
干したニンビンのコムチャイ · 写真: Nguyễn Thanh Quang / CC BY-SA 3.0 (Wikimedia Commons)
ニンビンのコムチャイ(Cơm cháy):鍋底のおこげが古都の名物になるまで
ニンビンで「コムチャイ」を頼むと、カリッと揚げたおこげに、豚のハツ・マメと野菜を炒めたソースがかかって出てきます。伝わる由来、伝統の作り方、ニンビン流の食べ方をまとめました。
鍋底のおこげ、古都の名物
コムチャイ(Cơm cháy)は、ご飯を炊くときに鍋底に焦げついて硬くカリカリになった層、つまりおこげのことです。ベトナム各地で食べられますが、ベトナム語版ウィキペディアは、とくに10世紀の古都ホアルー(Hoa Lư)があったニンビンと深く結びついていると記しています。 ウィキペディアは、ニンビンのコムチャイが発展した背景として紅河デルタの稲作を挙げています。この一帯には「タムハイハウ(tám Hải Hậu)」のような香り米や香りもち米(nếp hương)など良い品種があり、おこげ一枚にも米の香りが生きているというわけです。 韓国のヌルンジや日本のおこげと同じく「ご飯の副産物」として始まりましたが、ニンビンではわざわざ作って干し、揚げてソースをかける立派な料理になりました。
伝わる由来の物語
ニンビンのコムチャイの始まりについては、よく知られた民間の物語があります。ベトナム語版ウィキペディアが紹介する内容はこうです。 19世紀末のフランス植民地時代、ニンビン出身の青年ディン・ホアン・タン(Đinh Hoàng Thăng)がハノイの大きな中華料理店で働いていました。彼は主人の娘に恋をしましたが思いはかなわず、故郷に戻ってコムチャイ専門の店を開きます。店が評判になると、かつての主人が彼を呼び戻して店をさらに開かせ、ついには娘と結婚させたという話です。 ウィキペディアもこれを確かな歴史ではなく、伝わる物語として紹介しています。それでもこの話のおかげで、コムチャイは「ニンビンの人が育てた料理」というイメージを得て、いまもニンビンのコムチャイを紹介する文章によく登場します。
伝統の作り方:炭火、鉄鍋、天日
ベトナム語版ウィキペディアがまとめた伝統の作り方は手間がかかります。香りもち米か、粒が丸く透き通った米を選び、鉄鍋に入れて炭火で炊きます。火を均一に保つことで、鍋底全体にむらなくおこげができます。 はがしたおこげは天日で2〜3日干します。ウィキペディアは「二、三日日に当ててこそ仕上がる」と記しています。干したおこげは涼しく乾いた場所に置き、食べる直前に揚げます。前もって揚げて一日置くと油臭くなり、しけてしまうからです。 良いコムチャイは淡い金色で粒がそろい、カリッとしながらもほどよく粘りがあり、新米で作る「コム(cốm)」のような香ばしい香りがするといいます。最近の包装品は、もち米を鍋に薄く押しつけて焼き、四角く切って干してから揚げる方法で作られています。
ニンビン流の食べ方:ハツとマメのソースをかけて
ニンビン流コムチャイの要はソースです。ベトナム語版ウィキペディアによると、豚のハツとマメを玉ねぎ、フクロタケ、にんじん、トマトと炒め、ヤギ肉を煮込んだスープでソースを作ります。このソースを揚げたてのおこげにかけるか、おこげをつけて食べ、ヤギ肉や牛肉を添えます。 ヤギのスープが入ることからわかるように、ニンビンのコムチャイはこの地のもう一つの名物、山ヤギ料理といつも一緒です。ウィキペディアは、観光が盛んになるにつれてヤギ料理の店がコムチャイを一緒に出し、二つの料理がそろって広まったと説明しています。 なおハイフォンには、エビ・カニ・イカなど新鮮な海産物で赤いソースを作る「海鮮コムチャイ」がありますが、ウィキペディアはこれをニンビン式の土台を共有する別の料理と見ています。
どこで食べて、何を持ち帰るか
ニンビンでコムチャイを見つけるのは難しくありません。ベトナム語版ウィキペディアは、国道1号沿いやホアルー(Hoa Lư)・タムディエップ(Tam Điệp)・タムチュック(Tam Chúc)一帯、そしてニンビン各地の観光地で広く売られていると記しています。ボートツアーのあと、ヤギ料理と一緒に一皿頼むのがよくある組み合わせです。 2012年にはアジア記録機構がニンビンのコムチャイをベトナムの特産10品の一つに認定しました。2016年の資料では、ニンビンに約250の業者・作業場があり、年間およそ400トンを生産していました。 おみやげには、肉でんぶ(chà bông)と揚げエシャロットをのせて包装したコムチャイが人気です。店で食べる熱々のソース版とは別のおやつなので、両方味わって違いを楽しんでください。