
長崎ミルクセーキ
長崎ミルクセーキ:飲まずにスプーンで食べる夏のデザート
長崎でミルクセーキを頼むと、ストローではなくスプーンが添えられて出てきます。卵黄と練乳、細かく砕いた氷で作る「食べるミルクセーキ」の誕生と味の違い、楽しみ方をまとめました。
ストローの代わりにスプーン
長崎ミルクセーキは名前だけ見ると飲み物のようですが、実際はスプーンで食べる冷たいデザートです。卵黄と砂糖、練乳、牛乳に氷を入れて砕き、シャーベット状にしたもので、そのため「食べるミルクセーキ」とも呼ばれます。 農林水産省「うちの郷土料理」にも長崎県の郷土料理として載っているほどで、長崎では暑さをしのぐデザートとして長く親しまれてきました。黄色みを帯びたふんわりした氷に赤いサクランボを一つのせるのが典型的な姿。アイスクリームより軽く、かき氷より卵と牛乳のコクがあるのが特徴で、長崎のレトロな喫茶文化を思わせる味です。
長崎の喫茶店で生まれた夏の味
農林水産省の資料によると、長崎ミルクセーキは大正末期から昭和初期、つまり1920年代ごろに長崎市で生まれました。九州で初めて開店した喫茶店として知られる市内の店が、夏の猛暑をしのぐために砕いた氷を入れたミルクセーキを作ったのが始まりといわれています。 この冷たいデザートはやがて人気を集め、市内の多くの店で出されるようになりました。本来ミルクセーキは牛乳と卵、砂糖を混ぜて飲む飲み物ですが、長崎では氷を入れて食べる形に変わったのです。貿易港として早くから西洋の食文化を受け入れてきた長崎らしい話です。
普通のミルクセーキとどう違う?
日本の「ミルクセーキ」は英語の milk shake が日本風になった言葉で、日本語版ウィキペディアは大きく二つの作り方を紹介しています。卵黄と牛乳、砂糖、バニラを混ぜる「フレンチスタイル」と、アイスクリームを使う「アメリカンスタイル」。どちらも基本的には飲み物です。 長崎風は卵黄と練乳、牛乳を使う点ではフレンチスタイルに近いものの、たっぷりの氷を一緒に砕いてシャーベット状にするところが決定的に違います。農林水産省のレシピの2人分を見ると、牛乳100ccに対して氷が150gと、氷のほうが多いのです。だからストローでは飲めず、スプーンで食べることになります。
店ごとに違う味と作るコツ
長崎ミルクセーキは材料がシンプルなぶん、店ごとの個性がはっきりしています。農林水産省の資料は、材料の比率や隠し味の有無、砕く氷の大小などで味や食感の違いを出していると説明しています。なめらかなシャーベットのような店もあれば、氷の粒がシャリシャリと残る店もあります。 作り方が簡単なので、家庭でもよく作られているそうです。卵黄、砂糖、練乳、牛乳、バニラエッセンス少々、氷をミキサーに入れ、トロッとなるまで砕きます。コツはかけすぎないこと。長く回すと氷が溶けてしまうので、氷が残っているところで止めるよう資料はすすめています。最後に器に注いでサクランボをのせます。
いつ、どこで味わうか
もともと長崎ミルクセーキは夏だけのメニューでしたが、観光客の需要が増えたことで、今では一年中味わえるようになったと農林水産省は伝えています。「食べるミルクセーキ」として全国に知られ、長崎旅行の楽しみの一つになりました。 市内の老舗喫茶店や洋食店、甘味処のメニューで見つけられます。長崎ではメニューに「ミルクセーキ」とだけ書いてあっても、たいていこのスプーンで食べるスタイルが出てきます。坂の多い長崎の街を歩く合間のひと休みにぴったりで、ちゃんぽんやカステラとともに長崎の味の地図を彩る一品です。冷たくて卵のコクが濃いので、ゆっくりすくって楽しんでください。