
干し柿(コッカム) · 写真: Hyeon-Jeong Suk / CC BY 2.0 (Wikimedia Commons)
尚州のコッカム:韓国の干し柿の6割をつくる町、トゥンシ柿と冷たい風の物語
慶尚北道の尚州は、韓国の干し柿(コッカム)の約6割を生産する干し柿の町です。朝鮮王室への献上記録、樹齢750年の柿の木、国家重要農業遺産に指定された伝統の干し柿づくり、干し柿特区の村々、冬の祭りまでまとめました。
干し柿といえば尚州
慶尚北道の北西部にある尚州は、昔から米、蚕の繭と並んで干し柿で知られた町です。地元メディアは尚州が韓国の干し柿生産量の約6割を占めると繰り返し報じており、尚州市も祭りの案内で同じ数字を使っています。農家数と生産量は資料によって異なり、2020年の地元メディアは約5千戸で1万2千トン以上、2026年の農業専門誌は3,500戸あまりで約1万9千トンと伝えています。 秋が深まると、尚州の村々ではオレンジ色の柿をずらりと吊るした乾燥小屋があちこちに現れます。柿の木の並木道も多く、10〜11月に尚州を通ると、村全体が柿色に染まった風景に出会えます。干し柿は、地元農家の冬の暮らしを支える大切な産業でもあります。
王に献上された干し柿と樹齢750年の柿の木
尚州の干し柿の歴史は記録にも残っています。地元メディアによると、朝鮮王朝実録には1468年、睿宗の即位年に尚州の干し柿を献上品目に定めたという記録があります。毎年の尚州コッカム祭りでは、尚州牧使が王に干し柿を献上する場面を再現する行事も行われます。 尚州市外南面所隠里には、樹齢750年とされる柿の木があります。「天の下で最初の柿の木」と名付けられたこの木は、幹の真ん中が二つに裂けているのに、今も毎年3千〜4千個の実をつけるそうです。周辺は干し柿公園として整備されていて、尚州の干し柿のルーツを目で確かめられる場所です。
トゥンシ柿と冷たい風がつくる味
尚州の干し柿の原料は「尚州トゥンシ」という渋柿です。名前のとおり丸い形で、山林庁に品種登録されています。生のままでは渋くて食べにくいのですが、皮をむいて干すと渋みが消え、濃い甘みが残ります。地元メディアは、トゥンシで作った干し柿の糖度が他の柿よりはるかに高いという調査結果も伝えています。 作業はふつう10月中旬に始まり、11月中旬まで柿の皮をむきます。むいた柿は日陰で風通しのよい干し場に吊るして乾かし、乾燥期間は資料によって少しずつ違いますが、半生の「パンゴンシ」はおよそ45〜60日、しっかり乾いた「コンシ」は60日以上かかると紹介されています。尚州の澄んだ冷たい晩秋の風が干し柿の味をつくる、といわれるのはこのためです。
国家重要農業遺産になった干し柿づくり
2019年11月、農林畜産食品部は「尚州の伝統干し柿農業」を国家重要農業遺産第15号に指定しました。柿の木の接ぎ木技術が代々受け継がれていること、固有品種の尚州トゥンシが守られていること、自然の風で乾かす伝統的な乾燥方法が続いていることが評価されました。尚州トゥンシは今もマメガキ(コヨム)の木に接ぎ木する伝統的な方法で育てられているそうです。 指定前の現地調査では、外南面所隠里の干し柿公園と樹齢750年の柿の木、南長洞一帯の柿の村が視察されました。つまり尚州の干し柿は、単なる特産品ではなく、柿を育て、むき、干す村全体の暮らし方が遺産として認められたのです。シーズン中に柿の村を歩けば、なぜこの風景が遺産なのか実感できます。南長洞と外西面一帯は、それより前の2005年に「干し柿特区」にも指定されています。
干し柿の季節に尚州を楽しむ
尚州の干し柿は、乾かし具合によって出回る時期が違います。地元メディアによると、中がしっとり柔らかいパンゴンシは主にクリスマス前に、もっちりとしっかり乾いたコンシは旧正月の頃に出荷されます。ある農業専門誌は、尚州は「コンシで本来の姿を守り、パンゴンシで消費の幅を広げている」と表現しており、最近はパンゴンシを好む人が増えてその割合も大きくなっているそうです。 尚州コッカム祭りはもともと12月の開催でしたが、需要が集中する旧正月前に時期を移し、今は1月に尚州市内の慶尚監営公園一帯で3日間開かれます。2026年の祭りでは国家重要農業遺産になった干し柿農業を紹介する展示も行われ、2027年の祭りは1月22〜24日に決まっています。皮むきが盛んな10月中旬〜11月中旬に南長洞や外南面の柿の村を訪ねれば、祭りとはまた違う、むいた柿がずらりと並ぶ干し場の風景に出会えます。