
三崎港の食堂で出るマグロの漬け丼(上は中トロ) · 写真: Osumi Akari / CC BY-SA 4.0 (Wikimedia Commons)
三崎まぐろとかぶと焼き:三浦半島の先の港でマグロの頭を丸ごと焼くわけ
鎌倉から南へ下った三浦半島の先端、三崎港はかつて日本一のマグロ漁港でした。遠洋漁船の煙突から始まったというマグロの頭の丸焼き「かぶと焼き」の由来と食べ方、三崎でマグロを楽しむコツをまとめました。
かつて日本一だったマグロの港
三崎港は神奈川県三浦市、三浦半島の南端にある漁港です。鎌倉から南へ下ると行き着くこの港は、遠洋マグロ漁業の基地として発展しました。 1922年に町営魚市場が設立され、1938〜1939年には全国に先駆けて南洋漁場へ進出しました。1946年から1954年頃までは日本最大のマグロ漁港だったといいます。その後、船の大型化により三崎まで戻らず大西洋沿岸の国々で水揚げするようになり、1955年には焼津漁港、1961年には清水漁港を下回りました。それでも「マグロといえば三崎」というイメージは今も健在です。
今の三崎港:冷凍マグロの港
遠洋で獲れたマグロは船上ですぐに凍らせて港へ運ばれます。神奈川県観光協会は、三崎港のマグロが日本初の冷凍マグロ専用市場で、高度な衛生管理のもと取引されていると紹介しています。メバチマグロを中心に、世界各地から質の良いマグロが集まります。 マグロの漁獲規制などで取扱量は2000年代より大きく減りましたが、今も三崎の市場では年間およそ2万トン前後の水産物が取引され、その中心はメバチなどのマグロ類です。 港の周りにはマグロ料理の店が軒を連ね、東京から日帰りで訪れる観光地としても人気です。刺身やまぐろ丼はもちろん、醤油ダレに漬けたマグロをのせた漬け丼など、さまざまな部位を味わえます。
かぶと焼きの始まり:遠洋漁船の煙突
三崎を代表する郷土料理が、マグロの頭を丸ごと焼く「かぶと焼き」です。農林水産省の「うちの郷土料理」にも、三浦市三崎地域の料理として掲載されています。大きなマグロの頭を武士の兜に見立てた名前です。 農林水産省の資料によると、遠洋漁業に出た三崎の漁師が、売り物にならないマグロの頭を船の煙突に吊るして蒸し焼きにして食べたのが始まりとされます。港に戻った若い漁師たちの酒の肴としても親しまれました。 漁師どうしで食べていたこの料理を一般客に出すようになったのは40年ほど前、三崎港近くの飲食店からだといいます。捨てていた部位をごちそうに変えた、マグロの港らしい料理です。
食べ方:目の奥の身からホホ肉まで
今の店で出すかぶと焼きは、マグロの頭をオーブンに入れ、3〜4時間かけて弱火でじっくり焼き上げます。時間がかかり量も多いため、事前予約が必要な店がほとんどで、何人かで分け合う料理と考えるとよいでしょう。 楽しみは部位ごとの味の違いを食べ比べること。農林水産省の資料は、目玉の奥の眼肉、頭部の身、ホホ肉、あごの内側の身などを挙げています。骨の間の身を箸でほぐしながら食べ、脂ののった部分もあればあっさりした部分もあります。 薬味はおろし大根と醤油、ポン酢、土佐酢などが基本です。濃厚なマグロの脂に、さっぱりしたポン酢と大根おろしがよく合います。
三崎への行き方とマグロ旅のコツ
三崎港へは、京急久里浜線の終点・三崎口駅から京浜急行バスに乗り「三崎港」で降りればすぐです。鎌倉や横須賀の旅と組み合わせて、三浦半島をぐるりと回る旅程も組めます。 京急電鉄は2009年から観光客向けのお得な切符「みさきまぐろきっぷ」を販売しています。三崎口駅の駅名看板が「三崎マグ口駅」とデザインされるほど、マグロはこの地域の顔です。2007年には昔の「三崎まぐろラーメン」も復活しました。 もう一つのコツは、港周辺の店は昼間中心の営業で、夕方早めに閉まる店が多いこと。かぶと焼きを食べたいなら事前に予約し、昼頃に着く日程にするのがおすすめです。