
ダラット市場に積まれたアーティチョーク · 写真: Hungda / CC BY-SA 3.0 (Wikimedia Commons)
ダラットのアーティチョーク:フランスが植え、ベトナムがお茶にした高原の花
ダラット市場に山積みされた緑のつぼみは、地中海原産のアーティチョーク(atisô)です。フランス時代の高原都市にやって来たこの野菜が、葉や根まで煮出すお茶や、豚足と煮込むスープになった経緯をたどります。
ヨーロッパ野菜が育つ高原都市
ダラットは、1893年にフランス出身の医師で探検家のアレクサンドル・イェルサンがランビアン高原を踏査し、20世紀初めにフランス植民地当局が避暑地として開発したことで町になりました。標高およそ1,500mの涼しい気候は、暑い低地では育てにくいヨーロッパの野菜や花の栽培に向いていました。 旅行資料によると、フランス時代にここでアーティチョークやレタス、イチゴ、ヨーロッパ品種の花といった温帯作物の栽培が始まったとされ、ダラットは今も一年中涼しい気候を生かしたベトナム有数の高原野菜と花の産地です。アティソー(atisô)はフランス語アルティショー(artichaut)から来たベトナム語名で、地中海原産のアザミの仲間、学名キナラ・スコリムス(Cynara scolymus)です。今ではダラットを象徴する特産品の一つです。
いつ伝わったのか:正確な年は分からない
アーティチョークがベトナムに伝わった正確な時期ははっきりしません。ベトナム語版ウィキペディアは、20世紀初めに伝わり、サパやタムダオのような涼しい高地でも栽培されたが、最も多く植えられたのはダラットだと記しています。同じ項目はフランス人が持ち込んで植えたと説明していますが、最初に植えた年をはっきり示す記録は見当たりません。 正確な年は分かりませんが、フランス人が涼しい高原地帯に持ち込んで植え、その中でダラットが最大の産地になったという大筋は資料のあいだでほぼ一致しています。面白いのは、ヨーロッパではつぼみを食べる野菜として伝わったこの植物を、ベトナムの人々が時間とともにまったく違う方法で使うようになったこと。その代表がお茶とスープです。
葉から根まで煮出すアーティチョーク茶
西洋ではアーティチョークの肉厚なつぼみ、中でもがくの付け根と「ハート」と呼ばれる底の部分を主に食べます。一方ベトナムでは、葉や茎、花、根まで植物全体を乾燥させてお茶として煮出して飲むのが最大の違いです。 アーティチョーク茶(trà atisô)はベトナムでよく飲まれる飲み物で、ダラットでは商品としても生産されています。ほろ苦く、ほのかな甘みがある味で、伝統的に肝臓や消化によいとされ、日常的に飲む人が多いと現地メディアは伝えています。ただしこれは民間で言い伝えられてきた話なので、薬として期待するより高原地方のお茶文化として楽しみましょう。市場や土産物店では、乾燥させた根や花を刻んだ袋入り、ティーバッグ、濃く煮詰めた固形茶など、さまざまな形で売られています。
アーティチョークの花と豚足の煮込み
ダラットでアーティチョークを「食べる」代表的な料理が、カン・ホア・アティソー・ハム・ゾー・ヘオ(canh hoa atisô hầm giò heo)、つまりアーティチョークのつぼみを豚足と一緒にじっくり煮込んだスープです。豚足から出る濃厚で脂ののった味を、アーティチョークの穏やかで淡白な味が引き締める組み合わせで、現地メディアはこの料理が2012年にアジアの記録団体が選んだベトナム特産料理50選に入ったと紹介しています。 つぼみを丸ごとか半分に割って長く煮込むので、食べるときは花びらのように重なった苞を一枚ずつはがし、付け根の柔らかい部分を歯でしごいて食べ、真ん中の柔らかい底はそのままスプーンですくいます。涼しい高原の夕方にぴったりの体が温まるスープで、ダラット中心部のベトナム家庭料理店のメニューで見つけられます。
市場で出会うアーティチョーク
ダラット市場(チョ・ダラット)周辺に行くと、緑のつぼみを塔のように積み上げた売り場を簡単に見つけられます。生のアーティチョークはスープ用に、乾燥アーティチョークやお茶の製品はお土産として売られています。アーティチョーク茶は軽くて日持ちがするため、コーヒーと並んでダラット旅行のお土産によく選ばれます。 ダラットはアーティチョークを地域の代表作物として広める取り組みもしてきました。2023年にはアーティチョークを使った料理100品を発表・披露するイベントも開かれています。一方で2012年の現地報道には、価格が下がり販路が厳しくなったため、アーティチョークを抜いてほかの作物に切り替える農家がいるという記事も載りました。高原の特産品も市場の事情で浮き沈みがあるわけです。生のアーティチョークは重く傷みやすいので、持ち帰るなら旅の最終日にお茶や乾燥品を選ぶのが実用的です。