
清道ワイントンネルの柿ワイン熟成樽 · 写真: Ken Eckert / CC BY-SA 4.0 (Wikimedia Commons)
清道パンシ:種のない平たい柿の秘密と熟し柿の楽しみ方
慶尚北道清道の柿「パンシ(盤柿)」は、お盆のように平たく種がないことで有名です。500年近く伝わる由来、種ができない理由、熟し柿・アイスホンシ・干し柿スライス・柿ワインでの楽しみ方、秋の祭りまでまとめました。
お盆のように平たい柿「パンシ」
清道は大邱の南、山に囲まれた盆地にある慶尚北道の郡です。ここの柿は「パンシ(盤柿)」と呼ばれます。形がお盆(盤)のように平たいことから付いた名前です。そして何より種がありません。 報道によると、清道は国内で唯一種なし柿が採れる場所とされています。2023年の記事では、清道郡の約6千戸の柿農家が毎年約3万3千トンの柿を生産し、そのうち約40%が干し柿スライスなどに加工されているそうです。秋になると郡全体がオレンジ色に染まる、まさに柿の里です。渋柿の品種なので、もいですぐ食べるより、柔らかく熟させた熟し柿(ホンシ)で食べるのが基本です。
1545年、ある学者が持ち帰った柿の枝
清道パンシの由来として伝わる話は朝鮮中期にさかのぼります。地元紙によると、1545年(明宗元年)、清道・伊西面セウォル村出身の文人パク・ホが平海(現在の蔚珍一帯)の郡守を務めて故郷に戻る際、柿の穂木を持ち帰って清道の在来の柿の木に接ぎ木したのが始まりとされます。穂木の入手については、明へ行く使節の友人に頼んだという話も伝わっています。 この柿は清道の土と気候によく合って広まり、はじめは村の名から「セウォルパンシ」と呼ばれ、やがて今の「清道パンシ」になりました。セウォル村には樹齢150年ほどの柿の木が2本残っているそうです。ただしこの由来は言い伝えであることを踏まえて読むとよいでしょう。
なぜ種がない?雌花と5月の霧
清道パンシに種がないのは一つの理由ではなく、品種・地形・気候が重なった結果だと調査されています。地元紙によると、清道パンシは主に雌花だけをつける品種で、地域内に雄花を咲かせる受粉樹がほとんどないため受精しにくいのです。さらに盆地の清道は柿の花が咲く5月に霧が濃く、ハチの活動を妨げるため、わずかに残る受粉樹の花粉さえうまく運ばれないといいます。 面白いことに、清道の柿の木を他の地域に植えると種ができると言われています。こうした特性が認められ、清道パンシは山林庁の1年あまりの調査を経て、2010年3月に地理的表示第28号に登録されました。種がないので、熟し柿をスプーンですくって食べるときに種をよける必要がないのが、食べる側には何よりうれしい点です。
熟し柿、アイスホンシ、干し柿スライス、トンネルの柿ワイン
清道パンシは果肉が柔らかく糖度と水分が高いので熟し柿に向き、凍らせて食べるアイスホンシも人気です。種がないため、干し柿のように丸ごと干すより3〜4等分して干す「カムマルレンイ(柿の干しスライス)」が発達し、この「清道カムマルレンイ」も2024年に山林庁の地理的表示第62号に登録されました。ほかに半生干し柿、干し柿、柿酢、柿の葉茶など加工品も多彩です。 一風変わったスポットが、華陽邑松金里の「ワイントンネル」。1904年(1898年とする資料もあります)完成の長さ約1,015mの旧鉄道トンネルを、柿ワインの熟成貯蔵庫兼カフェにした場所で、ひんやりしたレンガのトンネルにワイン樽が並びます。清道の柿ワインは2005年の釜山APEC晩餐会でも使われたそうです。営業時間などは訪問前に確認を。
いつ行く?秋のパンシ祭り
パンシは9月から11月にかけて熟します。清道を訪れるのにいちばんいいのは秋、特に2006年から毎年10月に開かれる清道パンシ祭りの期間です。会場には熟し柿がずらりと吊るされたパンシトンネルが作られ、柿もぎ体験やパンシマーケット、グルメエリアが運営されます。報道によると、コロナ後に再開された2022年の祭りには3日間で約45万人が訪れたと推計されています。同じ10月には清道パンシマラソン大会も開かれます。 祭りでなくても、秋に清道の田舎道を走れば、家々の柿の木にオレンジ色の実がたわわに実る風景が見られます。熟し柿は傷みやすいので、持ち帰るなら硬めの柿を選んで家で追熟させるか、すぐ食べる分だけ買うのがおすすめです。日程や場所は年ごとに変わるので、清道郡の案内を確認してください。