
皮付きで煮込んだ沖縄のラフテー · 写真: pelican from Tokyo, Japan / CC BY-SA 2.0 (Wikimedia Commons)
ラフテー:「豚に始まり豚に終わる」琉球料理の代表、泡盛で6〜7時間煮込む三枚肉
箸を入れるだけでほどける皮付き三枚肉の煮込み、ラフテー。琉球王国時代の豚肉文化と暑い島の保存食から始まり、祝いの料理になった物語、本土の角煮との違い、作り方をまとめました。
豚に始まり豚に終わる料理
沖縄には「琉球料理は豚に始まり豚に終わる」という言葉があります。農林水産省の郷土料理資料も、この表現でラフテーを紹介しています。琉球王国時代に中国との交流の影響を受けて豚肉文化が発達し、本土で長く続いた肉食を避ける考え方が沖縄には根づかなかったため、法事にも豚肉を使うという説明です。 ラフテー(ラフティーとも)は、その豚肉料理の代表格です。皮付きの三枚肉を大きく切り、泡盛としょうゆ、砂糖で長時間煮込んだ料理で、上手に作ったラフテーは皮や脂身まで箸で切れるほど柔らかくなります。沖縄そばやチャンプルーと並んで、沖縄料理店のメニューでいちばんよく見かける名前の一つです。
暑い島の保存食から祝いの料理へ
農林水産省の資料によると、ラフテーはもともと暑い沖縄で肉を長く保たせるため、味を濃くした保存食として始まりました。冷蔵庫がなかった時代には保存食であり、時代とともに味つけはしだいに薄くなってきたといいます。 今のラフテーは、祝い事や法事、そして客をもてなす正式な膳(客膳料理)に上る料理です。文化庁は令和3年度にラフテーを「伝統の100年フード」に認定しました。申請団体の本部町観光協会は、ラフテーが琉球王国の宮廷料理につながると紹介する一方で、市販品が主流になり、家庭で作られていた保存食の味が途絶えつつあるという懸念も記しています。手間のかかる料理だからこそ、家ごとの味をどう受け継ぐかが課題になっているのです。
本土の角煮と何が違うのか
ラフテーは見た目こそ本土の豚の角煮に似ていますが、いくつか違いがあります。いちばん大きいのはお酒です。本土の角煮がたいてい日本酒やみりんを使うのに対し、ラフテーは沖縄の蒸留酒・泡盛をたっぷり使います。甘みを沖縄特産の黒砂糖でつける家や店もあり、そうすると色が濃く風味に深みが出ます。 皮を残すのも特徴です。皮付きの三枚肉を使うので、長く煮込むと皮の部分がもっちりとし、肉とは違う食感が楽しめます。中国の東坡肉(トンポーロウ)と起源が同じという話もよく紹介されますが、これは一つの説として受け止めるのがよいでしょう。いずれにしても、大きな三枚肉を酒としょうゆでじっくり煮る発想が、中国と交流してきた琉球の食文化によくなじんでいることは確かです。
6〜7時間、手間のかかる作り方
農林水産省に掲載されている琉球料理研究家のレシピを見ると、ラフテーがなぜ手間のかかる料理なのかがわかります。まず三枚肉の皮を直火であぶり、熱湯にさっとくぐらせます。続いて塊のまま水に入れ、あくを取りながら約1時間半ゆで、そのゆで汁につけたまま冷まします。 冷めた肉を4〜5cm角に切り、かつおだし、泡盛、砂糖を加えて弱火で30分ほど煮ながら、あくと脂を取り除きます。しょうゆは2回に分けて加え、さらに1時間ほど煮込みます。皮が箸で切れるくらいになれば完成で、全体の調理時間は6〜7時間が理想だそうです。最初にゆでて脂を落とし、ゆで汁の中で冷ます工程があるからこそ、長く煮込んでもしつこくならず、肉がしっとり仕上がります。
沖縄でラフテーを味わう
ラフテーは沖縄全域で食べられている料理なので、那覇の国際通り一帯や市場周辺の沖縄料理店、居酒屋のメニューで簡単に見つかります。メニューには「ラフテー」のほか「ラフティー」と書かれていることもあります。単品で頼んで泡盛と一緒に楽しむのが、いちばん沖縄らしい組み合わせです。 豚肉料理をもっと知りたいなら、ラフテーと同じ席によく並ぶソーキ(豚のあばら肉)や足ティビチ(豚足)もあわせてチェックしてみてください。お土産には常温保存できるレトルトのラフテーがスーパーや空港で売られていて、温めるだけなので家で沖縄の味を思い出すのにぴったりです。家ごとに受け継がれてきた味は、今では店ごとの違いとして残っているので、旅の間に二、三軒で食べ比べると、甘さや泡盛の香りの違いが感じられるはずです。