
青松のリンゴ
青松のリンゴ:寒暖差13℃の山里が育てた「蜜リンゴ」と背の低いリンゴ畑の100年
周王山で有名な慶尚北道の青松は、「蜜リンゴ」の愛称で知られるリンゴの町でもあります。1920年代に始まった栽培の歴史、大きな寒暖差がつくる締まって甘い果肉、韓国のリンゴ畑の姿を変えた背の低いリンゴの木、選び方と楽しみ方をまとめました。
周王山のふもとのリンゴの町
慶尚北道の青松は、奇岩の絶壁や滝で知られる周王山国立公園がある山あいの郡です。この青松を食べ物で語るとき、真っ先に出てくるのがリンゴです。地元メディアによると、青松は国内最大級のリンゴ産地で全国生産量の10%以上を占め、リンゴが地域の農業所得の約6割を担っているそうです。 秋に青松を訪れると、道路沿いに赤く実ったリンゴ畑がどこまでも続きます。2018年には3,756の農家が3,339haで6万2千トンあまりを生産し、全国生産量の13.2%を占めたと報じられています。「青松リンゴ」は消費者向けのブランド表彰で2023年まで11年連続で大賞を受けるほど、名が知られています。
1920年代に始まったリンゴ栽培
青松で初めてリンゴが植えられた時期については、二つの話が伝わっています。地元メディアによると、1924年に縣西面徳渓里にリンゴの苗木が入ったという説と、1927年に600本あまりの苗木を持ち込んだという説があります。いずれにしても青松のリンゴの歴史は100年近くになるといえます。 大きな転機は1995年でした。青松郡縣東面の果樹協業団地の関係者がイタリア北部・南チロルのリンゴ産業を視察し、背の低いリンゴの木を密に植える「密植栽培」を手本にしました。苗木が空港で押収される紆余曲折を経て研究用として持ち込み、青松郡は同じ年、全国で初めて「背の低いリンゴ園」を導入したといわれています。
寒暖差がつくる締まって甘いリンゴ
青松のリンゴは標高240mを超える山地で育ちます。地元メディアによると、青松は昼と夜の気温差が年平均13℃を超える土地で、この大きな寒暖差がリンゴに栄養分を果肉へ蓄えさせ、果肉を締まらせて甘みを高めると説明しています。昼は日差しを受けて糖をつくり、涼しい夜にはその糖をあまり消費しない、というわけです。 そのため青松のリンゴは果肉が締まって日持ちがよく、糖度が高いことから「蜜リンゴ」の愛称で全国的な人気を得たと紹介されています。切ってみると芯の周りの果肉が半透明に透けているリンゴがありますが、よく「蜜」と呼ばれるこの部分は、糖が果肉の細胞の間に集まったもので「蜜入り(水浸状果)」といいます。蜜入りのリンゴは、たいていよく熟した晩秋のリンゴで見られます。
韓国のリンゴ畑を変えた背の低い木
青松で始まった密植栽培は、慶尚北道全体のリンゴ農業へ広がりました。1995年、慶北道の果樹関係者はアメリカ・ワシントン州のリンゴ産業も視察し、その後、慶北道は南チロル式のわい性台木(M.9)を使った高密植栽培をモデルにした「新・慶北型リンゴ」政策を進めました。青松郡は1999年からこの台木の苗木を農家に普及させてきました。 背の低い木ははしごなしでも手が届いて人手が少なくて済み、日差しが実に均等に当たって色と味がよくなる利点があります。今日の韓国のリンゴ畑でよく見る、ワイヤーに沿って整然と並ぶ背の低いリンゴの木の風景は、こうして生まれました。最近の青松は、黄色い品種「シナノゴールド」を「黄金リンゴ」として育てることにも力を入れています。名前を守る取り組みも早く、1994年に「青松リンゴ」の商標を、2007年には地理的表示を登録しています。
青松リンゴの選び方と楽しみ方
よいリンゴは手に持つと大きさのわりにずっしりしていて、軸が乾いておらず、たたくと澄んだ音がします。蜜入りのリンゴが欲しいなら、晩秋に収穫する晩生種を選ぶと当たりやすいですが、蜜の部分は長く保存すると褐色に変わりやすいので、買ってきたらあまり長く置かないほうがいいでしょう。皮ごと食べるときは流水でよく洗いましょう。 青松ではリンゴの収穫期に合わせて青松リンゴ祭りが開かれてきました。2019年に第15回を迎え、前年の祭りには20万人が訪れたと報じられています。日程とプログラムは毎年変わるので、青松郡の案内を確認してください。産地ではリンゴジュースや干しリンゴなどの加工品もよく売られており、周王山の紅葉シーズンとリンゴの収穫期が重なる秋は、山歩きとリンゴ畑めぐりを一緒に楽しむのにぴったりです。