
サラダと牛乳がセットのよこすか海軍カレー · 写真: Ogiyoshisan / CC BY-SA 3.0 (Wikimedia Commons)
よこすか海軍カレー:カレー・サラダ・牛乳をセットで出す軍港の街のカレー
鎌倉の隣の軍港の街・横須賀は、1999年に「カレーの街」を宣言しました。脚気と闘った明治海軍の食事から続くカレーの話、どこまでが史実でどこからが伝説か、そしてセットで食べるルールまでまとめました。
白米と脚気、明治海軍の悩み
横須賀は鎌倉のすぐ隣、三浦半島の東側にある港町です。明治時代から続く軍港で、今も海上自衛隊と米海軍の基地があります。 明治時代の日本海軍は白米中心の食事で、ビタミン不足による脚気が深刻な問題でした。農林水産省の資料によると、栄養改善のために取り入れたのがイギリス海軍で出されていたカレー風味のシチューで、これにとろみをつけてご飯にかけたといいます。とろみの理由は「ご飯に合うように」「揺れる船の上でこぼれにくいように」などと考えられています。肉や野菜をたっぷり使ったカレーで栄養を補ったことで、脚気の患者は激減したと伝えられます。
伝説と史実:海軍がカレーを「発明」した?
海軍カレーには物語が多いぶん、異なる見方もあります。農林水産省の資料は、日本のカレーのルーツを海軍の軍隊食とする説を「一説」として紹介し、退役した兵士が故郷に戻って海軍式カレーを全国に広めたと説明しています。 ただ、記録をたどると話は少し違ってきます。確認できる最古の海軍レシピは1908年に舞鶴海兵団が出した『海軍割烹術参考書』の「カレイライス」で、当時の民間のレシピとよく似ているといいます。カレーは1872年にはすでに日本の料理書に載っていたため、日本のカレーが海軍発祥とは言いにくいというわけです。「横須賀が海軍カレー発祥の地」という話にも歴史的な裏付けはないという指摘があります。海軍はカレーを広めた舞台の一つだった、と考えるのが無難でしょう。
1999年、横須賀の「カレーの街」宣言
今の「よこすか海軍カレー」は軍隊食のレシピを現代に再現したもので、1999年5月に横須賀市が「カレーの街宣言」を行い、まちおこしの一環として生まれました。農林水産省は、誕生から20年以上たった今では市を代表する名物料理になっていると紹介しています。 面白いのは、「よこすか海軍カレー」の名前が商標登録されていること。名前を使うには地元の事業者部会の認定を受ける必要があります。農林水産省の資料によると、2021年時点で市内40以上の店舗がよこすか海軍カレーを提供しています。 レシピは、さいの目に切った肉と人参・玉ねぎ・じゃがいもを炒め、牛脂で小麦粉を炒めてカレー粉とスープを加え、弱火で煮込む昔ながらの方法です。チャツネを添えて食べることもあります。
ルール:カレー・サラダ・牛乳は3点セット
よこすか海軍カレーを頼むと、カレーだけでは出てきません。認定店では、栄養バランスを考えていた海軍の献立にならい、カレーライスにサラダと牛乳をセットで出すのがルールです。カレーに牛乳という組み合わせは意外に思えますが、辛さをやわらげる役割もあります。 海上自衛隊が毎週金曜日にカレーを食べるという話も有名です。「長い航海で曜日を忘れないため」の海軍の伝統とよく紹介されますが、実際には1985年頃に週休二日が定着し、土曜の昼のカレーが金曜に移ったのが始まりとみられ、旧海軍の伝統という根拠はないとされています。 今も艦艇や部隊ごとに独自のレシピや隠し味があり、海自カレーに「正解」は一つではないそうです。
横須賀で食べて、買って帰る
鎌倉からJR横須賀線に乗れば横須賀まで一本でつながるので、鎌倉旅行に半日足して立ち寄るのにぴったりです。横須賀駅や京急横須賀中央駅の周辺、港の一帯に認定店が点在し、艦船が見える港の散歩と一緒に楽しめます。 店で食べるカレー以外にも選択肢はたくさん。農林水産省の資料によると、レトルトカレーだけで20種類を超え、お土産として人気で、カレーパンなどの関連商品も豊富です。よこすか海軍カレーパンは第1回「日本全国ご当地パン祭り」で優勝したこともあります。 市では「よこすかカレーフェスティバル」などのイベントも開かれています。旅の日程が合えば、いろいろな店のカレーを一度に食べ比べるのも楽しいでしょう。