歴史
鮭とイクラ、豆腐をのせた石狩鍋 · 写真: naotakem / CC BY 2.0 (Wikimedia Commons)

鮭とイクラ、豆腐をのせた石狩鍋 · 写真: naotakem / CC BY 2.0 (Wikimedia Commons)

日本札幌

石狩鍋:鮭がのぼる川の名を持つ、北海道の味噌仕立て鮭鍋

札幌の北に接する石狩の漁師たちが食べていた鮭の味噌汁が、料亭を経て北海道を代表する鍋料理になりました。具材、仕上げの山椒、三平汁との違い、旬と食べられる場所をまとめました。

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名前の由来:鮭が帰ってくる石狩川

石狩鍋は、鮭を主役に味噌で味をととのえた北海道の鍋料理です。名前は、秋に鮭が産卵のためにさかのぼる石狩川に由来します。この川が海に注ぐ河口は札幌市の北に接する石狩市にあり、一帯は江戸時代から鮭漁で栄えた土地として知られています。 北海道の公式観光サイトも石狩鍋を「石狩市発祥の郷土料理」と紹介しています。札幌市内の郷土料理店や居酒屋でも冬のメニューとしてよく見かけ、札幌を訪れた旅行者がジンギスカンと並んで出会いやすい北海道の鍋でもあります。

漁師のまかないから料亭の鍋へ

石狩鍋の原型は、明治時代に石狩の漁師たちが食べていたまかない料理だと伝えられています。味噌汁にぶつ切りの鮭やアラ、野菜を入れて煮て食べていたのが始まりという説明です。 これをお客に出す料理へと仕立てたのは、石狩川河口近くで1880年(明治13年)に創業した老舗の料亭だといわれています。当時の漁師料理にはあまり使われなかったはずのタマネギやキャベツといった西洋野菜を入れたこと、汁にコクを出し鮭の生臭さを抑える山椒を使うことは、この料亭の工夫とされています。ただ、多くは言い伝えなので、正確な始まりは資料によって少しずつ書き方が違います。

中身は何か:味噌、昆布、鮭、そして山椒

基本は昆布だしに味噌を溶き、鮭の身や中骨などのアラを、豆腐、タマネギ、キャベツ、ダイコン、ニンジン、シイタケ、長ネギなどと一緒に煮込みます。汁に酒粕を加えたり、バターや牛乳を隠し味にしたりする家もあり、イクラをのせることもあって、家庭や店ごとに姿が違います。 欠かせないのは仕上げの山椒です。山椒の実や粉を少しふると、味噌の濃い味がすっと引き締まります。同じ鮭の汁物である三平汁とよく混同されますが、三平汁がおもに塩漬けの魚から出る塩気で味をつけるのに対し、石狩鍋は塩をしていない生の鮭を使い、味噌で味をつける点が違います。

北海道を代表する郷土料理に

石狩鍋は、2007年度に農林水産省の主催で選ばれた「農山漁村の郷土料理百選」で、ジンギスカン、ちゃんちゃん焼きと並び北海道を代表する郷土料理に選ばれました。農林水産省の郷土料理紹介サイトでも冬の料理の代表として取り上げられています。 石狩市では市内の飲食店が集まって石狩鍋をPRする会をつくり、この会が定めた「石狩鍋記念日」(9月15日)は2008年に日本記念日協会に正式に認定されました。石狩で鮭が捕れる時季であることと、9と15を「食いごろ」と読む語呂合わせから選んだ日付だそうです。さらに、地域で世代を超えて受け継がれてきた食文化を文化庁が認定する「100年フード」に、令和5年度(石狩市の資料では2024年3月)の未来部門で認定され、有識者特別賞も受けました。

いつ、どこで食べるか

旬は、鮭が川をのぼる秋から、身にしみるほど寒い冬まで。発祥の話をたどりたいなら石狩川河口一帯の老舗の料理店を訪ねる手もあり、時間がなければ札幌駅周辺やすすきの一帯の郷土料理店や居酒屋でも、一人前・二人前の鍋で出す店が多くあります。 食べるときは、煮立ったら鮭が煮崩れる前に先に取り分け、最後に山椒を少しずつふって味の変化を楽しんでみてください。味噌の汁に鮭と野菜の甘みが溶け出し、汁をすするだけで体が温まります。店によってイクラやバターをのせるなど盛り付けが違うので、メニューの写真を見て選ぶのもいいでしょう。

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