
昆布とスルメの松前漬け · 写真: Ocdp / CC0 (Wikimedia Commons)
函館の昆布:将軍家に献上した「献上昆布」、粘りのがごめ、そして松前漬け
函館はイカと朝市だけの街ではありません。市の東の海岸は日本最高級の昆布とされる白口浜真昆布の産地で、がごめ昆布や松前漬けもこの海から生まれます。函館の昆布の歩みと味わい方をまとめました。
函館は昆布の街
函館といえばイカと朝市を思い浮かべますが、この街は日本有数の昆布の産地でもあります。中心は市の東の端、内浦湾(噴火湾)に面した南かやべ地域です。もともと別の町だった南茅部町は、2004年に函館市に編入されました。 北海道の資料はこの一帯を、国内の約15%を生産するコンブの一大産地と紹介しています。函館市と市内5つの漁協は、2017年から函館産の真昆布を「函館真昆布」というブランドに統一してPRしています。夏には浜の集落のあちこちで昆布を干す光景が見られ、昆布は函館の海のもう一つの顔です。
白口浜真昆布、将軍家への「献上昆布」
南かやべの前浜で採れる真昆布は「白口浜真昆布」と呼ばれます。名前は、乾燥した昆布を切ったときの切り口が白く見えることに由来します。真昆布は日本料理で最高級の昆布として扱われ、なかでもこの地域の昆布は身が厚く、上品で澄んだだしが豊富にとれることから、多くの料理人に愛されていると紹介されています。 もう一つの呼び名が「献上昆布」です。江戸時代にこの地を治めた松前藩が、朝廷や将軍家にこの昆布を献上していたからです。北海道庁の資料も白口浜真昆布が「献上昆布」とも呼ばれると紹介しており、この名前は今も贈答用の昆布の商品名によく使われています。
養殖と天然、そして守るべき海
真昆布は海の岩に付いて育つ大型の褐藻で、長さは3mほどにもなります。北海道の渡島・胆振地方を中心に、ロープにつるして育てる養殖が行われていて、昭和40年代以降に本格化した養殖真昆布の生産量は今では天然を上回っています。水揚げは主に6月から8月にかけてです。 天然の真昆布はだんだん貴重になっています。2021年の地元紙の報道によると、天然真昆布の水揚げ量は減少傾向にあり、種苗を守るため、その年の天然真昆布漁は南かやべの一地区だけで、わずか1日、1時間ほどの出漁となりました。函館市と漁協は、昆布養殖の安定化と天然資源の回復にも一緒に取り組んでいます。
かつては厄介者だったがごめ昆布
函館の海には、もう一つ名物の昆布があります。表面に籠目のようなでこぼこの模様があることから名づけられた、がごめ昆布です。日本近海では北海道南部から青森県の北側の沿岸にかけて分布し、真昆布よりも深い場所に生えています。 かつては真昆布漁の邪魔者とされていましたが、刻むと強い粘りが出て、フコイダンなどの成分が多いことが知られるようになり、今では養殖も行われる貴重な昆布になりました。函館では産官学が共同で、がごめを使ったご飯「がごめ飯」を新しい名産品として商品化し、とろろ昆布や塩昆布、松前漬けの原料にも使われています。
松前漬け、そして函館で昆布を味わう
昆布をいちばん手軽に味わえるのが松前漬けです。スルメと昆布、数の子を醤油で漬け込んだ北海道の郷土料理で、名前は松前藩に由来します。真昆布を昔から「松前昆布」と呼び、昆布を使った料理に「松前」を冠したことと関係があるといわれます。起源には諸説あります。 函館駅周辺や朝市一帯の海産物・乾物の店では、松前漬けや真昆布、がごめ昆布の商品をよく見かけます。昆布は軽くて日持ちするのでお土産に向き、松前漬けはそのままご飯のおかずや酒の肴にします。昆布だしそのものを味わいたいなら、昆布だしを使った澄んだ汁物を選んでみてください。