歴史
焼き豚を挟んだバインミー・ティット・ヌオン · 写真: nsaum75 / CC BY-SA 3.0 (Wikimedia Commons)

焼き豚を挟んだバインミー・ティット・ヌオン · 写真: nsaum75 / CC BY-SA 3.0 (Wikimedia Commons)

ベトナム

バインミー物語:フランスのバゲットはどうやってベトナムのサンドイッチになったか

バインミー(Bánh mì)は、植民地時代に入ってきたフランスパンにベトナムのハムや甘酢漬け、パクチーを挟んだサンドイッチです。名前の意味から、サイゴンで今の形になった経緯、定番の具、現地での買い方まで紹介します。

5分で読める1

フランスとともにやって来たパン

ベトナムにバゲットが入ってきたのは19世紀半ば、フランスがベトナム南部を植民地にし始めた1860年代ごろです。フランス人はバゲットとともに、肉入りパイのパテショー(pâté chaud)などのパン文化を持ち込みました。 当初バゲットはフランス人と一部の上流層のもので、バターと砂糖を添えて朝食に食べることが多かったといいます。北部では当初、バゲットを「西洋のバイン(パン)」を意味するバインタイ(bánh tây)と呼びました。第一次世界大戦で小麦の輸入が滞ると、パン職人が安い米粉を混ぜ始めたという記録もあります。今もベトナムのバゲットは小麦粉だけのものも米粉を混ぜたものもあり、皮が薄くパリッとして、中が白く軽いのが特徴。

「バインミー」という名前の意味

バインミー(bánh mì)は二つの言葉からなります。バイン(bánh)は餅や菓子、パンなど粉から作る食べ物を広く指す言葉で、ミー(mì)は小麦のこと。つまりバインミーは文字通り「小麦のバイン」、すなわちパンという意味です。北部ではbánh mỳと綴ることもあります。 バインミーという名前はフランス語のパン・ド・ミ(pain de mie、食パン)から来たという話も聞かれますが、英語版ウィキペディアはこれを誤った語源と説明しています。バインは少なくとも13世紀から米の餅や菓子を指してきたベトナム固有の言葉だからです。面白いのは、ベトナムでバインミーという言葉がパンそのものと、そのパンで作るサンドイッチの両方を指すこと。2011年3月には「banh mi」がオックスフォード英語辞典に見出し語として載り、このサンドイッチが世界の食べ物になったことを示しました。

1950年代のサイゴン、ベトナム式サンドイッチの誕生

1950年代まで、バゲットのサンドイッチはハムとバターのジャンボン・ブールやパテを塗ったパンのように、ほぼフランス式の味をなぞっていました。変化が起きたのは1954年の南北分断の後です。北部から来た移住者がサイゴンに落ち着くと、バゲットにベトナム式のハムや甘酢漬けの野菜、ハーブを挟んだ、はっきりベトナム風のサンドイッチがサイゴンで生まれました。 英語版ウィキペディアは、1958年にサイゴン3区で北部出身の移住者が開いたパン屋が、肉入りのバインミー・ティット(bánh mì thịt)を売った初期の店の一つだと伝えています。その後バインミーは、手に持って食べられる安い一食として南部全体に広まりました。今もベトナムでは主に朝食や軽食として食べられています。

何を挟む?定番の具と種類

もっとも基本的な具は、ベトナム式の豚肉ハム「チャールア(chả lụa)」やハム類、レバーパテ、マヨネーズ、キュウリ、ニンジンと大根の甘酢漬け「ドーチュア(đồ chua)」、パクチー、生唐辛子。何種類ものハムとパテを全部入れたバインミー・ティット・グオイ(bánh mì thịt nguội)は「スペシャル」とも呼ばれる一番人気です。 ほかにも、炭火焼きの豚肉を挟むティット・ヌオン(thịt nướng)、つぶした豚肉団子をトマトソースと挟むシウマイ(xíu mại)、目玉焼きのチュン・オップラー(trứng ốp la)、さつま揚げのチャーカー(chả cá)、豚肉でんぶのチャーボン(chà bông)、豆腐などを使う精進のチャイ(chay)まで、種類はとても豊富。

現地でバインミーを買うコツ

バインミーはたいてい、ガラスのショーケース付きの屋台や小さな店で売られています。ケースの中のハムや肉、甘酢漬けを見て欲しいものを指さすと、その場でパンを半分に割って具を詰めてくれます。多くの店はパンを炭火や小さなオーブンで一度温め、皮をパリッとさせてから具を入れます。 辛いものが苦手なら「コン・カイ(không cay)」と言えば唐辛子抜き、パクチーを抜きたいなら「コン・ゴー(không ngò)」と言えばOK。パンは作りたてが一番パリパリなので、買ったらすぐ食べるのがおすすめです。朝早くから開く屋台も多くあります。地域によってパンの形や具が違うご当地バインミーもあるので、旅先でその土地ならではの一本を探すのも楽しいものです。

#バインミー#ベトナムのサンドイッチ#バゲット#サイゴン#ベトナムの屋台料理
バインミー物語:フランスのバゲットはどうやってベトナムのサンドイッチになったか | TastyLog