
塩漬けアヒル卵の黄身入りバインテット・ラーカムの断面 · 写真: Tienduongproduction / CC BY-SA 4.0 (Wikimedia Commons)
紫色の正月ちまき、バインテット・ラーカム:カントー・ビントゥイ生まれの名物
切ると紫色のもち米の中に黄色い塩漬けアヒル卵が現れる、カントーのバインテット・ラーカム。1960年代にカントー・ビントゥイのある家庭で始まったと伝わるこのちまきが、メコンデルタの正月の名物になるまでの物語と、食べ方・買い方をまとめました。
バインテットとは、そしてカントーの紫
バインテット(Bánh tét)は、ベトナム南部の旧正月(テト)に欠かせない円筒形のちまきです。もち米に緑豆や豚肉などを入れ、バナナの葉で細長く包んで長時間ゆで、輪切りにして食べます。北部の四角い正月ちまきバインチュンと対になる、南部の正月料理と言えます。 普通のバインテットはもち米が白か薄緑色です。ところがカントーのバインテット・ラーカム(Bánh tét lá cẩm)は、切るともち米が鮮やかな紫色で、真ん中に塩漬けアヒル卵の黄身が黄色く収まっています。カントー市の公式ポータルは、この紫色とアヒル卵の具をカントーのバインテットの特徴として紹介し、街を代表する名物に挙げています。
1960年代のビントゥイで始まった紫色
バインテット・ラーカムは、1960年代にカントーのビントゥイ(Bình Thủy)地区のある家庭で作られ始めたと伝えられています。ベトナムの報道はこの家を元祖として紹介し、もち米を染めるいつもの緑色の代わりに、ラーカムの葉の汁で色を付けてみたのが始まりだったという話を伝えています。ただ、そのきっかけを詳しく伝えているのは一部の報道だけで、詳しい経緯は言い伝えの域を出ません。 その後このちまきは家業として代々受け継がれ、テトの時期には1日1千本以上作るほど有名になったと現地メディアは伝えています。今ではビントゥイだけでなく、カントー市内の多くの店や南部のほかの地域でも作られ、メコンデルタの正月の食卓に欠かせない名物になりました。
ラーカムの葉と作り方
紫色の正体ラーカム(lá cẩm)は、学名ペリストロフェ・ロクスブルギアナ(Peristrophe roxburghiana)というキツネノマゴ科の植物の葉です。ベトナムでは体の熱を冷ます葉とされて民間療法にも使われ、おこわなどに天然の色を付けるのにも使われます。 作り方はこうです。もち米を6時間ほど浸して水気を切り、ラーカムの葉の汁とよく混ぜて色を付けたら、ココナッツミルクと砂糖、塩を加えて炒め、味をなじませます。具を入れてバナナの葉でしっかり包み、薪の火で4〜5時間ゆでます。長く煮る間にもち米がもっちりとまとまり、バナナの葉の香りが移ります。一度に100本ほど大鍋でゆでる家もあり、石炭の火だとちまきが割れて煙のにおいが付くので、薪や炭火にこだわるという話も伝わっています。
具の選び方と地元流の食べ方
バインテット・ラーカムの具は、大きく塩味と甘味に分かれます。代表的なのは味付けした豚肉と塩漬けアヒル卵の黄身を入れたもので、緑豆と一緒に入って香ばしくしょっぱい味わい。ほかに豚の脂身だけのもの、バナナ入り、緑豆だけの精進用の甘いものもあり、店では普通4種類ほどに分けて売っています。アヒル卵入りが一番高く、バナナや緑豆は手頃です。 食べるときはバナナの葉をはがし、厚めの輪切りに。カントーの人々の正月の食卓では、甘酸っぱく漬けたラッキョウ(củ kiệu)と、豚の煮込み(thịt kho)を添えるのが一般的です。バインテット・ラーカムは、ベトナム記録機構が選んだ「ベトナムを代表する料理・特産品100選」にも名を連ねています。
どこで買い、どう持ち帰るか
バインテット・ラーカムは今や正月だけのものではなく、カントーを訪れる旅行者が買って帰る定番のおみやげになりました。発祥地とされるビントゥイ地区や中心部のニンキエウ(Ninh Kiều)周辺には、バインテットを専門に作る店がいくつもあり、テトが近づくと注文が殺到して予約が必要なほどです。普段も作っていますが、量はテトの時期よりずっと少なめです。 値段は具によって違います。報道によれば、肉を合わせて入れたものは1本8万ドン前後、豚の脂身だけのものは4万ドン、バナナや緑豆は3万〜4万ドンほどでした(以前の報道なので、今は時期や店によって異なります)。 もち米と肉が入っているので、常温ならなるべく数日のうちに食べ、長く置くなら冷蔵を。日持ちは買う店で確かめるのが確実です。日本へ持ち帰る場合、肉や卵を含む畜産加工品は持ち込みが制限されることがあるので、出国前に検疫のルールを確認してください。