
ニラを浮かべたシジミ汁 · 写真: shizu k (shezzz), Flickr / CC BY-SA 2.0 (Wikimedia Commons)
河東のジェチョプクッ:蟾津江の砂地をかいて獲る小さなシジミと、世界が認めた手掻き漁
白く濁ったスープにニラをたっぷり浮かべたジェチョプクッ(シジミ汁)は、慶尚南道・河東を代表する朝ごはんです。蟾津江のシジミが有名な理由、川底をかく伝統漁、釜山の夜明けの行商の話、河東でシジミを楽しむ方法をまとめました。
蟾津江が育てた小さな貝
ジェチョプは爪ほどの大きさの三角形の淡水の貝で、日本のシジミと同じ仲間です。川の水と海水が混じり合う河口の砂地に多くすんでいます。慶尚南道・河東と全羅南道・光陽の間を流れる蟾津江(ソムジンガン)の下流は韓国最大のシジミの産地で、2018年の報道によると国内のシジミ生産量の70%以上が蟾津江産です。 蟾津江のシジミは河口堰のない川で育ち、大量養殖が難しいため貴重な食材とされます。食べてきた歴史も長く、河東郡は1908年刊行の『韓国水産誌』第1集で、有用水産物106種の中にシジミが含まれていることを挙げ、当時からすでに広く食べられていた食材だと説明しています。
「コレンイ」一本で川底をかく手掻き漁
蟾津江のシジミ漁の象徴は「コレンイ」です。細かい穴のあいた網をつけた鉄の熊手を長い竹竿の先に固定した道具で、漁師は川に入り、これで川底の砂をかきます。砂と小さなシジミは穴から抜け落ち、大きなシジミだけが網に残るので、自然と資源を守る漁法になっています。深い場所では船で網を引いて獲ることもあります。 この「河東・光陽 蟾津江シジミ手掻き漁」は2018年に海洋水産部の国家重要漁業遺産第7号に指定され、2023年には韓国の漁業分野として初めて国連食糧農業機関(FAO)の世界農業遺産に登録されました。ただ、上流のダム建設などで下流の塩分が高まりシジミが減って、かつて3千人を超えた漁師が500人ほどに減ったという報道もあります。
釜山の夜明けの呼び声から、河東の名物へ
シジミ汁はもともと慶尚道の河口の町の朝ごはんでした。今ではシジミといえば蟾津江と河東ですが、2005年のあるコラムによると、その30年あまり前までは、シジミで最も有名だったのは洛東江河口の釜山でした。早朝の路地に「ジェチョプクッ、サイソ(買ってください)」という声が響くと、各家庭が鍋を持って出てきて汁を受け取り、朝の食卓に出したという思い出話がいくつも残っています。 しかし環境汚染で洛東江の河口が汚れると、シジミの名声は河口堰のない蟾津江の河東へ移ったと紹介されています。シジミは水が少し汚れただけでもすみにくいと言われます。だから今の「河東のシジミ」という名前には、澄んだ川がまだ生きているという意味も込められています。
シジミ汁一杯と、いっしょに頼みたい料理
シジミ汁は、シジミを大釜でしっかりゆでてだしを取り、ざるでこして殻を取り除き、取り出した身をもう一度スープに戻して煮て作ります。スープは白く濁っていても、味は澄んですっきり。仕上げに刻んだニラ(慶尚道の言葉で「チョングジ」)をたっぷり浮かべるのが河東式の特徴で、唐辛子粉を少し入れたり塩で味を調えたりします。ご飯を入れればしっかりした朝食になります。 シジミの店では汁物以外のメニューもあります。ゆでたシジミの身を野菜と甘酸っぱく辛い酢コチュジャンで和えた「ジェチョプフェムチム」は海苔で包んだりご飯に混ぜたりして食べ、シジミの身にニラやねぎを入れて焼いた「ジェチョプジョン」はお酒のつまみにぴったり。汁、和え物、チヂミがそろった定食を選べば一度に味わえます。
いつ、どこで食べる?
シジミの旬は資料によって少しずつ違います。5〜6月を旬とするところもあれば、春にも獲れるが身がふっくらする9〜10月が旬だという報道もあります。シジミ汁はゆでて冷凍しておくので、季節に関係なく一年中食べられます。 河東邑の蟾津江沿いにはシジミ汁を出す店がいくつも集まっていて、花開市場や双磎寺へ向かう途中に立ち寄るのにも便利です。すっきりしたスープを二日酔いの朝に求める人が多く、早朝から開ける店もあります。安い輸入シジミが河東産と偽って売られたことがあるという報道もあるので、産地が気になるなら原産地表示を確かめましょう。