
蒸したズワイガニ · 写真: leejungdong / CC0 (Wikimedia Commons)
蔚珍のズワイガニと厚浦港のベニズワイガニ:蔚珍が「元祖の村」と呼ぶ巨日里と王石礁の話
東海岸のズワイガニといえばまず盈徳が浮かびますが、そのすぐ北の蔚珍も「ズワイガニの元祖」を名乗っています。カニにちなむ古い地名をもつ巨日里、カニのすみかである王石礁、厚浦港で一緒に味わえるズワイガニとベニズワイガニの違い、旬と食べ方をまとめました。
盈徳の隣、蔚珍の「元祖」の主張
東海岸のズワイガニを代表する名前は、長らく「盈徳テゲ」でした。交通が不便だった時代、東海岸の各地で獲れたカニが盈徳の江口港に集まり、そこから大都市へ売られていったため、その名が広まったという説明が多く見られます。ところが盈徳のすぐ北にある蔚珍は、ズワイガニ漁の元祖は自分たちだと言います。 蔚珍の根拠はカニがすむ海です。蔚珍と盈徳の間の沖にある海中の岩礁地帯「王石礁(ワンドルチョ)」周辺で獲れたカニが最上とされ、蔚珍はこの王石礁に面した町だというのです。浦項もズワイガニの漁獲が多い産地で、東海岸の三つの町はそれぞれにカニ自慢をしています。どこが元祖かは意見が分かれるので、ここでは蔚珍が語る話をたどってみます。
カニの名をもつ村、巨日里
蔚珍郡平海邑の巨日里は、蔚珍が「ズワイガニ漁の歴史の現場」として掲げる村です。昔から蟹浦(ヘポ)、蟹津(ヘジン)、キアルゲといった名で呼ばれ、前の二つに入っている「蟹」がまさにカニを意味します。村の沖は王石礁に接していて、ズワイガニの主な生息地とされています。 蔚珍郡は、盈徳との元祖争いが激しかった頃、この村の道路沿いに「蔚珍ズワイガニ由来碑」を建てました。碑文には、蔚珍のズワイガニが『東国輿地勝覧』や『大東地志』などに記録され、14世紀初めの高麗時代から蔚珍の特産物になっていたと記されています。毎年の蔚珍のカニ祭りにも、巨日村の由来を紹介する広報館が設けられます。
パクタルゲとテゲ、名前の話
テゲ(ズワイガニ)の「テ」は「大きい」の意味だと思われがちですが、蔚珍ズワイガニ由来碑には、脚が竹(テ)のようにまっすぐ伸びているのでテゲと呼んだと刻まれています。また地元の人々は、大きく身がぎっしり詰まった硬いカニを、硬い木であるパクタルの木にたとえて「パクタルゲ」と呼んだそうです。今でも身の詰まった上物を「パクタルテゲ」と呼んで特別扱いします。 ズワイガニはいつでも獲れるわけではありません。産卵期と脱皮期を守るため法律で禁漁期が定められており、2023年の海洋水産部の発表では6月1日から11月30日までです。メスのカニは一年中獲ることができません。脱皮したばかりのカニは殻が薄く身も少ないので、身の詰まったカニを味わえるのは冬から春にかけてです。
厚浦港で出会うベニズワイガニ
蔚珍の南端、盈徳との境にある厚浦港は、ズワイガニとともに「ベニズワイガニ」(ホンゲ)でも有名な港です。ベニズワイガニはズワイガニより深い海にすむ親戚のようなカニで、値段が手ごろなので気軽に楽しめます。二つを見分ける簡単な方法はお腹の色です。蒸したときにお腹が白いのがズワイガニ、お腹まで赤いのがベニズワイガニです。 厚浦港では毎朝、魚市場で競りが行われ、報道によるとズワイガニは午前8時ごろ、ベニズワイガニは9時半ごろに競りが進みます。早めに行けば、水槽や床いっぱいに並んだカニを見物できます。毎年、晩冬から早春にかけては厚浦港の王石礁広場一帯で「蔚珍ズワイガニとベニズワイガニ祭り」が開かれ、2026年は2月27日から3月2日まで開催されました。
蒸し、甲羅ご飯、そして焼き
厚浦港周辺の食堂で一番多いメニューはカニの蒸し料理です。水槽からカニを選び、重さで値段を決めると、その場で蒸して出してくれる方式が一般的なので、注文前に1kgあたりの価格と蒸し代が別にかかるかを確認しましょう。脚の身から先に食べ、残った甲羅にカニみそとご飯を入れて混ぜたり炒めたりするのが、カニの膳の締めくくりです。 ある新聞の試食記事では、ズワイガニを焼いてみると水分が飛んで甘みが増し、噛みごたえが出たという評価でした。蒸しはあっさりして香りが濃く、焼きは少し焦げた香ばしさと塩気が引き立つというのです。ベニズワイガニは身をほぐしてビビンバやカニの醤油漬けで楽しむこともあり、ズワイガニとベニズワイガニを食べ比べてみるのも蔚珍旅行の楽しみです。