
宇和島風の鯛めし · 写真: Fred Cherrygarden / CC BY-SA 4.0 (Wikimedia Commons)
鯛めし完全ガイド:炊き込みの松山・北条風と刺身の宇和島風はなぜ違う?
愛媛で鯛めしを頼むと、鯛を炊き込んだご飯が出ることも、鯛の刺身を生卵入りのタレで和えてご飯にのせた丼が出ることもあります。二つの鯛めしの由来と食べ方、注文で迷わないコツをまとめました。
なぜ愛媛は鯛の国なのか
マダイは日本の祝い事に欠かせない魚で、愛媛県はそのマダイの日本一の産地です。2010年代後半の統計をもとにした資料では、全国の養殖マダイの半分以上が愛媛産とされ、その中心は県南西部のリアス海岸・宇和海に面した宇和島市と愛南町です。 そのため愛媛には鯛を使った郷土料理が多く、代表格が鯛めしです。面白いのは、同じ名前で全く違う二つの料理があること。松山のある中予や東予では鯛を炊き込んだご飯を、宇和島のある南予では鯛の刺身をタレで和えてご飯にのせた料理を鯛めしと呼びます。
松山・北条風:鯛を一尾まるごと炊き込む
松山風の鯛めしは、焼いた鯛を米と一緒に出汁で炊き込んだご飯です。とくに松山市北部の北条地域は沖の小島・鹿島とともに鯛めしの里として知られ、鯛を一尾まるごと入れ、出汁昆布以外の野菜や揚げ物などはほとんど使わないのが特徴です。 北条には、神功皇后が海を渡る途中で鹿島明神に戦勝を祈った際、漁師が鯛を献上し、その鯛で炊いたご飯を大いに喜んだという伝説が残ります。あくまで伝説ですが、この地域で古くから鯛めしが食べられてきたことを物語っています。今では松山や今治の和食店で一人前の釜めし定食として出す店が多くあります。
宇和島風:火を使わない海の男の飯
宇和島風の鯛めしは、鯛の刺身を醤油主体のタレに生卵、ゴマ、刻みねぎなどと一緒に和え、温かいご飯にのせて食べる料理です。味付けした刺身をご飯にのせるこの地域の家庭料理「ひゅうが飯」の鯛版がもともとの姿とされます。 由来には、宇和海の日振島を拠点にした海賊が船上で火を使わずに食べたのが始まりという説が伝わります。昭和50年代に当時の津島町(現・宇和島市)の店が出したことで他地域にも知られるようになり、当初は「ひゅうが飯」と併記されていましたが、のちに鯛めしに統一されました。2007年には「宇和島鯛めし」の名で農林水産省の郷土料理百選に選ばれています。
宇和島風鯛めしのおいしい食べ方
宇和島風は、ご飯・刺身・タレが別々に出てくるのが一般的です。まずタレの器に生卵を割り入れてよく混ぜ、刺身を入れてタレをしっかり絡めたら、タレごとご飯にかけて食べます。海苔やねぎ、ゴマなどの薬味が付いていれば好みでのせましょう。 生卵が入るぶんタレがまろやかでコクがあり、初めての人でも普通の海鮮丼よりやさしく感じることが多いです。生卵や生魚が苦手なら松山風の炊き込みを選びましょう。鯛の形の皿に刺身と小鉢を添えた定食スタイルで出す店もあります。
注文のコツとどこで食べるか
メニューに「鯛めし」とだけ書かれているとどちらか分かりません。炊き込みが食べたいなら「炊き込み」「釜めし」、刺身なら「宇和島」「刺身」と添えられているかを確認し、分からなければ店員さんにどちらのスタイルか聞きましょう。釜めしは注文後に炊くため20〜30分ほどかかる店が多いです。 松山市内ではどちらも味わえます。道後温泉周辺や中心部の商店街、松山駅周辺の郷土料理店・和食店で見つけやすく、炊き込みなら北条、刺身の鯛めしなら宇和島方面へ足を延ばせば本場の味に出会えます。駅で売られる鯛めし弁当もあり、列車旅のお供にぴったりです。