
サパの養殖場に冷たい水を送るタックバック(銀の滝) · 写真: Heiko Carstens / CC BY 2.0 (Wikimedia Commons)
サパの「サーモン」の正体:2005年に高原へ来たニジマスとチョウザメ
熱帯の国ベトナムの山あいの町サパで「サーモン鍋」が名物になったのには、はっきりした出発点があります。2005年のフィンランドとの養殖試験、村の生業になった冷水魚養殖、鍋・刺身・焼き物での食べ方をまとめました。
熱帯の国の山の上の「サーモン」
サパの食堂のメニューで特によく見る言葉の一つが「カーホイ(cá hồi)」です。ふつう「サーモン」と訳されますが、サパで育てているのは主に「カーホイヴァン(cá hồi vân)」、つまりニジマスです。これにチョウザメ(cá tầm)が加わり、サパの冷水魚養殖を形づくっています。 冷たい水を好むこれらの魚が熱帯の国で育つ理由は、サパの標高にあります。サパは年平均気温が15℃前後の高原の町で、地元メディアによると養殖場は標高1,800mを超える場所にあり、タックバック(Thác Bạc、銀の滝)から引いた冷たい水で運営されています。 国内養殖が根づく前、ベトナムは毎年2,000トンを超えるサーモンやチョウザメをヨーロッパから輸入していたと、ニャンザン紙は伝えています。
2005年、フィンランドと始めた試験養殖
サパのサーモンの出発点は2005年です。ニャンザン紙によると、この年サパでニジマスの試験養殖事業が始まり、在ベトナム・フィンランド大使館とベトナム政府が支援し、第1水産養殖研究所(Viện Nghiên cứu nuôi trồng thủy sản 1)が主管しました。ヨーロッパ原産の商業用ニジマスをベトナムに初めて定着させた事例でした。 商工誌(Tạp chí Công Thương)は、事業が2006年に成功を発表し、その後サパでマス養殖が少しずつ広がったと書いています。ヨーロッパから輸入した受精卵は1.5〜2か月で稚魚にかえりました。 サパで育てた稚魚は2006年4月に南部高原のラムドン省へ運ばれ、ラムドンはラオカイに次いで冷水魚養殖に成功した二番目の省になりました。
山の村の生業へ
試験養殖は20年近くを経て、サパ一帯の生業になりました。商工誌によると、養殖場はタックバック周辺のほか、タザンフィン(Tả Giàng Phình)、バンコアン(Bản Khoang)、タヴァン(Tả Van)、タフィン(Tả Phìn)、サンサーホー(San Sả Hồ)、ラオチャイ(Lào Chải)など多くの村に広がっています。 同じ記事は、サパに冷水魚の養殖場が307か所あり、そのうち60%以上が少数民族の世帯だと伝えています。 魚をそのまま売るだけでなく、加工品も生まれています。「サパ」の名を付けたサーモンソーセージ、サーモンのさつま揚げ(chả cá hồi)、サーモンのでんぶ(ruốc)などがあり、その一部はベトナムの地域特産品認証(OCOP)も受けています。
鍋・刺身・焼き物:サパ流の食べ方
サパを代表するサーモン料理は「ラウカーホイ(lẩu cá hồi)」、サーモン鍋です。酸味のある澄んだスープで魚と山菜を煮ながら食べる料理で、日が沈むと気温がぐっと下がる高原で体を温めるのにぴったり。ファンシーパン登山やトレッキングを終えた夜によく選ばれます。 ほかにも、刺身のように薄く切って和える「ゴイカーホイ(gỏi cá hồi)」や刺身、炭火焼き、蒸し物、揚げ物、カレーまで調理法はさまざま。チョウザメも鍋や焼き物でよく出されます。 地元メディアは、サパのサーモンは身が締まって歯ごたえがあり、色がきれいで脂が少ないと紹介しています。輸入サーモンのような柔らかく脂ののった味を期待すると少し違うかもしれませんが、あっさりした弾力のある食感がとくに鍋によく合うという声が多くあります。
注文前に知っておきたいこと
まず、メニューの「カーホイ」はほとんどがニジマスだと知っておくと、期待と実際の差が小さくなります。チョウザメを食べたいなら「カータム(cá tầm)」を探しましょう。 次に、生で食べるゴイや刺身は信頼できる店で選ぶのが安心です。生が心配なら火を通す鍋が無難で、肌寒い夜にもよく合います。 さらに、値段は時期や店によって大きく違います。同じサーモン鍋でも量や内容によって値段がかなり変わるので、注文前に何人分か、いくらかを必ず確かめましょう。 最後に、サーモンソーセージやさつま揚げなどの加工品は、サパで買える食べ物のおみやげにもぴったりです。