
粒の大きい韓国の天日塩 · 写真: 국립국어원 / CC BY-SA 2.0 kr (Wikimedia Commons)
新安の天日塩:太陽と風が25日かけて作る塩、キムジャンの隠れた主役
全羅南道・新安の島々は、韓国の天日塩の大半を生み出しています。海水が塩になるまでの工程、「6月の塩」が良いといわれる理由、鉱物扱いだった塩が食品になった経緯、避難民の手で築かれた曽島(チュンド)の塩田の話と買い物のコツをまとめました。
千の島、韓国天日塩のふるさと
天日塩は、海水を塩田にためて、太陽と風だけで水分を飛ばして得る粗塩です。工場で海水を煮詰めたり精製したりして作る塩と違って粒が大きく、韓国では白菜を塩漬けしたり、塩辛や醤(ジャン)を仕込んだりするのに主に使われます。 この天日塩の大半が全羅南道の新安郡で作られています。新安は大小千を超える島からなる郡で、干潟が広く日差しと風に恵まれ、塩田がたくさんあります。2023年の報道によると、新安は全国の天日塩生産量の80%以上を占め、年平均で約23万トンを生産しています。「韓国の塩といえば新安」と言われるのも納得です。2015年の報道時点で、新安には塩の生産者855人、塩田約2,600haがありました。
海水が塩になるまでの25日
新安の塩田の塩は、ふつう25日前後かけて作られるそうです。まず海水を貯水池に引き込み、不純物を沈めます。このときの塩分濃度は1〜2度ほど。次にいくつにも区切られた蒸発池を順に移しながら水を煮詰めるように濃くしていきます。1日に1度ずつ濃度が上がるので、塩夫たちはこれを「水を削る」と呼びます。 十分に濃くなった塩水は、「チャゴ」と呼ばれる水路を通って結晶池へ送られます。2008年のソウル新聞によると、朝6時ごろ結晶池に水を張ると3〜4時間後から水面に「塩の花」が咲き始め、それが育って塩になります。塩夫は「デパ」という長い押し棒で塩をかき集めます。集めた塩は倉庫に1年近く積んで、苦味のもとになるにがり(カンス)を抜いてから出荷するそうです。
「五、六月の塩」が良いといわれる理由
新安の塩田は日照が必要なため、ふつう3月中旬から10月中旬まで塩を採ります。中でも塩田の人々が一番とするのが6月頃の塩です。2008年の記事に載った地元関係者の言葉を借りると、「五、六月にスカートの裾がひらひら揺れるほどのそよ風が塩田をなでていくとき、塩はいちばんおいしく熟す」のだとか。日差しと風がちょうどよい季節という意味です。 よく寝かせてにがりを抜いた塩が求められる理由もあります。にがりが抜けきらない塩は苦味が残りやすく、キムジャン(冬のキムチ漬け)用には倉庫で十分に寝かせた塩を好む人が多いのです。2008年の報道で塩の博物館の担当者は、ほぼ塩化ナトリウムだけの精製塩と違い、天日塩はカルシウムやマグネシウムなど海のミネラルを含んでいると説明しています。
鉱物から食品へ、避難民が築いた曽島の塩田
意外な事実をひとつ。韓国では天日塩が長いあいだ法律上「鉱物」に分類されていました。2008年の報道によると、45年間鉱物扱いだったものが、2008年3月の法改正施行でようやく食品として認められたのです。それ以来、天日塩は食品衛生の基準で管理されています。 新安の曽島には、この歴史を見られる場所があります。朝鮮戦争後の1953年、避難民を定着させ塩の生産を増やすために島と島の間をせき止めて造った、国内最大規模の単一塩田です。面積は汝矣島(ヨイド)の約2倍で、近代の文化遺産として国の登録文化財になっています。塩田造成時に建てられた石造りの塩倉庫は今は塩の博物館として使われ、塩田沿いに黒い塩倉庫がずらりと並ぶ風景も見ものです。
新安の塩の選び方と楽しみ方
粗い天日塩は、キムジャンの白菜漬けや塩辛、味噌・醤油の仕込みなど、長く漬けて発酵させる料理にぴったりです。焼く前の魚に振ったり、焼いた肉に少しつけたりしても、塩味がまろやかに感じられます。汁物やナムルのように均一に味をつけたい料理には、細かく挽いた塩を使うほうが便利です。 キムジャンの季節である晩秋は塩の需要がぐんと増えるので、早めに買っておく家庭が多いです。買うときは生産年と産地表示を確かめ、寝かせた期間が書かれた製品を選ぶとよいでしょう。新安を訪れるなら曽島の塩田と塩の博物館を巡り、塩田体験プログラムの時期かどうか新安郡の観光案内で確かめてみてください。塩田沿いを歩けば、塩づくりがなぜ「太陽と風の農業」と呼ばれるのか実感できます。