
土鍋の具雑煮(諫早) · 写真: Bakkai / CC BY-SA 3.0 (Wikimedia Commons)
島原の具雑煮:島原の乱の伝説が残る具だくさんの雑煮
土鍋いっぱいに餅や鶏肉、野菜、海の幸を入れて煮る島原半島の具雑煮。1637年の島原の乱に由来するという伝説から、具の決まりごと、食べ方や味わえる場所までまとめました。
正月の雑煮が土地の名物に
雑煮は日本各地で正月に食べる餅入りの汁物で、地域ごとに汁や餅の形が違います。長崎県南東部・島原半島の具雑煮は、その名のとおり具がたっぷりの雑煮。餅に鶏肉、白菜、にんじん、ごぼう、椎茸、高野豆腐、かまぼこなどをたくさん入れ、土鍋ごと煮て出します。 農林水産省「うちの郷土料理」は、具雑煮を島原を代表する郷土料理として紹介しています。家庭では正月や祭り、祝いの日に食べますが、今では土地の名物となり、飲食店では一年中提供されています。2007年には農山漁村の郷土料理百選に選ばれ、この味を目当てに島原を訪れる人も多いそうです。
島原の乱と餅の話
具雑煮の由来として最もよく知られているのは、1637年の島原の乱にまつわる話です。農林水産省の資料によると、天草四郎を総大将に約3万7千人のキリシタンが籠城した際、長い籠城を乗り切る体力をつけるため、餅と山や海の幸を一緒に煮て食べたのが始まりと伝えられています。日本語版ウィキペディアには、天草四郎が民に餅を兵糧として蓄えさせたという話も載っています。 ただし、これは伝説として伝わる話です。一方で、島原の老舗料理店の初代が1813年に味付けを工夫して今の具雑煮を生み出したという説もあり、由来は資料によって異なります。いずれにしても、長い年月この土地で受け継がれてきた料理であることは確かです。
具は奇数、七種類以上
具雑煮には面白い決まりがあります。日本語版ウィキペディアによると、具の種類は奇数で七種類以上、白菜と切り昆布は必ず入れるそうです。だしはかつお節、いりこ、あご(トビウオの煮干し)、昆布でとり、深いうまみを出します。 農林水産省のレシピを見ると、具は実に多彩です。餅、鶏肉、白菜、にんじん、ごぼう、椎茸、高野豆腐に、かまぼこ、ちくわ、揚げかまぼこ、れんこん、水菜まで入り、家庭によっては焼きアナゴや卵焼きを加えることもあります。味付けは薄口醤油とみりん、塩で、椎茸の戻し汁もだしに加えます。地域や家庭で具が少しずつ違うのも具雑煮の魅力です。
土鍋で煮て、餅は別に
農林水産省のレシピの手順を見ると、具雑煮がどれほど手間のかかる料理かがわかります。高野豆腐と椎茸を戻し、昆布とかつお節でだしをとって椎茸の戻し汁を加えます。鶏肉と根菜を先に煮て、練り物や卵、調味料を入れ、続いて白菜と豆腐。餅は別に煮ておき、水菜と一緒に加えてひと煮立ちさせれば完成です。 伝統的には土鍋で煮て、そのまま取り分けて食べるそうです。飲食店でも一人用の土鍋でぐつぐつ煮えたまま出てくることが多くあります。具が多く、雑煮というより鍋物に近いボリュームなので、昼食なら一つ頼めば十分。熱いので、まずはスープからゆっくり味わいましょう。
島原で味わうには
具雑煮は島原半島各地の家庭料理ですが、旅行者が味わいやすいのは島原市内の飲食店です。島原城や武家屋敷通りなどの名所を巡ったあとの昼食にぴったり。諫早など長崎県のほかの地域でも具雑煮は食べられています。 最近は全国に発送できる冷凍の贈答用具雑煮も登場していると、農林水産省は紹介しています。雑煮としては珍しいことです。学校給食にときどき出ることもあるそうで、島原の人にとってそれだけ身近な味。冬の正月ごろに訪れれば、家々で具雑煮を炊く季節の空気も感じられます。