
韓国で最も多く栽培されているブドウ品種、キャンベル・アーリー · 写真: Tae Hun Kim / CC0 (Wikimedia Commons)
永同のブドウとワイン:ブドウの里がワインの里になるまで
忠清北道の永同は、道内のブドウの4分の3を育てるブドウの里であり、農家ワイナリーが集まる「ワインの里」でもあります。1959年に周谷里で始まったブドウ畑、ブドウの値下がりをきっかけにワインを造り始めた経緯、キャンベル・アーリーで造る韓国ワイン、ワイントンネルと祭りの楽しみ方をまとめました。
道内ブドウの4分の3
永同郡は忠清北道の南端、慶尚北道・全羅北道と接する山あいの郡です。ここは昔からブドウの産地として知られてきました。2026年7月の報道によると、永同のブドウ畑は1,046haで、全国のブドウ生産量の約8%を占め、忠清北道のブドウの75%がここで生まれるといいます。2006年の報道では全国の9.4%、2008年は8.5%とされ、何十年も全国有数の産地であり続けていることがわかります。 秋の永同ブドウ祭りの会場の名前も「果物の国テーマパーク」。祭りではマスカット・ベーリーAやシャインマスカットなどが主に販売されます。ブドウのほかに桃やスモモでワインを開発したという報道もあるほど、果物づくりが盛んな土地です。
周谷里から始まったブドウ畑
永同ブドウの出発点とされるのは、永同邑の周谷里です。2014年のソウル新聞の報道によると、周谷里では1959年にブドウ栽培が始まり、今でも「周谷里のブドウが一番」と言われるほどです。2019年の報道でも、周谷里は永同郡で最初にブドウが植えられた場所として紹介されています。 この村のある農園は、1965年の祖父の代から自家用の酒を造ってきて、2010年にワインとして商品化したそうです。ブドウを育てる家で自然に酒を造って飲んでいた暮らしが、のちのワイン産業の種になったわけです。 永同は2005年にブドウ・ワイン特区に指定され、2016年の報道では「国内唯一のブドウ・ワイン産業特区」と紹介されました。一房のブドウから始まった話が、地域のアイデンティティになったのです。
ブドウの値下がりでワイン造りへ
転機は2000年代後半でした。2014年の報道によると、永同郡はブドウの値下がりを受けて事業の多角化が必要だと考え、2008年から農家型ワイナリーの育成に乗り出しました。地元の大学と組んだワインアカデミーの運営、農家への発酵・熟成設備の支援、海外研修、常設販売所の建設推進などに取り組み、2014年には自治体として初めてワイン研究所も開設しました。 その結果、2019年の報道時点で永同には企業型1か所と農家型41か所、計42か所のワイナリーがあり、全国190か所の22%を占めていました。年間約90万本(750ml換算)を生産し、国内ワイン生産の24%に当たるといいます。数え方によって数字は少しずつ違いますが、永同が韓国ワインの中心地だという評価は一貫しています。永同のワイナリーは2013年から毎年、韓国伝統酒の品評会で賞を受けてきました。
キャンベル・アーリーで造る韓国ワイン
永同ワインの個性はブドウから生まれます。韓国で最も多く栽培されているキャンベル・アーリーのように、もともと生食用だったブドウでワインを造る農家が多くあります。2024年のアジア・ワイン・トロフィーで受賞した永同ワインの中にも、キャンベル・アーリーの香りに山ブドウの重みを加えた赤や、甘いベリーの香りのキャンベル・ロゼがありました。 造り方もさまざまです。2019年の報道では、竹の樽での熟成、発酵のタイミングを合わせたロゼ、糖度を30ブリックス以上に高めたアイスワイン、タンクで二次発酵させるシャルマ方式のスパークリングなどが紹介されています。当時の度数は12度前後、1本1万3,000〜5万ウォンほどでした。 永同郡は8月8日を「ワインデー」に定めました。8という数字がブドウの粒と無限大の記号に似ていることにちなんだそうです。
ワイントンネルと祭りの楽しみ方
永同ワインを一度に知るなら永同ワイントンネルがおすすめです。2018年10月に完成したトンネルで、報道によると長さ420m、幅4〜12m、高さ4〜8mの規模で、内部は10のテーマに分かれています。営業時間や休館日、入場料は変わることがあるので、訪問前に確認してください。 祭りは二つ覚えておけば十分です。晩夏から初秋に開かれる永同ブドウ祭りでは採れたてのブドウを味わって買うことができ(2025年は9月18〜21日、果物の国テーマパーク)、2010年から毎年開かれる大韓民国ワイン祭りでは農家ワイナリーのワインを飲み比べられます。 ブドウはそのまま食べ、ワインは地元のワイナリーで試飲して選ぶのが、いちばん永同らしい旅の仕方です。試飲後の運転は厳禁なので、列車や公共交通機関の利用をおすすめします。