豆知識
木の実をのせた双和茶 · 写真: 허수자 / CC BY 2.0 KR (Wikimedia Commons)

木の実をのせた双和茶 · 写真: 허수자 / CC BY 2.0 KR (Wikimedia Commons)

韓国全羅北道 · 井邑

井邑の双和茶通り:地黄の里で味わう、ひと椀のような韓方茶

全羅北道井邑の旧市街には、全国で唯一という双和茶(サンファチャ)通りがあります。なぜ井邑なのか、20種あまりの薬材と九蒸九曝の熟地黄で煎じた井邑の双和茶がどう出てくるのか、一緒に出るおやつや楽しみ方までまとめました。

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全国唯一の双和茶通り

双和茶(サンファチャ)は、何種類もの韓方薬材を濃く煎じて作る韓国の伝統的な韓方茶です。疲れた体を整えるお茶とされ、昔の喫茶店では卵黄を浮かべて出すこともありました。 全羅北道井邑の旧市街には、この双和茶を出す伝統茶屋が集まった「双和茶通り」があります。旧警察署から税務署までの約450mに茶屋が18軒並び、井邑市全体では双和茶の店が40軒以上あるといいます(資料によって44軒、47軒)。1980年代にある伝統茶屋が有名になると、似た店が少しずつ自然に集まって今の通りになったと伝えられます。2018年には通りの茶屋の店主たちが双和茶通り協議会を結成しました。

なぜ井邑なのか:地黄の里

井邑が双和茶の里になった理由は原料にあります。双和茶の中心となる薬材・地黄の主産地がまさに井邑だからです。井邑の地黄は主に甕東面一帯でとれ、組織が締まっていて薬効成分と保存性に優れているとされます。朝鮮時代には王に献上される品で、2015年には地理的表示団体標章に登録されました。 1990年代初めには、井邑の地黄は全国生産量の約70%を占めるほど圧倒的でした。しかし中国産の輸入などの影響で、今では約20%ほどに減ったといいます。井邑市は地黄産業を再び育てるため栽培面積を増やす計画を立てており、双和茶通りはその地黄を最も身近に味わえる場所です。

何が入っている? 20種あまりの薬材と九蒸九曝

井邑の双和茶のベースは、熟地黄、当帰、芍薬など20種あまりの韓方薬材を煎じた湯です。味の中心は熟地黄で、井邑の茶屋は地黄を九回蒸して九回干す「九蒸九曝」の方法で作った熟地黄を使っていると紹介しています。こうすると地黄が黒く変わり、甘みと深い香りが引き出されます。 煎じる時間も長く、30時間以上煎じるという話が伝わるほどじっくり煮出すので、スープのように濃くとろりとしたお茶になります。そこに栗、ナツメ、銀杏、カボチャの種、松の実などをたっぷりのせて出すので、一杯というよりひと椀と言ったほうがぴったりです。ほろ苦くて甘い味わいで、具はスプーンですくって食べます。

一緒に出てくるおやつ

井邑の双和茶通りのもう一つの楽しみは、お茶と一緒に出てくるおやつです。双和茶は熱を長く保つずっしりした滑石(コプトル)の器で出てくることが多く、焼いたカレトク(棒状の餅)と水あめ、おこげなど素朴なおやつが添えられます。ピーナッツや山芋のすりおろしがコースのように一品ずつ出てきたという訪問記もあるほどで、何が出るかは店によって違います。 お茶を一杯頼んだら小さなお膳が整うようなものなので、軽いおやつを兼ねた休憩の場と考えるとよいでしょう。焼いた餅を水あめにつけて食べ、熱いお茶をゆっくり飲んでいると、体がすぐに温まります。そのためか、この通りは長いあいだ肌寒い季節に特ににぎわう場所でした。

いつ、どう楽しむ?

以前は秋と冬に客が集中していましたが、ブログやインスタグラムで知られるようになり、最近は一年中訪れる人が増え、若い客も多くなりました。訪問客の60%以上が市外から来るという報道もあるほどで、井邑を訪れる旅行者にとって定番のコースになっています。 井邑は紅葉の名所・内蔵山のある町でもあります。紅葉の季節に内蔵山を歩いて下りてきて、市内で双和茶を飲んで体を温める日程がよく合います。双和茶は薬材の香りと苦みがかなり強いので、初めてならゆっくり味わいましょう。茶屋ごとに薬材の配合やおやつが違うので、2軒ほど比べてみるのも楽しいものです。薬材が入ったお茶なので、体調が気になる人は事前に確認しておくと安心です。

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