

慶尚北道の安東は四方を山に囲まれた内陸の町です。冷凍輸送がなかった時代、新鮮な海産物を手に入れるのはとても難しいことでした。それでも今、韓国で「安東」と聞くと、河回村と並んで塩サバ(カンコドゥンオ)を思い浮かべる人が多いのです。 カンコドゥンオは、腹を開いて内臓を取り、塩で味付けしたサバのこと。いつから食べられていたのか正確な記録はありませんが、行商人が東海岸の盈徳から安東へ魚を運んでいた朝鮮時代からあったと推定されています。安東の祭祀膳に上るタコやトンベギ(サメ肉)も塩漬けで運ばれてきており、サバも同じ理由で「塩をした魚」の道を歩むことになりました。

二日の道のりとひと握りの塩

盈海・盈徳の沖で獲れたサバは、背負子や牛馬車に載せられ、約100kmの山道を二日かけて安東の市場まで運ばれたといいます。韓国語版ウィキペディアは、そのルートを盈徳から青松を通り、安東・臨東面の市場を経て安東に入る道として紹介しています。 長い道中では内臓から傷み始めるため、途中で腹を開いて内臓を取り、塩を振りました。塩は洛東江の水運で運ばれてきたと伝えられています。こうして道の上で日差しと風に当たって水分が抜け、塩がなじみ、市場に着く頃には生臭さが減ってうま味のあるサバになっていました。安東の人が語るカンコドゥンオならではの味は、この「時間と塩」から生まれたと言われます。

塩振り職人の技:濃い塩と薄い塩

カンコドゥンオの味を左右するのは、塩を振る「カンジェビ」です。塩を多すぎず少なすぎず、均一に振るのが一番の技とされます。 報道によると、1960年代までは二つのやり方がありました。サバがよく獲れる秋に大きな甕へ塩とサバを交互に重ねて濃く漬ける「トッカンジェビ」と、旬のサバに薄めに塩をする「オルカンジェビ」です。安東では、新鮮なサバにほどよく塩がなじんだものを今も「オルカンジェビ」と呼ぶことがあります。 1970年代に冷凍保存が広まると、塩サバは次第に塩辛さが控えめになりました。今は下処理・塩漬け・熟成をいくつもの工程に分けて作る方法が紹介されています。

市場の魚から真空パックの特産品へ

長い間、塩サバは「商品」というより安東の家庭の日常のおかずでした。変化は1990年代末に訪れます。ウィキペディアによると、通貨危機後の地域経済を盛り上げようという流れの中で、1999年8月に真空パックの安東塩サバをつくる会社が初めて設立され、同じ年のエリザベス2世女王の安東訪問も地元の食への関心を集めました。 その後、工場で下処理・塩漬け・熟成・乾燥を経て衛生的に包装する方式が定着し、全国のスーパーやテレビ通販に広がりました。報道によれば、日本・アメリカなど20か国ほどに輸出されるまでになりました。原料のサバは今も海から来るもので、安東の役目は昔も今も「塩加減」だというのが面白いところです。

おいしい焼き方とどこで食べるか

カンコドゥンオは焼き魚が定番で、煮付けや蒸し物でも楽しまれます。韓国メディアでよく紹介されるコツは、米のとぎ汁に10〜20分ほど浸してから、弱火で背の側から焼くこと。生臭さが和らぎ、身がふっくらすると言われます。すでに塩がしてあるので、塩は足さないほうがいいでしょう。 安東市内の韓国料理店では、塩サバ焼きにご飯・汁物・おかずが付く定食をよく見かけますし、安東近くの高速道路サービスエリアの食堂でも塩サバ焼きを出しています。お土産には下処理済みの真空パックが多く、持ち歩きに便利です。河回村や月映橋を巡った後のお昼に塩サバ定食を添えれば、「海のない町の魚の物語」をそのまま味わえます。

#カンコドゥンオ#塩サバ#安東#サバ焼き#慶尚北道の郷土料理
安東カンコドゥンオ:海のない内陸の町が塩サバの名産地になった理由 | TastyLog