
京都の湯豆腐膳 · 写真: ZhengZhou / CC BY-SA 4.0 (Wikimedia Commons)
京都の湯豆腐と湯葉:お寺から始まった豆腐料理をじっくり味わう
昆布だしで豆腐を温める湯豆腐、豆乳を温めたときにできる薄い膜をすくい上げた湯葉。肉や魚を口にしない京都の禅寺の食卓で育った二つの料理の由来と食べ方、南禅寺・嵯峨あたりで楽しむコツをまとめました。
肉の代わりに豆腐:禅寺が育てた京の味
京都は日本で豆腐料理が最も発達した町といわれます。その背景にあるのが禅寺です。肉や魚を食べない僧侶にとって、大豆から作る豆腐や湯葉は貴重なたんぱく源で、精進料理の中でさまざまな調理法が工夫されてきました。 さらに京都盆地の豊かで清らかな地下水が、なめらかできめ細かい豆腐を生んだといわれます。江戸時代には百種の豆腐料理を紹介した料理書『豆腐百珍』が評判となり、そこにも葛湯で豆腐を温める「湯やっこ」が載っています。お寺で始まった豆腐料理が、庶民の食卓へと広がっていったわけです。
湯豆腐:南禅寺の参道で名高い冬の鍋
湯豆腐は、鍋に昆布を敷いて水と豆腐を入れて温め、温まった豆腐を引き上げてつけダレで食べる、ごく素朴な料理です。素朴だからこそ、豆腐と水の味がそのまま出ます。冬を代表する料理で、冬の季語にもなっています。 湯豆腐は、京都の東、東山のふもとにある禅宗の大本山・南禅寺で生まれたと伝えられます。ただし時期や考案者を示す記録はなく、起源には諸説あります。江戸時代にはすでに南禅寺門前の名物として知られていたとも伝えられ、今も参道やその周辺には湯豆腐の専門店が集まっています。
湯葉:豆乳の表面にできる一枚の膜
湯葉は、豆乳をゆっくり温めると表面にできる薄い膜を竹串ですくい上げたものです。豆腐はにがりなどの凝固剤で大豆のたんぱく質を固めますが、湯葉は凝固剤を使わず、熱だけで生まれます。 一般には、鎌倉時代に中国へ留学した禅僧が持ち帰り、精進料理の材料になったとされます。文献で最初に確認できるのは1597年の『鹿苑日録』の記述です。日本で湯葉の名所といえば京都と栃木県の日光で、京都は膜の端に串を入れて一枚で薄く引き上げ、日光は中央に串を入れて二つ折りにし、厚みのある二枚重ねにするのが特徴です。表記も京都は「湯葉」、日光は「湯波」が一般的です。
食べ方:煮立てず、揺れたら引き上げる
湯豆腐の鍋が出てきたら、まず昆布のだしが十分に出るのを待ちます。ぐらぐら煮立てると豆腐に穴があいて食感が悪くなるので、弱火でゆっくり温めるのがコツです。豆腐が鍋の中でふわっと揺れ始めたら食べごろです。 タレは醤油に酒・みりん・だしを合わせたものやポン酢が多く、刻みネギ、削り節、ユズの皮、紅葉おろしなどを添えます。南禅寺あたりには、ポン酢ではなく甘辛いだしに生姜・ネギ・削り節を合わせて食べる店もあります。引き上げたばかりの生湯葉は、刺身のように醤油やわさび醤油で食べると大豆の甘みがいちばんよく分かります。
どこで食べる?:南禅寺界隈と嵯峨・嵐山
湯豆腐を食べに最も多くの人が訪れるのは、南禅寺の参道界隈です。地下鉄東西線の蹴上駅から歩いて10分ほどで、庭を眺めながら食事できる店が多くあります。西の嵯峨・嵐山も湯豆腐で知られ、天龍寺周辺で竹林の散策と合わせて楽しむ旅行者も多くいます。 専門店では湯豆腐に湯葉、ごま豆腐、天ぷらなどを添えたセットが一般的で、価格は3,000〜5,000円ほどが多いと紹介されています。紅葉の11月中旬〜12月上旬や雪の1〜2月は特に風情がありますが混み合うので、早めの時間がおすすめです。湯葉は錦市場界隈の店で干し湯葉や生湯葉を買い、おみやげにすることもできます。