
新世界の串カツとキャベツ、ソース容器、どて焼き · 写真: Ajay Suresh from New York, NY, USA / CC BY 2.0 (Wikimedia Commons)
大阪の串カツ:新世界生まれの串揚げと「二度漬け禁止」のわけ
通天閣のふもと、新世界の路地を歩くと「二度漬け禁止」の貼り紙があちこちに。労働者の腹ごしらえから大阪名物になるまでの串カツの歩みと、初めてでも戸惑わない食べ方をまとめました。
串カツとは:ひと口大の具を串に刺して揚げる大阪の串揚げ
串カツは、肉や魚介、野菜をひと口大に切って串に刺し、小麦粉と卵を溶いた衣にくぐらせ、細かいパン粉をつけて揚げた料理です。農林水産省は大阪府の郷土料理として紹介し、主な伝承地域を大阪市と大阪府内全域としています。 同じ名前でも地域で姿が違います。関東では角切りの豚肉と玉ねぎや長ねぎを交互に刺し、とんかつの要領で揚げて皿盛りで出すことが多く、名古屋方面には八丁味噌の煮汁にくぐらせる店もあります。大阪式はそれより小ぶりで、牛肉、エビ、うずら卵、アスパラ、チーズなど具が多彩なのが特徴。そのため他の地域では大阪式を「串揚げ」と呼んで区別することもあります。
新世界と労働者の腹ごしらえ:いつ、どう生まれたか
大阪の串カツのふるさととされるのが、通天閣の建つ新世界です。新世界は1903年の第五回内国勧業博覧会の跡地をもとに開発され、1912年に初代通天閣と遊園地ルナパークが開業したときにこの名が付きました。 農林水産省の資料は、串カツが大正末期から昭和初期に新世界で生まれたという説を紹介しています。近くで働く労働者が安く、腹持ちよく、短時間で食べられるようにと考案されたという話です。1929年に新世界のある店が始めたという説が広く知られていますが、明治末期から東京の下町に似た料理があったとする見方もあり、起源は資料によって異なります。当初は牛肉の串だけを串カツと呼んだそうです。
「二度漬け禁止」と食べ放題のキャベツ
大阪の串カツ店で最も有名な決まりが「二度漬け禁止」です。テーブルごとにステンレスの容器にソースを入れて客同士で共用する店が多く、一度口をつけた串を再び浸さないことが衛生上の鉄則になりました。ソースは薄いウスターソースをベースに醤油や酢を合わせた専用ソースが一般的です。 ひと口かじってソースが足りなければ、一緒に出てくる生キャベツを使います。キャベツでソースをすくって串にかけるのはOK。キャベツは揚げ物の胃もたれを和らげる役目もあり、無料で食べ放題にしている店が多くあります。最近は塩やタルタルなどを別に出す創作串カツの店もあり、そうした店ではこの決まりがないこともあります。
相棒はどて焼き
串カツ店のメニューにほぼ欠かせないのがどて焼きです。牛すじを味噌とみりんでじっくり煮込んだ料理で、鉄鍋のふちに味噌を土手のように盛り、真ん中で牛すじを焼きながら溶け出した味噌で煮込むことから、この名が付いたとされます。こんにゃくを一緒に煮ることもあります。 農林水産省はどて焼きも大阪の郷土料理として紹介し、安く楽しめる大阪の下町グルメとして新世界エリアに出す店が多いと説明しています。甘辛く濃厚な味わいで、酒の肴にぴったり。サクッとした串カツと、とろりとしたどて焼きを交互に食べるのが新世界流です。
どこで、どう注文する?
いちばん手軽なのはやはり新世界です。通天閣の南側の通りや、戦後いち早く復興したことで知られるジャンジャン横丁の一帯に串カツ店が集まり、「串カツの街」と呼ばれています。新世界以外でも、大阪市内の居酒屋やチェーン店で味わえます。 注文はふつう串1本単位。初めてなら、元祖とされる牛肉、エビ、うずら卵、レンコンやアスパラなどの野菜を数本ずつ頼み、味を見て追加するとよいでしょう。串はソースの容器に一度しっかり浸して引き上げ、食べ終えた串はテーブルの串入れへ。外国人客が増え、ソースの決まりを説明してくれる店も出てきたので、わからなければ聞いても大丈夫です。