
ファンティエットで売られるムックモッナン · 写真: Phương Huy / CC0 (Wikimedia Commons)
ムックモッナン:「日差し一日」だけ干すファンティエットのイカ、世界のイカ料理リストにも
ちょうど一日だけ天日に干し、外はしっかり中はしっとりのファンティエットの半干しイカ、ムックモッナン。名前の意味と一日だけ干す理由、世界の料理評価サイトで注目された話、炭火での焼き方と買い方をまとめました。
「日差し一回」という名前
ムックモッナン(mực một nắng)はベトナム語で「イカ(mực)・一つ(một)・日差し(nắng)」、つまり日差しに一度だけ干したイカという意味です。材料は胴が広く身の厚いムックラー(mực lá)で、ファンティエット沖でよくとれるイカです。 トゥオイチェー(Tuổi Trẻ)など現地メディアによると、作り方はこうです。漁師がとってきたイカをきれいに下処理して皮と内臓を取り、朝から午後まで一日だけ天日に干します。何日も干してかちかちのスルメにするのではなく、ちょうど一日で止めるので、表面はしっかり乾きながら、中は新鮮さと甘み、歯切れのよい弾力をそのまま保ちます。日本の一夜干しに近い発想ですが、夜ではなく強い南国の日差しで一日干す点が違います。
なぜ一日だけ干すのか
地元の漁師の言葉を借りれば、ムックラーは生で食べるとシャキッとし、からからに干すと硬くなります。一日だけ干すのはこの二つの性質のあいだでバランスをとった結果で、「乾いているのにしっとり、歯ごたえがあるのに柔らかい」食感を得るためだと、VnExpressは伝えています。 同じ記事によると、ムックラーは以前はそれほど人気のあるイカではなく、今の一日干しの方法は1990年代半ばにファンティエットのある海鮮料理店の主人が考案して広まったといいます。ちょうど1995年の皆既日食でファンティエットが観測地として注目され、よそからの旅行者が増えていた時期でした。起源についてはこの記事以外の説明を確かめにくいので、「そう伝えられている」程度に受け止めておくのがよいでしょう。確かなのは、ムックモッナンが今やファンティエットを代表する特産品であり、お土産になっていることです。
世界のイカ料理リストに
ムックモッナンは2025年5月、世界の料理評価サイト「テイストアトラス(TasteAtlas)」が発表した「世界最高のイカ料理」リストに名を連ね、高い評価を受けました。トゥオイチェーとVnExpressは、このリストに入ったベトナム料理はムックモッナンだけだったと伝えています。リストの上位はトルコやスペイン、ギリシャなど地中海沿岸のイカフライ料理が占めました。 このリストは世界の読者の評価に一部の専門家の意見を加えて決める方式なので、公式の認定やグルメ格付けとは性格が異なり、順位や点数もたびたび変わります。それでも、地中海の有名なイカ料理と並んでベトナムの漁村の素朴な半干しイカが名を連ねたことは、現地で話題になりました。テイストアトラスがこのイカのいちばんの食べ方として挙げたのは炭火焼きで、冷たいビールと合わせることも勧めています。
焼き方と食べ方
ムックモッナンの代表的な調理法は炭火焼きです。半干しなので表面が焦げやすく、火加減が大切です。火が強すぎると外は焦げて中は生焼けになると、現地の記事は説明しています。上手に焼けたイカは表面がうっすら焦げ、中は白く火が通って弾力があり、包丁で切ると断面がしっとりしています。 焼いたイカは食べやすい大きさに切り、唐辛子入りの魚醤(マムオット、mắm ớt)やチリソース(トゥーンオット、tương ớt)につけて食べ、冷えたビールを合わせるのが定番とされます。焼く以外にも、魚醤で揚げるように炒めたり、甘酸っぱく炒めたり、ショウガを入れて蒸したりする食べ方があると現地メディアは紹介しています。海鮮料理店ではメニューに「ムックモッナン・ヌン(nướng=焼き)」のように調理法が書かれているので、好みの方法を選べばOKです。
買って帰るコツ
ファンティエット市街の市場や海鮮店、ムイネーの海岸通り周辺の特産品店では、ムックモッナンを重さ単位で売っています。写真のように箱にきれいに並べ、はかりで量って売る様子がよく見られます。大きいほど高く、地元紙バオラムドンは、身が厚く香りのよいイカで作ったものを良品として紹介しています。 注意したいのは、これがからからに乾いた干物ではないことです。一日しか干していないので水分が多く残り、常温に長く置くとすぐ傷みます。買うときは保冷箱や保冷包装ができるか聞き、宿に冷蔵庫があればすぐに入れておきましょう。海外へ持ち帰るなら、国ごとに水産物の持ち込み規定が違うので事前の確認が必要です。いちばん簡単なのは、旅の途中で海鮮料理店の焼きたてを味わうこと。