
サパの串焼き通りに並ぶ串 · 写真: Buihaidang192 / CC BY-SA 4.0 (Wikimedia Commons)
脇に抱えて市場へ行く豚、ロンカップナック(Lợn cắp nách)と竹筒ご飯コムラム
サパの食堂でよく見る「ロンカップナック」は「脇に抱える豚」という意味です。山で放し飼いにする小さな在来豚の名前の由来、焼き方・食べ方、一緒に食べる竹筒ご飯までまとめました。
名前のとおり「脇に抱える豚」
ロンカップナック(Lợn cắp nách)の「ロン」は豚、「カップナック」は「脇に抱える」という意味です。体が小さく、かごに入れたり片腕に抱えたりして運べることから付いた名前で、ベトナム語版ウィキペディアは、これはたとえではなく文字どおりの意味だと説明しています。実際に村の人々は市場へ行くとき、この豚を腕に抱えていったそうです。 地域によって「サパのムオン豚(lợn Mường Sapa)」「ロンルン(lợn lửng)」「ロンコイ(lợn còi)」などとも呼ばれます。ウィキペディアは、イノシシとムオン豚の間から生まれた伝統品種だと紹介しています。 大きさは資料によって差が大きく、4kgから25kg未満まで幅がありますが、10〜20kgほどと説明されることが多いようです。
山に放して育てる豚
ロンカップナックのおいしさは育て方から来るといわれます。ベトナム語版ウィキペディアによると、ラオカイのザオ族・タイ族・モン族が伝統的にこの豚を飼ってきて、囲いを作らず森や山の斜面に放して育てることが多いそうです。 豚たちは山で野生の根や芋、葉を探して食べ、人はときどきトウモロコシやキャッサバを少し与える程度。雌雄一組を森に放して子を産ませるやり方もあるといいます。このように育つため成長が遅く、1年に多くても10kgほどしか増えないという資料もあります。 その結果、身が締まって脂の薄い肉になります。現地の旅行メディアも「山の斜面で自然放牧した在来豚で、身が締まって香ばしく、脂身が薄い」と紹介しています。最近は森の一部を柵で囲い、商業的に育てる農場も出てきました。
高原の市場で出会う豚
ロンカップナックはラオカイ高原の市の日の風景ともつながっています。ベトナム語版ウィキペディアは、この豚が取引される代表的な市場としてバックハー(Bắc Hà)、シンチェン(Sín Chéng)、カンカウ(Cán Cấu)、ムオンクオン(Mường Khương)を挙げています。重さではなく一頭単位で売る市場もあるそうです。 サパやラオカイだけでなく、ライチャウ、イエンバイ、ハザン省ホアンスーフィーなど西北部の高原各地で似た豚が飼われています。ですからロンカップナックは、ある一つの村の特産というより、ベトナム北西部の山岳地帯全体を代表する豚と考えるのがよいでしょう。 ただしサパは、旅行者がこの豚を最も手軽に味わえる場所の一つです。町の食堂や夜の串焼き通りのメニューで「ロンカップナックの焼き物」をよく見かけます。
焼いて、蒸して、竹筒ご飯と一緒に
ロンカップナックは炭火で焼くか、皮をパリッと仕上げる丸焼き(quay)で出されることが最も多いです。ほかにも蒸し物、炒め物、ゆで肉、腸詰め、骨のスープまで、一頭をさまざまに使います。ベトナム語版ウィキペディアがいちばんおいしいと挙げるのは、腸詰め(lòng dồi)と骨付きのバラ肉を湯せんで蒸し、つぶしたラニョイ(lá nhội)の葉にハットセン(hạt xẻn)かハットゾイ(hạt dổi)、青唐辛子を混ぜたたれにつけて食べる料理です。 サパの串焼き通りでは、マックケン(mắc khén)やハットゾイなど山椒に似た香辛料とムオンクオン唐辛子のたれに漬けて炭火で焼くのが一般的です。 一緒に食べたいのが竹筒ご飯のコムラム(cơm lam)です。山地のもち米を竹筒に詰めて焼いたもので、ごま塩やピーナッツにつけたり、焼いた肉に添えたりします。日持ちしないので温かいうちに食べるのがおすすめです。お酒は山リンゴのタオメオ(táo mèo)酒やトウモロコシ酒を合わせることが多いようです。
本物の見分け方と注文のコツ
ロンカップナックが有名になるにつれて、偽物も増えました。ベトナム語版ウィキペディアは、交雑種やトウモロコシの飼料で育てた豚を「ロンカップナック」として売る例が多いと注意を促しており、本物は山で育ち、身が締まって脂身が薄いのが特徴だとしています。 旅行者が店で品種を確かめるのは難しいですが、脂身が厚く身が柔らかすぎるなら、名前だけを借りている可能性もあります。メニューの名前より、皮がパリッとして身に弾力があるかを目安に楽しむとがっかりしにくいでしょう。 注文は何人かで行き、丸焼きを一皿に竹筒ご飯と山菜炒めを添えるのが無難です。サパの串焼き通りでは好きな串を選んでその場で焼いてもらう形式が多いので、豚肉と一緒にきのこや野菜の串も選んでみてください。