
ダナンの牛肉ミークアンとごま煎餅 · 写真: Christopher Crouzet / CC BY-SA 4.0 (Wikimedia Commons)
ミークアン完全ガイド:スープが「ひたひた」の広南地方の麺
ダナンでまず勧められる一杯はフォーではなくミークアンです。幅広の黄色い麺、スープというよりタレに近い少量の汁、パリパリのごま入りライスペーパー。国の無形文化遺産になった広南地方の麺の由来と食べ方をまとめました。
「広南の麺」という名前
ミークアン(Mì Quảng)は文字どおり「クアン地方の麺」という意味です。クアンとはダナンやホイアンを含む旧クアンナム地方のこと。この一帯の人々は故郷を「スークアン(xứ Quảng=クアンの国)」と呼ぶほど地元意識が強い土地柄です。2025年7月の行政統合でクアンナム省がダナン市に合併され、ミークアンは名実ともにダナンを代表する麺になりました。 ベトナム文化スポーツ観光省は2024年8月、「クアンナム省のミークアンに関する民間知識」を国の無形文化遺産リストに登録しました。同じ時期にハノイのフォー、ナムディンのフォーも登録されており、ミークアンはフォーと並ぶベトナムの代表的な麺として公に認められたことになります。
幅広の黄色い麺の作り方
ミークアンの麺は、水に浸した米を細かく挽いて薄く広げて蒸し、包丁で切って作る米麺です。型から押し出す丸いブン(bún)と違い、板状に蒸してから切るので幅広で平たく、ほかの地方の米麺より厚みがあり、熱いうちもコシが長持ちします。 米そのままの白い麺もありますが、クチナシの実(dành dành)やウコンを混ぜて黄色く染めたものが一般的。そのため旅行者には「黄色い麺」として記憶されがちです。今も生地を広げる作業(tráng mì)や均一に切る作業(xắt sợi)を手で行う工房があり、ダナンのミークアンのイベントではその実演や体験が行われ、ミークアンを町を代表する食文化体験に育てようという声も上がっています。
スープではなく「ヌックニュン」:ひたひたの汁の正体
初めてミークアンを受け取ると「スープが少なすぎない?」と驚く人が多いです。ミークアンは豚骨などを長時間煮出したスープを濃く煮詰め、麺が浸かるほどではなく、麺をしっとり湿らせる程度だけかける麺料理だからです。この濃縮スープを現地ではヌックニャン(nước nhân、地域によってはnước nhưn)と呼びます。 具は店や家庭によってさまざま。エビと豚肉をのせた「ミークアン・トムティット(tôm thịt)」が定番で、鶏肉、ライギョ(cá lóc)、牛肉、カエル、カニなども使われ、うずらの卵やゆで卵を添えることもあります。具が変わればスープの色や味付けも変わるので、同じミークアンでも店ごとにかなり味が違うのが面白いところです。
ごま煎餅と生野菜:ミークアンの食べ方
ミークアンに欠かせない相棒が、ごまを散らして焼いたライスペーパー(bánh tráng mè)です。手で割って器にのせると、パリッとした食感と香ばしさが加わります。炒りピーナッツも定番のトッピングです。 もう一つは生野菜の皿。レタス、バジル、もやし、香草類、ラウラム(rau răm)、薄切りのバナナの花などをたっぷり器に入れて混ぜるのが現地流です。ライムを搾り、唐辛子で好みの辛さにしたら、麺と具と野菜が少量のスープとよく絡むよう、箸で上下を返すように混ぜてください。 スープの追加を頼むのは失礼ではありませんが、ミークアンはもともと「和え麺に近い麺」だと知って食べると、ずっとおいしく感じられます。
どこで、いつ食べるか
ミークアンはダナンで朝から昼にかけて最もよく食べられる一杯の食事です。中心部ハイチャウ(Hải Châu)一帯の路地の食堂や市場まわりの屋台で簡単に見つかり、看板に「Mì Quảng」と大きく書いた専門店も多くあります。旅行ガイドでは1杯3万〜5万ドン前後と紹介されることが多いですが、具によって変わります。 注文するときは具の名前を添えればOK。エビと豚肉は「tôm thịt」、鶏は「gà」、ライギョは「cá lóc」、牛肉は「bò」です。ホイアンや旧クアンナムの田舎の村へ行けば麺を自家製する店もあり、ダナン市内の一杯と食べ比べるのも楽しい旅になります。