歴史
山の斜面に広がる足柄茶の茶園 · 写真: Azegamaru / CC BY 4.0 (Wikimedia Commons)

山の斜面に広がる足柄茶の茶園 · 写真: Azegamaru / CC BY 4.0 (Wikimedia Commons)

日本箱根

足柄茶:関東大震災のあと箱根・丹沢の山麓で生まれた神奈川の緑茶

箱根や小田原を旅すると「足柄茶」の名前をよく見かけます。1923年の関東大震災の後、山村を立て直すために植えられ、2025年に100周年を迎えた神奈川の緑茶の歴史と味わい、楽しみ方をまとめました。

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大震災の後の山村に、茶の木を植える

1923年9月の関東大震災は、東京や横浜だけでなく神奈川西部の山村にも大きな被害をもたらしました。被災した村の暮らしを立て直す産業復興策の一つが、茶の栽培でした。 1925年、当時の清水村(現在の山北町)に茶が導入されました。1927年には村人が共同で手揉みする製茶が始まり、1928年には村営の製茶工場が開設されました。その後、茶園は丹沢や箱根山麓の各地へと広がっていきました。 こうして育ったのが今の「足柄茶」です。名前の「足柄」は箱根の北に広がる足柄地域に由来し、2025年には栽培開始から100周年を迎え、記念のイベントも開かれました。

箱根・丹沢山麓という産地

足柄茶は、神奈川県西部の丹沢山地と箱根山麓で栽培される緑茶の地域ブランドです。山北町、南足柄市、小田原市、秦野市、厚木市、湯河原町など、いくつもの市町に茶園が広がっています。つまり箱根旅行の玄関口である小田原や湯河原も、足柄茶の産地なのです。 神奈川県は、丹沢や箱根山麓一帯の気候・風土が良質な茶の生産に適していると説明しています。山間で日照時間が短いことや、新芽の時期に朝霧が出ることが味わいに良いともいわれます。山の斜面に段々と続く茶畑は、秋には紅葉した山と相まって独特の景色をつくります。 生産者は組合をつくり、施肥や栽培から加工、合組(ブレンド)、火入れ、販売までを一貫して管理しています。

味わい:淡い黄金色、甘みと渋みのバランス

足柄茶は、茶葉を約40秒と短めに蒸す「浅蒸し煎茶」です。長く蒸す深蒸し煎茶が濃い緑色でコクのある味わいになるのに対し、浅蒸しの煎茶は茶葉の形がよく残り、すっきりした香りが特徴です。 淹れたお茶の水色は淡い黄金色を帯びた黄色で、甘み・渋み・香りがバランスよく調和した味わいと紹介されています。 おいしく飲むには、沸かしたお湯を少し冷ましてから淹れるのが煎茶の一般的なコツです。熱すぎるお湯だと渋みが出やすいので、最初は少しぬるいかなと思う温度でじっくり淹れて甘みを感じてみてください。同じ茶葉で二煎、三煎と淹れて味の変化を比べるのも、緑茶の楽しみ方です。

全国一位と100年、そして減っていく茶園

足柄茶は1963年の第17回全国茶品評会で1等を受賞し、名を知られるようになりました。2000年には14の製茶工場が山北の工場に統合され、2007年には県内農産物で初めて地域団体商標に登録されました。「かながわの名産100選」にも選ばれています。 ただし、先行きは明るいことばかりではありません。神奈川県の茶の生産量は1975年の411トンから2020年には146トンへと大きく減りました。生産者の高齢化と後継者不足、耕作放棄された茶園、茶の消費減少、気候変動などが課題とされています。 そこで2018年度からは、神奈川県農協茶業センターが都市住民を産地に呼び込む「足柄茶ファームオーナー」制度を行っています。一口あたり茶畑1坪で年会費は16,500円。年2回新茶や紅茶などが届くほか、茶摘み体験などの特典があります。

箱根・小田原の旅で足柄茶を楽しむ

足柄茶は箱根や小田原周辺のお土産店で茶葉として手に入りやすく、軽くて日持ちするお土産にぴったりです。急須がなくても手軽なティーバッグの商品があり、同じ産地の茶葉で作った紅茶など、緑茶以外を選ぶ楽しみもあります。 箱根の旅では、同じ地域の食べ物と組み合わせるとさらに楽しくなります。小田原かまぼこや梅干しなど箱根路の名物に温かい足柄茶を一杯添えれば、東海道を行き交った昔の旅人のようにひと息つく気分を味わえます。 100年前、大震災の傷跡が残る山村で人々が植えた茶の木が、今では神奈川を代表するお茶になった。そんな物語を思い浮かべながら飲めば、一杯の味わいが少し違って感じられるはずです。

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