
アルミ鍋で出てくる松山の鍋焼きうどん · 写真: ノボホショコロトソ / CC BY 4.0 (Wikimedia Commons)
松山の鍋焼きうどん:甘い出汁とアルミ鍋、戦後生まれのソウルフード
うどんといえばコシの強い讃岐うどんを思い浮かべますが、松山の人のソウルフードは、やわらかい麺に甘い出汁、小さなアルミ鍋で出てくる鍋焼きうどんです。その特徴と歴史、注文のコツを紹介します。
讃岐うどんとは正反対のうどん
四国といえばお隣の香川県の讃岐うどんが有名で、うどんはコシが命と思いがちです。ところが松山には全く違う方向のうどん文化があります。それが鍋焼きうどん。小さな鍋ごと煮て出てくるうどんで、松山の人はこれを地元のソウルフードに挙げます。 松山の鍋焼きうどんの共通点は三つにまとめられます。やわらかめの麺、甘めの出汁、そして一人前の小さなアルミ鍋です。コシの代わりに出汁をたっぷり吸ったやわらかい麺をふうふう吹きながら食べる味わいで、初めて食べる人はその甘さとやわらかさに驚くことがよくあります。
甘い出汁と甘辛い牛肉
松山の出汁の決め手は甘さです。出汁に砂糖を加えて甘めに仕上げるのが特徴で(いりこ出汁を使う店もあります)、一般的なうどんの出汁よりはっきりと甘みが前に出ます。この出汁がやわらかい麺にしっかり染み込み、麺と汁が一体になったような味わいになります。 具の主役は甘く味付けした牛肉。これに油揚げ、かまぼこ、錦糸卵、ねぎなどを添える店もあり、エビの天ぷらを入れたメニューを出す店もあります。甘辛い牛肉のうま味も出汁に溶け出すので、汁を最後まで飲み干す人も少なくありません。いなり寿司を添えて出す店もあります。
なぜアルミ鍋なのか
松山の鍋焼きうどんは、取っ手の付いた小さなアルミ(アルマイト)鍋で出てくるのが定番です。コンビニやスーパーで売られている使い捨てのアルミ容器とは違い、店で繰り返し使う調理用の鍋で、煮えた鍋をそのままお客さんの前に出します。飾り気のない素朴な銀色の鍋こそが、このうどんの象徴になりました。 軽いアルミ鍋は熱の伝わりが早く、注文が入るとすぐに煮上げられ、鍋ごと出てくるので最後まで熱々で食べられます。取っ手や鍋肌はとても熱いので素手でつかまないように。ふたが付いていれば、ふたを取り皿代わりにして麺を少しずつ冷ましながら食べるのもコツです。
戦後すぐに生まれた味
松山の鍋焼きうどんは、第二次世界大戦が終わってまもない昭和20年代に根付いたとされます。松山市の中心街には戦後すぐから営業を続ける鍋焼きうどんの専門店が2軒あり、複数の紹介記事によれば、一軒は1947年、もう一軒はその2年後の1949年に開業しています。 物の乏しい時代、甘く温かい出汁に牛肉の入ったうどんは、それだけで満足できる一食であり、ささやかなぜいたくだったことでしょう。その味が70年以上受け継がれ、松山の人にとっては子どもの頃から食べてきた懐かしい味となり、今では市内の食堂や駅構内の店でも松山名物として出されるほど、地域を代表する料理になっています。
注文のコツとどこで食べるか
メニューはシンプルで、鍋焼きうどんだけという店もあります。コシのある麺を期待すると肩透かしなので、やわらかい麺と甘い出汁を楽しむ料理だと思って食べるのがおすすめです。とても熱々で出てくるので、時間に余裕をもってゆっくり味わいましょう。夏も含めて通年出す店が多く、季節を問わず楽しめます。 中心部の商店街周辺に老舗の専門店が集まっているほか、松山駅周辺の郷土料理店や一般の食堂でもメニューにある店が多くあります。専門店は昼どきに行列ができたり、出汁や麺がなくなり次第早めに閉店したりすることもあるので、早めの時間に行くのがおすすめ。いなり寿司などのサイドメニューがあれば一緒に頼んでみましょう。