
炭火で焼くウナギ · 写真: mino park / CC0 (Wikimedia Commons)
高敞の風川ウナギ:地図にない「風川」、海と川が出会う場所のウナギ
韓国でウナギの焼き物といえば、まず高敞の風川(プンチョン)ウナギの名が挙がります。ところが「風川」という地名は地図にありません。名前をめぐる諸説、今のウナギ事情、禅雲寺の門前での食べ方、覆盆子酒と一緒に飲む理由までまとめました。
風川ウナギはどこのウナギか
風川ウナギとは、全羅北道高敞郡心元面月山里一帯、禅雲山のふもとから流れ下る舟津川(仁川江)が黄海と出会う河口で獲れるウナギを指します。面白いのは「風川」という地名が地図にないことです。地元の人々が昔から舟津川の河口一帯を「風川江」と呼んできて、その名がウナギに付きました。 ウナギは川で育ち、産卵のため海へ下り、海で生まれた稚魚(シラスウナギ)がまた川をさかのぼります。そのため海水と淡水が混じる河口は昔からウナギがよく獲れる場所で、高敞のこの河口もそうでした。干拓前は海水が今よりずっと奥まで入り込んでいたと伝えられています。
「風」の字が付いた理由には諸説あり
風川という名の由来は、資料によって説明が異なります。 一つ目は潮の話です。舟津川は川ですが一日に二度海水が押し寄せ、そのとき風とともにウナギが上ってくるので「風」と「川」を合わせたという説。二つ目は、海水と淡水が混じり合う汽水域を指す言葉だという説明で、仁川江(舟津川)が海と出会う一帯を風川と呼ぶと紹介する新聞記事もあります。いずれにしても要は「川と海が出会う場所のウナギ」ということです。 つまり風川ウナギは特別な品種の名前ではありません。高敞でいう風川ウナギは、この河口一帯でとれていたウナギを指す言葉で、今では高敞のウナギの代名詞のように使われています。
今食べるウナギはどこから来るのか
正直に言えば、河口で獲れる天然ウナギは今ではとても貴重で値段も高くなっています。2014年の報道では、禅雲寺周辺のウナギ店はほぼすべてが養殖ウナギを使っていました。韓国のウナギ養殖は、河口をさかのぼってくるシラスウナギを捕まえ、養鰻場で1年以上育てる方式です。 その養殖の中心が高敞です。2024年の報道によれば、高敞のウナギ養殖場は85か所と全国最大規模で、全国供給量の3割ほどを占めます。高敞郡は養殖ウナギを干潟に放して餌を与えずに育てる「半養殖・半自然」事業を行ったこともあります。天然ものを食べたいなら、注文前に必ず確認し、値段も聞いておきましょう。
禅雲寺の門前での食べ方
風川ウナギを食べに行くのは、たいてい禅雲山道立公園と禅雲寺の入口あたりです。この道沿いにウナギ専門店が立ち並び、ツバキやヒガンバナ、紅葉の季節に寺を参拝してから下りてきてウナギを食べるのが高敞旅行の定番になっています。 焼き方は大きく塩焼きとタレ焼きの二つです。塩焼きはウナギ本来の香ばしさを、コチュジャンだれを塗ったタレ焼きは甘辛さを楽しむ食べ方です。初めてなら半々で頼んで食べ比べるのもおすすめです。禅雲山一帯のウナギ店を紹介する記事では、コチュジャンだれを塗って炭火で焼く食べ方が代表的に挙げられています。
覆盆子酒と組み合わせる理由
高敞でウナギを食べると、ほぼ必ず添えられるのが覆盆子(ポップンジャ)酒です。覆盆子は韓国の野イチゴの一種で、6〜7月に黒みがかった赤に熟します。高敞では1960年代から栽培が始まり、2004年には覆盆子産業特区に指定されました。2013年の報道によると、高敞の栽培面積は全国の約31%でした。 どちらも高敞の特産で、どちらも韓国では体に精をつける食べ物とされていることが両者を結びつけました。禅雲山の特産として雀舌茶、覆盆子酒、風川ウナギを並べて挙げる紹介もあります。6月には禅雲山道立公園一帯で「高敞覆盆子とスイカ祭り」が開かれ、2025年には「風川ウナギとともに」という副題が付くほど、ウナギも祭りの主役です。この時期に行けば、ウナギとともに摘みたての覆盆子も味わえます。覆盆子酒は甘く飲みやすいですがお酒なので、運転する人は控えましょう。