
ファンティエットのドラゴンフルーツ畑 · 写真: Dragfyre / CC BY-SA 3.0 (Wikimedia Commons)
ビントゥアンのドラゴンフルーツ(タインロン):ベトナム屈指の産地と夜に灯る畑
ムイネーへ向かう道沿いにどこまでも続くサボテン畑は、ドラゴンフルーツ、ベトナム語でタインロン(thanh long)です。この地域がどうしてベトナム屈指の産地になったのか、地理的表示と、夜に電灯をつけて花を咲かせる栽培法、現地での味わい方をまとめました。
ベトナムを代表するドラゴンフルーツ産地
ファンティエットとムイネーがある旧ビントゥアン省は、ベトナムでも最大級のドラゴンフルーツ産地のひとつです。現地の経済メディアVnBusinessの2018年の報道によると、栽培面積は約2万7,700ha、年間生産量は54万トンを超え、そのうち約9,500haが優良農業規範(VietGAP)を満たしていました。2023年にベトナム共産党機関紙ニャンザン(Nhân Dân)は面積を3万ha近くとしており、数字は年や資料によって少しずつ異なります。 同じ報道によると、主な産地はハムトゥアンナム・ハムトゥアンバック・バクビンの3地域です。このあたりの国道沿いや村のあいだを走ると、コンクリートの柱をつたって伸びたサボテンが並ぶ畑がどこまでも続きます。2025年7月の省の統合でビントゥアン省はラムドン省に合併されましたが、果物には今も「ビントゥアンのドラゴンフルーツ」という地名がそのまま使われています。
遠くアメリカ大陸から来たサボテンの実
ドラゴンフルーツは、メキシコや中南米原産のつる性サボテンの実です。今ではベトナムをはじめ東南アジア各地で栽培され、ベトナムは世界有数の生産国の一つです。ベトナムで最も多く育てられているのはピンク〜赤の皮に白い果肉の品種(Hylocereus undatus)で、南部果実研究所(SOFRI)が改良した赤い果肉の品種も広く植えられています。 いつからビントゥアンでドラゴンフルーツを育て始めたのかははっきりしません。現地の記事も「いつからともなくドラゴンフルーツがファンティエット・ビントゥアンの地と縁を結んだ」と表現しているほどです。ただ、雨が少なく日差しの強いこの地域の乾燥した気候が、サボテンであるドラゴンフルーツに合っていたのは確かなようです。ムイネー周辺の赤い砂丘が物語るように、ビントゥアンはベトナムでも指折りの乾燥した海岸地帯です。
「ビントゥアン」という地理的表示
ビントゥアンのドラゴンフルーツは、ベトナムで地理的表示(GI)として保護されている農産物です。ビントゥアン省の管理規定によると、ベトナム知的財産局は2006年11月15日の決定第786号で、ドラゴンフルーツに「ビントゥアン」という原産地名称を登録しました。地理的表示は、特定の地域の自然環境や栽培方法から生まれる品質を認め、その地域で基準どおりに生産したものだけが地名を使えるようにする制度です。日本の夕張メロンなどを思い浮かべると分かりやすいでしょう。 2018年の報道時点で88の団体・個人がこの地理的表示の使用認証を受けており、ビントゥアンのドラゴンフルーツの地理的表示は欧州連合(EU)でも保護登録されていました。2021年には日本でも保護されるようになりました。生産量の大部分は中国へ輸出されており、ニャンザンは2023年の記事でその割合を約95%と伝え、市場の拡大が課題だと指摘しています。
夜に灯りがともるドラゴンフルーツ畑
ビントゥアンのドラゴンフルーツ畑ならではの風景は夜に現れます。ドラゴンフルーツは日が長い季節に花を咲かせる性質があるため、農家は夜に電灯をつけて、旬でない時期にも花を咲かせます。これをベトナム語でチョンデン(chong đèn、灯りをともす)といいます。旬に出荷が集中して値崩れするのを避け、一年中実を収穫するための方法です。 ベトナム国営放送VOVは、この灯火が季節外れの収穫量を左右するカギだという地元当局者の言葉を伝え、電力会社が節電のため白熱電球をすべて省エネ型の電球形蛍光灯に替えるよう農家に呼びかけていると報じました。60Wの白熱電球を20Wの蛍光灯に替えて電気代を大きく減らした農場主を紹介した新聞記事もあります。そのため涼しい季節の夜、ファンティエット近郊では無数の電灯が畑を照らす光景が見られるといいます。
現地でドラゴンフルーツを味わう
ムイネーやファンティエットの市場、道端の果物店ではドラゴンフルーツを簡単に買え、産地なので値段も大都市より手ごろなことが多いです。いちばん簡単なのは皮ごと半分に割ってスプーンですくうか、角切りにして冷やして食べる方法。白い果肉はほのかでさわやかな甘さ、赤い果肉は色が濃く甘みも強いのが特徴です。赤い果肉の汁は服につくと落ちにくいので気をつけましょう。 ビントゥアンではドラゴンフルーツをデザートとしてだけ食べるわけではありません。VnExpressは、この地域で味わいたい料理として、ドラゴンフルーツ入りの海鮮和え(ゴイ・ハイサン・タインロン、gỏi hải sản thanh long)を挙げています。ドラゴンフルーツのさわやかな甘さがエビやイカなどの海鮮とよく合います。リゾートやカフェではドラゴンフルーツのジュースやスムージーも定番です。ファンティエットからムイネーへ向かう道やハムトゥアンナム方面へ移動すると、どこまでも続くサボテン畑を車窓から眺められるので、移動そのものがこの土地の特産品を見物する時間になります。