
背脂が浮かぶしょうゆスープの尾道ラーメン · 写真: Misei sen / CC BY-SA 4.0 (Wikimedia Commons)
尾道ラーメン:背脂が浮かぶ坂の港町のしょうゆラーメン
広島県東部・尾道のラーメンは、澄んだしょうゆスープに細かな豚の背脂が浮かび、平打ち麺を使うのが特徴です。屋台から始まった二つの系譜と味の特徴、坂の町歩きと一緒に楽しむ方法をまとめました。
尾道はどんな町か
尾道は、広島県東部の備後地方、瀬戸内海に面した港町です。海と山にはさまれた狭い土地に家や寺が坂沿いにひしめき「坂の町」と呼ばれ、しまなみ海道を渡って四国へ向かうサイクリングの出発点としても知られています。広島市内からは新幹線と在来線を乗り継いで1時間あまりです。 この町を代表する味が尾道ラーメン。日本語版ウィキペディアは、尾道市を中心とした広島県備後地方のご当地ラーメンと紹介しています。広島といえば牡蠣やあなご飯、お好み焼きが有名ですが、尾道ラーメンはカップ麺になるほど全国に知られた地域ラーメンです。政府広報誌に載った尾道観光協会の担当者の話では、この地のラーメンには約90年の歴史があるそうです。
屋台から始まった二つの物語
尾道ラーメンの始まりには二つの説があります。日本語版ウィキペディアによると、一つは1928年に中国・福建省出身の人が尾道に移り住み、露店で売り歩いたのが始まりとする資料、もう一つは1947年に台湾出身の人が屋台で出した中華そばに始まるとする資料です。同じ観光協会の担当者は、1930年代は牛骨と豚骨でとった白濁スープだったと伝えていますが、この点はほかの資料では確認できていない話です。戦後の屋台で今のスタイルが生まれたという点は、各資料で共通しています。 戦後の屋台から始まった店は、しょうゆスープに豚の背脂を炒めて加え、自家製の平打ち麺を合わせた独特の中華そばを生み出し、その味が市内の他店に広がって今の尾道ラーメンの原型になったと言われます。この店は2019年に閉店しましたが、その味を受け継ぐという店が今も営業しています。
味の特徴:背脂、しょうゆ、平打ち麺、小魚
尾道ラーメンの基本は、澄んだしょうゆスープに細かな豚の背脂が浮かび、平打ち麺を使うことです。背脂はこってりしそうに思えますが、細かく散っているのでスープに甘みとコクを加え、スープを冷めにくくするふたの役目も果たします。幅広の麺はスープをよく含み、するすると入っていきます。 もう一つの系統は1990年代に生まれました。ウィキペディアによると、隣の福山市の珍味メーカーが鶏ガラスープに瀬戸内の平子いわしを使ったお土産用尾道ラーメンを売り出し、以後この系統を出す店が増え、今では「尾道ラーメン」といえばこちらを指すことが多いといいます。ただ店ごとの個性は大きく、豚骨と海産物のスープに細麺を合わせる店や、背脂を使わず「中華そば」の名で出す昔ながらの店もあります。
どこで食べる?駅前と商店街一帯
尾道ラーメンの店は、JR尾道駅前から海沿いに東へ長く続く商店街一帯とその周辺の路地に多く集まっています。駅から歩いて回れる距離なので、坂道や寺を巡る散策コースに組み込みやすいです。人気店は昼どきに長い行列ができることが多いので、昼のピークを避けて11時前後や夕方近くに行くと楽です。 しまなみ海道のサイクリングを終えて戻り、一杯食べる人も多くいます。尾道商工会議所のグルメマップにもラーメン・中華の店が別にまとめられているほど、ラーメンはこの町の観光の柱の一つです。尾道に寄る時間がなければ、広島駅や高速道路のサービスエリアの土産コーナーでお土産用の尾道ラーメンを買い、家で味わう方法もあります。
おいしく食べるコツ
丼が来たら、まずスープをひと口。浮かんだ背脂と一緒に飲むと、しょうゆの塩気のあとに甘みが広がり、小魚のだしを使う店なら穏やかな海の香りがします。背脂はたいていスープ全体に散っているので、麺と一緒にすくって食べればOKです。 トッピングはチャーシュー、メンマ、ねぎが基本で、店によって半熟卵やのりがのります。昔ながらの店の一部には、かき揚げをのせた「天ぷら中華」というメニューもあります。餃子を一緒に頼む客も多いです。背脂の量を選べる店もあるので、初めてなら普通から試してみてください。尾道ラーメンは濃厚な豚骨より軽く感じられることが多く、散策の途中の一杯にも負担が少なめです。