
がめ煮(筑前煮) · 写真: 南無観自在 / CC BY-SA 4.0 (Wikimedia Commons)
がめ煮(筑前煮):福岡の正月と祭りに欠かせない鶏と野菜の煮しめ
全国で筑前煮として知られる鶏と野菜の煮物のふるさとは福岡です。地元でがめ煮と呼ぶ理由、名前をめぐる諸説、筑前煮との違い、正月や山笠との縁をまとめました。
福岡の食卓の定番
がめ煮は、鶏肉といろいろな野菜を炒めてから醤油・砂糖・みりんで甘辛く煮た料理です。全国的には筑前煮の名前で知られており、「筑前」は今の福岡県西部を指す旧国名。ふるさとの福岡では、今もがめ煮と呼ぶ人が多くいます。 農林水産省「うちの郷土料理」によると、がめ煮は正月や祭り、結婚式などのハレの日に並び、普段はおかずや酒の肴にもなる福岡の定番料理です。福岡市の鶏肉やごぼうの消費量が多いのは、がめ煮のおかげもあるといわれるほど。水炊きとともに農山漁村の郷土料理百選にも選ばれています。
「がめ」とは何か:名前をめぐる三つの説
がめ煮の名前の由来は一つに定まっていません。一つは博多弁の「がめくりこむ」(寄せ集める)から来たという説で、いろいろな材料を一緒に煮る料理の姿にぴったりです。 二つ目は、16世紀末の豊臣秀吉の朝鮮出兵(文禄の役)の際、兵士たちが当時「どぶがめ」と呼ばれたスッポンとあり合わせの材料を煮込んで食べたのが始まりという説。農林水産省の資料もこの説を紹介し、今はスッポンの代わりに鶏肉を使うと記しています。三つ目は、博多湾に多くいた亀を使ったことから「亀煮」が転じたという説です。どれが正しいかは資料によって異なります。
がめ煮と筑前煮は同じ料理?
おおむね同じ料理と考えてよいのですが、微妙な違いもあります。農林水産省の資料によると、がめ煮は骨付きの鶏肉を使うことが多いのに対し、全国でいう筑前煮は骨なしの鶏肉を使うことが多いそうです。骨ごと煮ると、煮汁に鶏のうまみがより深くしみ込みます。 ほかに炒り鶏、筑前炊きとも呼ばれます。炒り鶏の名のとおり、材料を先に油で炒めてから調味料を加えて煮るのが、ふつうの煮物との違いです。炒めることで具につやが出て、日持ちもしやすく、作り置きする正月料理にも向いています。
材料と作り方
基本の材料は、鶏肉、干し椎茸、こんにゃく、ごぼう、れんこん、にんじん、たけのこ、里芋など。農林水産省のレシピでは、鶏肉を軽く炒め、じゃがいも(または里芋)やにんじん、椎茸を加えてさらに炒め、だしと調味料を入れて野菜が煮えるまで煮ます。こんにゃくには飾り包丁を入れ、最後にいんげんと針生姜を添えます。 地域や時代によって材料も違いました。日本語版ウィキペディアには、かつては鶏肉の代わりに博多で「はいお」と呼ぶカジキの角切りや、兎肉、皮くじらを使うこともあったとあります。仏事では肉を入れず油揚げを使う地域もあり、博多湾の志賀島には具の種類を必ず奇数にする風習があるそうです。
正月と山笠、旅行者の味わい方
がめ煮は福岡の人にとって、正月のおせち料理に欠かせない味とされています。農林水産省の資料には、7月の博多祇園山笠の祝いの席や祭りでもがめ煮が出されるとあり、大鍋でたっぷり作って大勢で分け合う料理でもありました。串に刺して盛り付ける方法も紹介されています。 家庭料理が中心なので、観光客がわざわざ食べに行く料理ではありませんが、郷土料理を出す和食店や居酒屋のおばんざい、定食の小鉢などで出会えます。メニューに「がめ煮」とあれば、まさにこの料理。甘辛い味でご飯にもお酒にも合い、辛くも生でもないので誰でも気軽に食べられる福岡の味です。