
油揚げと花かつおをのせた名古屋駅のきしめん · 写真: Kos88 / CC BY-SA 4.0 (Wikimedia Commons)
きしめん:うどんより平たく薄い名古屋の麺、名前の謎と食べ方
きしめんは厚さ1mmほど、幅7〜8mmの平たい麺で、愛知県民のソウルフードです。名前をめぐる諸説、刈谷の「芋川」につながるルーツ、濃いつゆと具、名古屋駅で味わうコツまでまとめました。
平たく薄い愛知のソウルフード
きしめんはうどんの一種ですが、見た目ははっきり違います。農林水産省「うちの郷土料理」は、厚さ1mm、幅7〜8mmほどの平たい麺をきしめんと紹介しています。食品表示基準でも幅4.5mm以上、厚さ2mm以下の麺を「きしめん」と表示できると定められているほど、幅広で薄いことが持ち味です。 農林水産省は、きしめんを愛知県全域で食べられている料理として紹介し、スーパーで手軽に買え、学校給食にも登場すると説明しています。うどんより茹で時間が短く、表面がつるりとしているので、のど越しよくするすると入り、幅広の麺につゆがよくからんで、つゆの味も一緒に楽しめます。
名前の謎:雉?紀州?碁石?
「きしめん」という名前の由来には諸説あります。農林水産省は、中国の菓子「棊子麺(きしめん)」に由来するという説を紹介しています。小麦粉の生地を薄くのばし、碁石の形に抜いてゆで、きな粉をかけて食べるもので、「棊子」は碁石を意味します。 ほかにも、雉の肉を入れた「雉麺」がなまったという説、紀州(今の和歌山)の人が作った「紀州麺」とする説があります。名古屋市教育委員会は、東海道の宿場・池鯉鮒(今の知立市)の雉麺が名古屋に伝わったという説を紹介しています。どれも定まっていないので、平たい麺と碁石形の菓子がどうつながるのか想像してみるのも一興です。
ルーツは刈谷の「芋川」
名前とは別に、きしめんのルーツをたどると今の愛知県刈谷市に行き着きます。農林水産省は、きしめんが刈谷市の名物だった平打ちうどん「ひもかわ」から生まれたと説明しています。日本語版ウィキペディアによると、江戸時代の案内記『東海道名所記』には、三河の芋川の名物として平たい麺が登場します。 江戸時代末期の風俗事典『守貞謾稿』は、江戸で「ひもかわ」と呼ぶのは「芋川」がなまったもので、名古屋では同じ麺を「きしめん」と呼ぶと記しています。東海道を行き交う旅人が食べた三河の平たい麺が、江戸ではひもかわ、名古屋ではきしめんとして根づいたといえそうです。
濃いめのつゆと山盛りの花かつお
きしめんはつゆが濃いめです。農林水産省によると、伝統的にはむろあじでとっただしに、ほぼ大豆だけで造るたまり醤油で味をつけます。平たい麺は口に入れたときに味が薄く感じられやすいため、つゆを濃くしたといい、濃い味を好む土地の嗜好にも合っていたと説明されています。 今は一般的なだしと醤油で作る店も多くあります。具は油揚げ、ねぎ、ゆでた青菜、そして名古屋ならではの赤いかまぼこが定番で、上に花かつおをたっぷりのせるのがよく見る姿です。写真のように熱いつゆの上で花かつおがゆらゆら踊る様子も、きしめんの楽しみです。
どこで、どう食べるか
旅行者がいちばん手軽にきしめんに出会えるのは名古屋駅です。ホームや駅構内には立ち食いのきしめん店があり、新幹線を待つ数分の間に一杯すすっていく人がたくさんいます。市内のうどん店でも、たいていメニューにきしめんが別に書かれています。 種類もさまざまです。農林水産省は、冷たくして食べる「ころ」が夏に好まれると紹介し、カレーきしめん、餅を入れたきしめんなどのアレンジも多いと説明しています。麺が薄くてすぐのびるので、出てきたらすぐ食べるのがコツ。まずつゆを一口飲んで濃さを確かめ、花かつおをつゆになじませながら食べてみてください。