歴史
富川のソサ桃 · 写真: Jack Dykinga, USDA / Public domain (Wikimedia Commons)

富川のソサ桃 · 写真: Jack Dykinga, USDA / Public domain (Wikimedia Commons)

韓国京畿道 · 富川

富川のソサ桃:「ポクサコル」という呼び名を残したかつての果物の名産地

今はマンションや地下鉄の駅が立ち並ぶ富川が、かつて「大邱のりんご、羅州の梨」と並び称される桃の名産地だったことをご存じでしょうか。古い地名ソサから取ったソサ桃の全盛期、都市化で消えた果樹園、「ポクサコル(桃の村)」という呼び名や市の木・祭りに残る痕跡をまとめました。

5分で読める3

富川の呼び名「ポクサコル」

富川を紹介する文章には「ポクサコル」という言葉がよく出てきます。「ポクサ」は桃(ポクスンア)の略、「コル」は村を意味するので、訳せば「桃の村」です。旅行記事でも「ポクサコル」は富川のもう一つの名前として紹介されています。 行政上の名前にも触れておきましょう。1973年7月1日に富川郡が廃止され、素砂邑が市に昇格して今の富川市が始まりました。それまでこの一帯の中心は「ソサ」で、だからここの桃も「ソサ桃」と呼ばれたのです。今も富川には素砂区や素砂駅があり、古い名前の痕跡を簡単に見つけられます。つまり「ソサ桃」と「ポクサコル富川」は、同じ土地、同じ果物を指す二つの名前というわけです。

大邱のりんご、羅州の梨と肩を並べて

ソサ桃はいつ名を上げたのでしょうか。農村振興庁のウェブマガジンは、20世紀初めから1970年代まで富川の素砂一帯が日本から入った新品種の桃の栽培で栄え、この一帯の土と気候が桃づくりによく合っていたと説明しています。 京畿日報は、1930年代以降1970年代に都市化が進むまで、「ソサ桃」が「大邱のりんご」「羅州の梨」とともに韓国三大果物名産地として認められていたと書きました。別の記事は、ソサ桃が都市化以前には全国最高の品質を誇り、聖主山には昔から野生の桃の木が育っていたと伝えています。1961年の小学校の社会の教科書の表紙に桃の花が咲く果樹園が描かれていたという話もあり、当時の桃畑がこの地域を代表する風景だったことがうかがえます。

果樹園に街ができた

桃畑が消えた理由は、ひと言でいえば都市化です。ソウルと仁川の間にある富川は、交通が便利になるにつれて急速に大きくなりました。京畿日報は、1968年12月の京仁高速道路の開通、1973年の富川市発足、1974年の京仁線の電化という流れをあわせて紹介しています。ソサ桃の全盛期が「1970年代の都市化以前まで」と記録されているのも、この時期と重なります。 今の富川で桃の果樹園を見つけるのはほとんど困難です。2023年のソサ桃祭りの開幕式で富川市議会の議長は、最近は地域で桃の花や木を見かけなくなったと話し、命脈をつないできた春徳山の桃の木も駅谷一帯の開発で消えてしまうのではと心配していました。果物の産地はなくなっても、その記憶を守ろうとする動きは続いているのです。

市の木、花、歌詞に残る桃

果樹園は減っても、桃は富川のシンボルとして残りました。2023年の記事で富川市議会の議長は、桃の木を富川の市の木として紹介し、桃の木と花、実が富川を代表する木であり花であり果物だと語りました。富川植物園のガラス温室も、富川のシンボルである桃の花の形をかたどってつくられたと紹介されています。 春には桃の花をテーマにした行事が続きます。毎年5月に春徳山一帯で開かれるポクサコル芸術祭や桃の花祭りが代表的です。京畿日報は、国民的な童謡「故郷の春」に出てくる桃の花とツツジの丘がポクサコル富川を思い起こさせると書きつつ、歌詞が富川のために書かれたものではないことも明記しています。遠美山のツツジの丘と一緒に巡れば、歌の中の春の風景を思い描きやすいでしょう。

夏のソサ桃祭り

桃が熟す夏には「ソサ桃祭り」が開かれます。2023年8月末に富川女子中学校で行われた開幕式が第22回だったというので、20年以上続く町のお祭りです。記事によると、かつて素砂三叉路一帯は桃で有名な場所で、祭りはその名前を覚えておこうとする地域住民の行事として定着しました。 旅行者に正直にお伝えすると、今の富川で「ソサ桃」を産地の果物として買うのは簡単ではありません。その代わり、この物語は首都圏の都市がどんな風景の上に築かれたのかを教えてくれます。素砂駅や素砂三叉路のあたりを通ったら、この一帯がかつて桃の花に覆われていたことを思い浮かべてみてください。夏に富川を訪れるなら祭りの日程を確認し、桃を一つ買って春徳山や遠美山に登り、昔の「ポクサコル」を見下ろすのもいい散歩になります。

#ソサ桃#富川#ポクサコル#桃#京畿道の郷土史
富川のソサ桃:「ポクサコル」という呼び名を残したかつての果物の名産地 | TastyLog