
枝で赤く熟したサンシュユの実 · 写真: Dalgial / CC BY-SA 3.0 (Wikimedia Commons)
求礼サンシュユ:春は黄色い花、秋は赤い実、智異山の山村を支えてきた木
3月になると、求礼・山洞面(サンドンミョン)の村々は一面黄色に染まります。花見で有名ですが、実際に村の暮らしを支えてきたのは秋に赤く熟すサンシュユの実でした。山東省から嫁いだ娘の伝説、樹齢千年とされる「おばあさんの木」、口で種を取っていた時代、お茶やお酒での楽しみ方をまとめました。
花より実:サンシュユの村の本当の暮らし
サンシュユは早春、葉より先に黄色い花を咲かせ、秋には細長い赤い実をつける木です。全羅南道求礼郡の山洞面は国内最大のサンシュユ群落地とされ、春の花の名所として広く知られています。 けれども村の人々にとって、サンシュユは景色である前に生業でした。2023年の報道によると、山洞面は土地のほとんどが山で田畑が乏しく、山あいの住民が暮らしを立てるためにサンシュユを植えたことが、今の大群落につながったといいます。2003年の記事には、サンシュユは村人がご飯を食べ、子どもに勉強させる元手だという言葉も出てきます。実は乾燥させて漢方薬材や健康食品として売られ、今も全国の薬材商が求礼のサンシュユを求めるそうです。
山東省の娘と千年の「おばあさんの木」
求礼には、サンシュユがどうやってこの谷に来たのかという伝説があります。約千年前、中国・山東省の娘が智異山のふもとへ嫁ぐ際にサンシュユの苗木を持ってきて植え、「山洞(サンドン)」という地名もそこから来たという話です。ただし2010年のソウル新聞はこの由来の根拠は薄いと付け加えているので、伝説として楽しみましょう。 山洞面の桂尺(ケチョク)村には、最初に植えられた木、つまり「始木」として知られるサンシュユがあります。樹齢は千年近いとされ「おばあさんの木」と呼ばれ、老いた幹を支柱に預けながらも毎年花を咲かせるそうです。近くの達田(タルジョン)村には対になる「おじいさんの木」があります。上位(サンウィ)村は200年あまり前から木を植え始めたと伝えられています。
口で種を取った時代と痛ましい歴史
サンシュユの実は種を抜き、果肉だけを干してはじめて薬材として売れます。2003年の京郷新聞によると、昔は村の女性たちが毎晩、口で一つひとつ種を取り出しており、そこから「サンシュユ村の娘は唇が花のように赤い」という言葉が生まれたそうです。今は機械で種を抜いているといいます。収穫に手間がかかるのは昔も今も同じで、実を摘むのは長い時間と労力のいる仕事だと紹介されています。 この村々には痛ましい記憶もあります。2010年の記事は、玄川(ヒョンチョン)村のサンシュユは根元が300年を超えるのに、花を咲かせる枝は60年にも満たないと書いています。1948年の麗順事件の際、討伐隊が木を切り倒したためです。当時の悲劇を歌った「山洞哀歌」もこの地に伝わっています。
干して、煎じて、漬けて:サンシュユの食べ方
サンシュユの実は酸っぱく渋いので、生で食べるより干して使います。最も一般的なのは、干した実を水で煎じたサンシュユ茶。甘酸っぱくほのかな甘みがあり、蜂蜜を少し加えて飲む人も多いです。実を酒に漬けてサンシュユ酒として楽しむこともあります。 今の求礼では使い道がぐっと広がりました。2023年の報道によると、干した実のほかにサンシュユの清(シロップ漬け)、マッコリやお酒、ジャム、発酵茶、ジュース、菓子やパン、チョコレートなどの加工品があり、カフェのエードにも使われています。漢方では古くから薬材として使われてきましたが、効能の話はあくまで伝統的な用い方として理解し、体に合わせて楽しむのがよいでしょう。
いつ、どこで出会えるか
花は3月上旬から中旬に咲き始め、ひと月近く続くそうです。この時期、山洞面の智異山温泉一帯で求礼サンシュユ花祭りが開かれてきたので、正確な日程は毎年求礼郡の案内で確かめてください。上位村と盤谷(パンゴク)村は花がとりわけ見事な場所とされ、石垣の間に木がぎっしり並ぶ玄川村も写真スポットとして知られています。 赤い実を見たいなら秋に訪れましょう。2023年時点で求礼には約284haに12万本あまりのサンシュユの木があり、求礼サンシュユは2008年に地理的表示、2014年に国家重要農業遺産に指定されたそうです。干した実やサンシュユ茶、清などの加工品は、山洞面一帯や求礼の邑内の特産品売り場で買えます。