
バナナの葉の上にご飯とおかずを長く並べたブードルファイト · 写真: Ej Afable / CC BY-SA 4.0 (Wikimedia Commons)
フィリピンの食事文化:ご飯とおかず、指さし食堂、スプーンとフォーク、メリエンダ
フィリピンではほぼ毎食ご飯が並び、ナイフの代わりにスプーンとフォークを使います。鍋を指さしておかずを選ぶ大衆食堂、バナナの葉の上に料理を並べて手で食べるブードルファイト、一日二回のおやつの時間メリエンダまで、初めてでも戸惑わない食事のコツをまとめました。
主役はご飯、おかずは「ビアンド」
フィリピンの食卓の中心はご飯です。焼いても煮ても揚げても、どんな料理にもご飯を合わせると言われるほどで、朝食にもご飯が出ることがよくあります。昼食はおかず一、二品にご飯、ときにスープが付くのが典型的な形です。 フィリピン語ではご飯に合わせるおかずをウラム(ulam)と言い、フィリピン英語ではビアンド(viand)とも呼びます。日本の「ご飯とおかず」の感覚に近く、意外となじみやすいはず。ただ一品ごとの味付けが濃く、酸っぱかったり塩気が強かったりするので、自然とご飯が進む仕組みです。おかずとご飯を別々に頼む店も多いので、ご飯が含まれているか確認してから注文すると安心です。
カリンデリア:指さしで選ぶ大衆食堂
フィリピンの街でいちばんよく見かける食堂がカリンデリア(carinderia、カリンデリヤ)です。その日に作ったおかずを鍋やトレーに入れて並べ、客が見て選ぶ仕組みなので、「指さす」という言葉を重ねてトゥロトゥロ(turo-turo)とも呼ばれます。スペインの学者ウェンセスラオ・レタナは、この名前がカレーを意味するタガログ語「カリ(kari)」に関係すると考え、カリハン(karihan)という言葉も同じ意味で使われます。 並ぶのはアドボ、シニガン、ティノーラ、カレカレといった家庭料理や野菜・魚料理で、メニューはその日の材料次第で変わります。言葉が通じなくても、鍋を指さして指で数を示せば十分。ご飯は込みか別盛りで出るので、おかず一、二品とご飯を選ぶのがいちばん一般的な一食です。
ナイフの代わりにスプーンとフォーク
フィリピンの食卓に置かれる基本の道具は、ナイフとフォークではなくスプーンとフォークです。スプーンでご飯とおかずをすくって口に運び、フォークは料理をスプーンに寄せたり押さえたりするのに使います。肉を切るときはスプーンの側面で押し切るのが普通なので、食堂ではナイフが出てこないこともよくあります。 最初は戸惑いますが、ご飯と汁気のあるおかずを一緒に食べるにはとても便利な方法。アドボのようにじっくり煮込んだ肉ならスプーンでも簡単にほぐれます。つけダレの文化も知っておくと便利です。食卓には玉ねぎ入りの酢やカラマンシーを搾った醤油などのタレがよく置かれ、フィリピン語ではこれをサウサワン(sawsawan)と呼びます。
手で食べるカマヤンとブードルファイト
手で食べるのはフィリピンの古くからの食べ方で、これをカマヤン(kamayan)と言います。スペイン統治時代にはおおむね許容されていましたが、アメリカ統治時代にはスプーンとフォークの作法が強く奨励されて廃れ、その後1980〜90年代以降、フィリピン文化を楽しむ食べ方として再び人気を集めました。 その代表がブードルファイト(boodle fight)です。長いテーブルにバナナの葉を敷き、ご飯と焼いた肉、揚げ物、海鮮、野菜、果物をずらりと並べ、皿もカトラリーも使わずに並んで立ったまま一緒に食べます。もとはフィリピン陸軍士官学校の士官候補生に始まる軍の伝統で、階級を忘れて一緒に食べ、仲間意識を深める意味があります。「ブードル」は米ウェストポイント陸軍士官学校の隠語で、こっそり持ち込んだ甘いものを指したそうです。手で食べるときは片手でご飯とおかずを小さくまとめ、親指で口へ押し込みます。
一日二回のおやつの時間、メリエンダ
フィリピンの人々の一日には、三食の合間にメリエンダ(merienda)というおやつの時間があります。スペイン語圏から来た言葉で、午前中の軽い間食と、午後のティータイムにあたる間食の両方を指します。夕暮れどきに夕食代わりや夕食前に食べる少しボリュームのある間食はメリエンダ・セナ(merienda cena)と呼ばれます。 メリエンダはご飯とおかずのそろった食事より量が少なく、コーヒーなどの温かい飲み物や冷たい飲み物を添えるのが一般的。小さな丸パンのパンデサルなどのパンや焼き菓子、甘いデザート、屋台の軽食、麺料理まで、何でもメリエンダになります。午後の三時、四時ごろにパン屋や屋台がにぎわっていたら、まさにメリエンダの時間。旅行者もこのリズムに合わせて何かひとつ買ってみると、現地の暮らしに一歩近づけます。