
務安のタマネギ畑での収穫 · 写真: U.S. Air Force photo by Staff Sgt. Cedrique Oldaker / Public domain (Wikimedia Commons)
務安のタマネギ:赤土の畑で育つ甘いタマネギ、タマネギキムチと藁焼きで味わう
韓国でタマネギといえば外せないのが全羅南道の務安(ムアン)です。1930年代にある村で始まったタマネギ栽培が全国最大の産地に育った経緯、海と赤土が生む味、そして務安の人々がタマネギを一番おいしく食べる方法、タマネギキムチと藁焼き(チップルグイ)をまとめました。
韓国を代表するタマネギ産地
タマネギは韓国の食卓に欠かせない野菜です。炒め物やチゲ、チャジャン麺に甘みを加え、焼肉店では生のタマネギをタレにつけて添えます。そのタマネギの代表的な産地が全羅南道の務安郡です。 務安が全国のタマネギに占める割合は資料によって少しずつ違います。2020年のニューシスは務安を全国のタマネギの約20%を生産する最大産地と紹介し、2026年の農村振興庁ウェブマガジンは国内生産量の15%以上、全国に出回るタマネギの6袋に1袋が務安産だと書いています。いずれにしても一つの郡としては指折りの規模です。2019年の報道によると、務安のタマネギの80%は海沿いの地域で栽培されているそうです。
1930年代、ひとつの村から始まったタマネギ栽培
務安のタマネギ栽培は、1930年代に清渓面(チョンゲミョン)沙麻里で始まったと伝えられています。2020年のニューシスによると、当時日本から種と栽培技術を取り入れ、その後、咸平・長城・羅州・霊光といった近隣の郡へタマネギ栽培が広がったと推定されています。今の全羅南道南西部一帯がタマネギ地帯になった出発点が務安というわけです。 務安がタマネギに向く理由として、まず気候が挙げられます。海に面しているので冬が比較的暖かく、玉が太る時期には涼しいため育ちやすいのだそうです。畑で冬を越したタマネギは初夏ごろに収穫期を迎え、この時期の務安の畑では、赤土の上にタマネギの袋がずらりと積まれた風景が見られます。
赤土と海風が生む味
務安を語るときに欠かせないのが赤い黄土(ファント)です。2026年の農村振興庁ウェブマガジンは、務安郡の面積の多くが黄土で水はけがよく、海に近いので涼しい海風とたっぷりの日照を受けることを、栽培適地の理由に挙げています。地元は「務安黄土タマネギ」の名でブランドを育ててきました。黄土の成分が味に与える影響については宣伝的な説明も多いので、そこは地元の自慢として聞いておきましょう。 務安のタマネギは身が締まっていてほのかな甘みがあり、日持ちがよいと紹介されます。生ならシャキッと、火を通すと甘みが深くまろやかになります。2020年の記事によれば、収穫期に最初に出る早生種は長持ちはしませんが辛みが少なく甘みが強いので、生食に特に向いているそうです。
務安式タマネギキムチと醤油漬け
務安ではタマネギがおかずの主役になることもあります。代表的なのがタマネギキムチです。2020年にニューシスが紹介した作り方は、もち米粉を冷水で溶いてのり状に炊き、魚醤を加えてタマネギをあえ、常温で発酵させるというもの。同じ記事に登場した地元の老舗食堂では、タマネギ特有の辛みや胃もたれを抑えるため、冬は10日ほど、夏は2〜3日寝かせてから出すそうです。熟すと甘みと酸味がそろい、肉と特によく合います。 小さなタマネギを丸ごと漬けたタマネギの醤油漬け(チャンアチ)も務安の食卓によく上ります。醤油と酢を入れて何度も煮立てては注ぐ方法で作り、甘酸っぱい味が脂っこい料理のしつこさを和らげます。漬け物には、よく「薬タマネギ」と呼ばれる紫色の小さなタマネギを使うそうです。
藁焼きと一緒に:どこで味わうか
務安のタマネギキムチが一番輝くのは、藁焼き(チップルグイ)の食卓です。チップルグイは乾いた稲わらに火をつけ、その強い炎で豚肉を一気に焼き上げる務安の郷土料理で、稲わらの香りが肉にしみ込むのが特徴。特に夢灘面(モンタンミョン)一帯が藁焼きで名高いといわれます。2020年の記事の見出しどおり「タマネギキムチのない藁焼きは脂っこくてすぐ飽きる」と言われるほど、務安の人にとって二つは一組なのです。 タマネギを買って帰りたいなら、収穫期の初夏以降に務安の邑内の市場や地元農協の直売所を訪ねてみてください。袋単位で買うとお得で、風通しのよい涼しい場所につるしておけば長く食べられます。務安国際空港があり木浦にも近いので、南西海岸の旅の途中に立ち寄りやすい場所です。