
ねぎをたっぷりのせたどて焼き · 写真: ayustety from Tokyo, JAPAN / CC BY-SA 2.0 (Wikimedia Commons)
大阪のどて焼き:鍋のふちに味噌の土手を築く牛すじ煮込み
新世界の路地で串カツと並んで必ず見かける茶色い串、どて焼き。名前がなぜ「土手」なのか、名古屋のどて煮と何が違うのか、酒場での頼み方をまとめました。
名前の秘密:味噌で築いた「土手」
どて焼きは、牛すじを味噌やみりんで時間をかけて煮込んだ大阪の郷土料理です。農林水産省「うちの郷土料理」でも大阪府の料理として紹介されています。 「どて」は川の土手のこと。鉄鍋の内側のふちに味噌を土手のように盛り、中央でまず具材を焼き、熱で溶け出した味噌で煮込んでいく作り方からこの名が付いたとされます。そのため「焼く」と「煮る」が一つの料理に同居しています。今は鍋でまとめて煮込み、串に刺したり小鉢に盛ったりして出す店がほとんどですが、味噌がこっくり煮詰まった甘辛い味はこの調理法に由来するものです。
安くて腹持ちのいい庶民のつまみ
牛すじはそのままでは硬く手間のかかる部位ですが、長く煮込むとコラーゲンがほどけ、とろけるように柔らかくなります。安い部位を時間と味付けでおいしく変えた料理なので、どて焼きは昔から大阪の下町の安い食べ物として知られてきました。 農林水産省の資料も、濃厚で甘辛い味が酒によく合い、庶民的な料理として親しまれてきたと紹介しています。1940年発表の織田作之助の小説『夫婦善哉』にも、主人公が「夜店の二銭のドテ焼」が好きで「ドテ焼さん」と渾名が付いていたという一節があります。ただし作中のドテ焼は豚の皮身を味噌で煮つめたものと書かれており、今の牛すじとは材料が違いました。今も主に居酒屋や串カツ店で酒のつまみとして出され、家庭で作ることもあります。
名古屋のどて煮とは何が違う?
愛知県や静岡県遠州などの東海地方にも同系統の料理がありますが、そちらでは「どて煮」や単に「どて」と呼ぶことが多いです。いちばんの違いは味噌。名古屋側は八丁味噌などの豆味噌を主に使い、牛すじだけでなく豚の臓物を使う店も多くあります。ご飯にかけた「どて飯」も名古屋名物の一つです。 一方、大阪のどて焼きは牛すじが主役で、みりんや砂糖で甘みを効かせるのが一般的。農林水産省のレシピも、牛すじ、こんにゃく、ねぎ、しょうがを田舎味噌・砂糖・みりん・酒で煮込む作り方です。ただ味噌の種類や配合は店ごとに違うので、二つの街で食べ比べるのも旅の楽しみです。
どこで食べる?新世界と串カツ店
どて焼きにいちばん出会いやすいのは、通天閣の下に広がる新世界一帯です。農林水産省の資料も新世界にはどて焼きを出す店が軒を連ねると紹介するほどで、この街では串カツとどて焼きがほぼセットでメニューに並びます。店先の大きな鉄板や鍋で、何本もの串が味噌に浸かってぐつぐつ煮えていれば、それがどて焼きです。 新世界のほかにも、立ち飲み屋の多い市内の繁華街の路地にある居酒屋で出会えます。たいてい数本の串や小鉢単位で出てくるので、気軽に頼めます。店ごとに味付けに工夫があるので、二、三軒はしごするのもおすすめです。
食べ方と注文のコツ
どて焼きはたいてい刻みねぎをたっぷりのせて出てきます。濃い味噌の味をねぎの辛みが引き締めるので一緒に食べるのが基本で、好みで七味をふってもおいしいです。こんにゃくを一緒に煮込む店もあり、ぷるっとしたすじと弾力のあるこんにゃくを交互に食べるのも楽しみです。 注文はメニューで「どて焼き」か「どて」を探して本数を伝えるだけ。串カツ店では揚げ物が来る前の一品目に頼む人が多く、作り置きで煮込んでいるのですぐ出てくるからです。ビールやハイボール、熱燗によく合います。なお、串カツの「ソース二度づけ禁止」とは違い、どて焼きは味が付いた料理なので共用ソースには浸けません。