歴史
韓国でいちばん多く栽培されているぶどう品種キャンベル・アーリー · 写真: Tae Hun Kim / CC0 (Wikimedia Commons)

韓国でいちばん多く栽培されているぶどう品種キャンベル・アーリー · 写真: Tae Hun Kim / CC0 (Wikimedia Commons)

韓国京畿道 · 華城

華城ソンサンぶどう:海が退いた干拓地で育った潮風のぶどう

京畿道華城の松山面一帯は、もともと三方を海に囲まれていました。1980年代後半の始華防潮堤工事で土地も暮らしも変わると、住民が新たに植えたのがぶどうでした。キャンベル・アーリーから30余品種へ、露地スマートファームまで広がったソンサンぶどうの物語と、旬の楽しみ方をまとめました。

6分で読める1

三方が海だった松山

華城ソンサンぶどうの物語は海から始まります。華城市北西部の松山面は、始華防潮堤ができる前は三方を海に囲まれた土地で、住民は農業と漁業を兼ねて暮らしていたといいます。 変化は1980年代後半に訪れました。始華防潮堤の工事で潮が出入りしていた土地が干拓地に変わり、周りの環境も暮らしの条件も大きく変わったため、松山面と隣の西新面の住民は新しい収入源を探さなければなりませんでした。そこで選んだ作物がぶどうでした。ソウル新聞の報道は、ソンサンぶどうの栽培がまさにこの頃、防潮堤建設で生まれた干拓地で始まったと伝えています。海を失った村が、ぶどう畑で新しい道を切り開いたわけです。

潮風と寒暖差、干拓地の土

なぜぶどうだったのでしょうか。ソウル新聞によると、住民は西海岸の海洋性気候と大きな寒暖差、ミネラル豊富な黄土質の干拓地の土がぶどう栽培に向いていると判断しました。ほかの記事も、ソンサンぶどうの特徴を「潮風」に見ています。西海岸に面した地理のおかげで一年中海風が吹き、昼夜の気温差が大きいため、皮の色が濃く、糖度が高く、果肉が緻密だという説明です。 2006年の京畿日報は、貝殻が多く混じった肥えた土も、華城のぶどうの濃い色と高い糖度に一役買っていると紹介しました。海をせき止めてできた土地が、かえってぶどうに個性を与えたわけです。華城市が祭りのPRで「潮風」を前面に出すのもそのためです。

キャンベル・アーリーから30余品種へ

栽培初期の松山でも、キャンベル・アーリーのような紫のぶどうが中心だったといわれます。2006年の京畿日報は、韓国のぶどう栽培が朝鮮末期のアメリカ系品種の導入で本格化し、当時栽培されていた品種の大半がキャンベル・アーリーだと説明しました。甘酸っぱく香りの強い、韓国人にいちばんなじみのある「紫のぶどう」です。 その後、松山の農家は雨よけ栽培や環境に優しい農法を取り入れて品種を広げました。華城市は2018年、若い農業者を中心に日本で開発された青ぶどうシャインマスカットの栽培を増やすと発表し、今ではシャインマスカット・紅バラード・ココボールなど30余品種を育てているそうです。2015年には華城市が全国で初めて露地ぶどう用のスマートファームプログラムを開発し、現在は約70戸の農家がスマートフォンで水やりや換気などを遠隔操作していると紹介されています。

数字で見るソンサンぶどう

2026年のソウル新聞によると、2025年時点で華城市のぶどう栽培面積は約750ha、栽培農家は約1,500戸です。松山・西新・麻道の農協の出荷量を基準にした年間生産量は約2,400tだそうです。海をせき止めた土地で始まってから40年足らずで、京畿道を代表するぶどう産地の一つになったのです。 海外にも出ています。約40戸の農家でつくる輸出協議会が、毎年200t前後をアメリカや東南アジアなど10か国に輸出していると紹介されています。松山面と西新面の農家が協同組合をつくり、百貨店などへ共同出荷した例も報じられました。華城を通る高速道路には「松山ぶどうサービスエリア」という名前の休憩所もあり、地名とぶどうを並べた名前から、この果物が華城で占める位置がうかがえます。

いつ、どこで味わうか

ソンサンぶどうの旬は、夏の終わりから秋の初めまで。華城市はシャインマスカットを7月末から9月中旬に集中出荷すると発表したことがあり、キャンベル・アーリーのような紫のぶどうも晩夏にたくさん出回ります。 いちばん手軽に味わう方法はお祭りです。2026年の第12回華城ソンサンぶどう祭りは9月5〜6日に華城エコファームテーマパークで開かれ、ぶどう狩りやぶどう踏み体験、若い農業者がつくったぶどうドリンクやデザート、割引販売所が用意されました。同じ年の8月には京畿観光公社が農家体験とスマートファームツアーを組み合わせた「タルコムウィーク(甘い週間)」も開いています。日程は毎年変わるので、まず華城市の告知を確認しましょう。祭り会場には割引販売所が出るので、西海岸ドライブのついでに立ち寄って一箱買っていくのもおすすめです。

#ソンサンぶどう#華城#ぶどう#キャンベル・アーリー#京畿道の特産品
華城ソンサンぶどう:海が退いた干拓地で育った潮風のぶどう | TastyLog