歴史
かぶら寿し · 写真: Ttaakkaco / CC BY-SA 4.0 (Wikimedia Commons)

かぶら寿し · 写真: Ttaakkaco / CC BY-SA 4.0 (Wikimedia Commons)

日本金沢

かぶら寿し:酢飯を使わない、かぶらとブリでつくる金沢の冬の発酵ずし

「すし」と呼ばれながら酢飯は使わず、塩漬けしたかぶらでブリを挟み、麹で熟成させる——それがかぶら寿しです。石川の正月に欠かせない冬の発酵食の由来と作り方、味わい方をまとめました。

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すしなのに酢飯がない?かぶら寿しの正体

かぶら寿しは、石川県全域で受け継がれてきた冬の食べ物です。塩漬けしたかぶらを厚めの輪切りにして切り込みを入れ、そこに同じく塩漬けしたブリを挟み、米麹に漬けて熟成させます。 名前に「すし」とありますが、いわゆる握りずしとは系統が違います。酢を混ぜたご飯は使わず、魚と穀物を一緒に発酵させて酸味とうま味を生み出す、昔ながらの「なれずし」の一種だからです。かじると、シャキッとしたかぶらと脂ののったブリ、麹のやさしい甘みと発酵の酸味が一度に広がります。 農林水産省の郷土料理紹介でも石川県を代表する一品として取り上げられ、今も正月に欠かせない食べ物として定着しています。

漁師の正月料理?藩主へのもてなし?諸説ある由来

かぶら寿しの始まりについては確かなことは分かっておらず、諸説があります。 ひとつは、金沢市金石町の漁師が豊漁と海の安全を祈って、正月の行事食として食べ始めたという説。もうひとつは、加賀藩主の前田家が湯治に訪れた際、温泉宿でふるまわれたという説です。当時ブリは庶民がほとんど口にできない高価な魚だったため、かぶらに挟んで少しでもブリを味わおうとしたのが始まり、という話も伝わっています。 いずれにせよ、少なくとも江戸時代には食べられていたとされます。広まったきっかけとしては、魚屋や八百屋が年末に得意先へあいさつに行く際、手作りのかぶら寿しを手土産にした習わしが挙げられています。

40日塩漬けのブリと麹:手間のかかる作り方

かぶら寿しは手間と時間のかかる料理です。農林水産省の資料で紹介されている作り方をたどると、次のようになります。 まずブリを切って強めに塩をし、約40日おきます。かぶらは輪切りにして塩漬けし、約1週間おきます。別に麹とご飯、湯を混ぜて一晩保温し、甘酒のような状態にします。そのうえで、かぶらとブリを交互に重ね、人参、唐辛子、柚子の皮と麹をのせ、重石をして7〜10日ほど漬ければ完成です。 味や風味は、かぶらの種類、熟成の進み具合、塩加減によって大きく変わり、レシピも地域や家庭ごとに少しずつ違います。同じかぶら寿しでも、さっぱりしたものもあれば、発酵の風味がしっかり感じられるものもあります。

いつ食べる?寒ブリの季節、年の瀬が旬

かぶら寿しの季節は初冬から正月にかけてです。石川の沖では初冬にブリの定置網漁が盛んになり、脂ののった質のよいブリがとれる時期を迎えます。それに合わせてかぶら寿しも作られ、年の瀬になると店頭に並び始め、正月に欠かせない一品として定着しています。 食べ方はシンプルです。熟成が進んだものを、しょうゆなどは何もつけずにそのままいただきます。まわりについた麹も一緒に食べるのが普通で、切り分けて酒の肴にしたり、おせちの合間につまんだりします。 発酵食品なので、時間がたつほど酸味が強くなります。贈り物やお土産に買うときは、包装に書かれた保存方法と期限を確かめ、早めに食べるのがおすすめです。

庶民派の「大根ずし」と金沢で味わうコツ

石川の家庭では、高価なブリの代わりに手に入りやすいニシンと大根で作る「大根ずし」も親しまれています。作り方は似ていますが、大根とニシンの組み合わせなので味わいは素朴で、ハレの日のかぶら寿しよりも普段のおかずに近い存在です。店で両方並んでいたら、食べ比べてみるのも楽しいでしょう。 旅行者なら、冬の金沢市内の市場周辺や駅周辺のお土産売り場、百貨店の食品売り場で見つけやすいです。 近県にも似た発酵食はありますが、かぶらにブリを挟んだ姿は、金沢を中心とした石川の冬の風物詩とされています。金沢おでんや治部煮とあわせて、冬の金沢の味として覚えておいてください。

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