歴史
スープを注いで煮込むムルタッカルビ · 写真: Kjoonlee / CC BY 4.0 (Wikimedia Commons)

スープを注いで煮込むムルタッカルビ · 写真: Kjoonlee / CC BY 4.0 (Wikimedia Commons)

韓国江原道 · 太白

太白のムルタッカルビ:炭鉱の町がタッカルビにスープを注いだ理由

タッカルビといえば鉄板で炒める春川式を思い浮かべますが、標高の高い炭鉱の町・太白では鍋にスープを注いで煮込みます。炭鉱夫の食卓から生まれたというムルタッカルビの由来と、ナズナをたっぷりのせる太白式の食べ方をまとめました。

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石炭で築かれた町・太白

江原道の太白は、韓国の石炭産業の象徴のような町です。プレシアンの報道によると、1936年の長省鉱業所の開坑が炭鉱都市の出発点で、1950年の大韓石炭公社設立後、長省・銅店・黄池・禾田・所道・通里に次々と炭鉱が開発されました。1981年に三陟郡の黄池邑と長省邑が合併して太白市が誕生した頃、炭鉱夫は1万7,812人、無煙炭の生産量は600万トンを超えていたといいます。 地下深くの坑内で一日を過ごす炭鉱夫には、力の出るしっかりした食事が必要でした。毎日新聞は、炭鉱夫たちが重労働に耐えるため豚肉や鶏肉を好んで食べたと伝えています。太白の代表料理とされるムルタッカルビは、まさにこの炭鉱時代の食卓で形になった料理だと語られています。

「ちょっと水を足して」から始まった話

毎日新聞の記事によると、太白のタッカルビは石炭産業が盛んだった1970年代に始まりました。最初は鶏を焼いたり炒めたりして食べていましたが、坑内から出てきた炭鉱夫たちは汁気のない料理を飲み込みにくがったといいます。「タッカルビが喉を通らないから、ちょっと水を足してみて」という一言から、鶏肉に水を注ぐやり方が生まれたという話が伝わっています。炭塵を吸った喉をピリッとしたスープで洗い流したかったのだという話も伝わっています。 ただし、こうした由来は地元に伝わる話で、最初に誰がいつ作ったのかを示す公式な記録は見当たりません。確かなのは、炒める料理だったタッカルビが太白で「煮込む料理」に変わり、炭鉱夫の口と腹を満たしながら急速に広まったということです。

スープが命:太白式は何が違うのか

春川式タッカルビが広い鉄板で味付けした鶏と野菜を炒める料理なら、太白式は鍋に味付けした鶏を入れ、野菜をのせてからスープを注いで煮込みます。毎日新聞は「スープが命」として、鶏の足と骨でスープをとり、醤油・粉唐辛子・ニンニクなど10種類ほどの材料でタレを作ると紹介しています。最初は汁気がたっぷりですが、煮るほど煮詰まって最後はとろりとしたタレだけが残ります。それでも名前はムル(水)タッカルビです。 のせる野菜も太白らしいものです。エゴマの葉・白菜・春菊・若い白菜などの旬の野菜にニラ、コムチュイやチュイナムルといった山菜を使い、10月から4月まではナズナ(ネンイ)をたっぷりのせるのが特徴とされます。ヨモギやセリは香りが強すぎて鶏の味を消してしまうので、あまり使わないそうです。脂が少なく淡泊でありながら、ピリッと辛い味わいです。

黄池洞の路地の全盛期とその後

炭鉱夫の口に合い、腹持ちが良く、量もたっぷりのムルタッカルビは急速に広まりました。毎日新聞によると全盛期は1980年代で、黄池洞の旅館街一帯に専門店が集まって軒を連ね、どの店にも客があふれていました。交代勤務を終えた作業着姿の炭鉱夫たちが、鍋を囲んで一日を締めくくっていた光景が、この頃の話として伝わっています。 変化は1980年代末に訪れました。政府の石炭産業合理化政策の後、1989年ごろから閉山が相次ぎ、太白の人口は急速に減り、元祖とされた店のいくつかも店を閉じました。それでもムルタッカルビは消えませんでした。今では太白を訪れる旅行者がわざわざ食べに来る郷土料理となり、市内各地のタッカルビ店がそれぞれのスープでその味を受け継いでいます。

おいしく食べる順番

ムルタッカルビはたいてい2人前以上を鍋ごと出し、テーブルのコンロで煮ながら食べます。最初は野菜が鍋の上に山盛りなので、スープが煮立って野菜がしんなりするまで待ってから全体を混ぜます。鶏に火が通ったら野菜と一緒に食べ、まだスープがたっぷりあるうちにラーメン、うどん、チョルミョンなどの麺を入れるのがよくある順番です。最後は煮詰まったタレにご飯を入れてポックンパ(焼き飯)で締めます。 ナズナの季節である晩秋から春にかけて行けば、ナズナの香りがスープに移り、より太白らしい味を楽しめます。太白は標高が高く夏も涼しいので避暑客も多く、冬には太白山の雪山登山の後に温かいムルタッカルビの鍋を求める人が多いです。石炭博物館で炭鉱都市の歴史を見てから食べると、この料理がなぜ生まれたのかがより実感できます。

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